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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

31 結婚式篇

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31-43 浴中の恋バナ

 意中の人のことをグロリアに聞こうと、身を乗り出しかけた仁の手を、エルザが掴んで止めた。
「エルザ?」
(……私に、任せておいて)
 小声で仁にそう告げるエルザ。ここは任せてみよう、と仁は思った。

「姫さま、お風呂に行きませんか?」
 と、いきなりエルザから驚きの発言が飛びだした。
「風呂?」
「はい。明るいうちから入るお風呂は、格別、です」
「……俺のところでは朝風呂、という習慣もあるんですよ」
 仁も言葉の援護射撃をする。
「ふむ、習慣ではないが、確かに明るいうちから入る風呂は心地よいの」
「まだ時間はありますし、ご一緒にいかが、でしょうか」
 リースヒェンはこの誘いを少し考えたのち、受けることにした。
「よしよし、一緒に入ろうぞ」
「もちろん、ジェシカさんとグロリアさんもご一緒します、よね?」
「うむ」
「姫の護衛だからな」
 ということで、ティアを加えた5人は貴賓室に併設されている浴場へと移動。
 ここは大浴場、とまではいかないが、10人くらいまでは十分入れる規模なので、5人なら余裕である。

「……あとは窓が大きいと、気分が違うんです、が」
「ふむ、じゃがそれはいろいろ危険なのではないかな?」
 このリースヒェン王女の発言は、覗き……ではなく、誘拐、暗殺などのことを指していると思われる。
「そうか、崑崙島はそのような心配がないのじゃな……羨ましいぞ」
 1人納得し、小さく溜め息をついたリースヒェン王女であった。

「……ところで」
 が、リースヒェンは、気持ちを切り替えたのか、エルザに向かって小声で囁くように尋ねる。
「……新婚生活はどうなのじゃ? ジンは優しゅうしてくれるか?」
「……え? あ、はい」
 リースヒェンからの思わぬ質問に赤面するエルザ。
「そうか。……アーネスト様もお優しいといいのう」
 王女としても、やはり気になるのであろう。であるから、歳の近いエルザに聞いてみたかったのだと思われる。
 そしてそれは、ある意味エルザが意図したことであった。
「……グロリア、そちはどうなのじゃ?」
「は? ……どう、とは?」
「短かった髪を伸ばし始めたということは、何か心境の変化があったのじゃろう?」
「は、はあ……まあ」
 お湯の中、頬を染めるグロリア。
「ふむ、相手は我が国の騎士か? 貴族の師弟か?」
「は、まあ、あの、その……」
「ふむ、違うのか。なら他国の者か」
「は、はあ……」
 畳み掛けるようなリースヒェンの質問に、曖昧な返事をするグロリアだが、誘導されるように、なんとなく白状していくグロリア。
 その顔が赤いのは、決してお湯のせいだけではないだろう。
「ふむ、そうなると……エルザの兄、フリッツ殿か?」
「ぶほっ!」
 慌てたためお湯の中で足を滑らせるグロリア。
「グロリアさん……」
 ある意味狙いどおりなのだが、あまりにもわかりやすい反応に、エルザでさえ少し呆れてしまう。 
「あ、あ、あわわわっ」
「こら、あまりお湯を跳ね上げるな」
 お湯の中でバシャバシャと慌てるグロリアを、ジェシカがたしなめる。
「まったく、シンシアを見習え」
「……え、シンシア、さん?」
 聞き覚えのある名前が出たので、エルザも気になって尋ねた。
「シンシアさん、って、セルロア王国の建国記念式典に行った、人?」
「え、あ、そうです。エルザさんもその式典にいらっしゃったのでしたね」
 いたどころか、フリッツに頼まれ、シンシア向けの記念品としてペンダントトップを作ったのはエルザである。
「え、ええ。シンシアはラッシュ男爵家次男のハインツ殿と婚約し、騎士団を抜けることが決まりました」
「そう、だったんですか」
 シンシアは意外と恋多き女性だったらしい、とエルザは内心複雑な思いであった。
 とはいえ、今回、兄フリッツに関する問題的には、一段階進めたと言えるかもしれない。

「ジェシカさん、やはり他国の者との婚姻は、いろいろ問題があるんでしょうね」
「ん? う、うむ、それはそうだが……大したことではないかも……しれん」
 やや歯切れの悪い答えが気になったエルザは重ねて質問をする。
「どういう意味、ですか?」
「我が国の女性騎士は、一部を除いて、重要機密のたぐいは知らされておらんからじゃ」
 エルザの質問にはリースヒェンが答えた。
「そうなん、ですか?」
「うむ。エルザじゃから言うが、女性騎士の大半は箔をつけるため、という目的でなった者じゃ」
「……」
 下級貴族や新貴族の子女が、『士爵』が欲しくてなるのだという。世襲ではなく、一代限りの爵位ではあるが、あるとないとでは貴族社会では違ってくるのだ。
「とはいえ、誰でもなれるわけではないがな」
「剣技や魔法などに秀でていなければ無理だ」
 リースヒェンに続き、ジェシカも説明を加えた。
「……一部を除いて、というのは?」
 ふと気になった単語を、エルザは問うてみた。
「指揮官クラスの者じゃ。このジェシカやグロリアなどじゃな」
「え……」
 重要機密を知らないなら大丈夫、と思ったら、グロリアは数少ない『例外』に当たるらしい。
「そう、ですか」
 少しがっかりしたエルザであった。

 長くお湯に浸かっていてものぼせるので、適当に切り上げる。
(……あまり進展なかった……)
 結構頑張ったのに、と少し凹んだエルザであった。

*   *   *

 風呂から上がったリースヒェンたちはそのまま戻って行った。
 エルザも仁の待つ貴賓室、その応接間に戻る。
「どうだった?」
「……あんまり」
「そうか。まあ、急がず、着実に行こう」
「ん」
 今は半ば公な立場で来ているので、あまり個人に関わっていると、贔屓しているなどと勘ぐられてもまずいのだ。

 そして静かな昼食会を済ませ、仁とエルザは『コンロン3』でクライン王国を後にしたのであった。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

(旧)「……例外、というのは?」
(新)「……一部を除いて、というのは?」
 それまで『例外』と言う単語は出ていませんでした……。

(旧)「え、ええ。シンシアは7月にラッシュ男爵家次男のハインツ殿と結婚し、騎士団を抜けました」
(新)「え、ええ。シンシアはラッシュ男爵家次男のハインツ殿と婚約し、騎士団を抜けることが決まりました」
 まだ宴にいましたよね……
+注意+
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