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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

31 結婚式篇

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31-42 アンチエイジング

「ジン様、エルザ様、お幸せそうですね」
 これは近衛女性騎士隊隊長ジェシカ・ノートン。
「ありがとう」
「ありがとう。……ジェシカさん、は?」
 仁は素直に礼を言うに留めたのだが、エルザはお礼の後に突っ込んだ質問をした。
「はい?」
 一瞬ジェシカは何のことかわからなかったらしい。
「いえ、ジェシカさんはいいお相手いないのかと……」
「私はもう、諦めてますから」
 なんと、平然と言い放った。
「ジェシカは淡白じゃのう……な、グロリア」
「は、はい!」
 リースヒェン王女に話を振られたグロリアは少し慌てている。
「グロリアは幾つになった?」
 仁にはちょっと聞くに聞けない質問を、リースヒェン王女は平然としている。
「24ですが……」
「うむ、ジェシカは?」
「28です」
「ふむ」
 リースヒェンはそれを聞いて少し考え込んでいる。

(なあ、適齢期って……)
(15くらいから20くらい、って言われてる)
 仁は仁で、エルザと小声でやり取りしていた。
(それは一般的な貴族の話だろう? エルザから見たらどう思う?)
(……人によるけど、30くらいまでは問題ない、と思う)
(だよなあ。俺のいた国でも30過ぎて子供産んだ人なんて大勢いるし)
 栄養状態や衛生問題などで短命であることを理由に、結婚適齢期というものが決められることが多い。
「アンチエイジングか……」
 つい声が大きくなった仁。それをリースヒェン王女が聞きつけた。
「ジン、『あんちえいじんぐ』とは何じゃ?」
「ああ、聞こえちゃったか。つまり、年齢に負けない方法といえばいいかなあ」
「何? そんなものがあるのか!?」
「ジ、ジン殿、それは!?」
「ぜ、是非お聞かせ願えないだろうか!?」
 リースヒェン王女、ジェシカ、グロリアが食い付いてきた。エルザも聞きたそうに目を輝かせている。
(いつも、どこでも、やっぱり若くありたいよなあ……)

 仁は、院長先生にいつまでも若々しく元気でいて欲しくて、少しそういった知識を集めたことがあっただけだ。
 あくまでも素人レベルであるし、院長先生は仁がそういうことに気を使うのをあまり喜ばなかったのでじきに止めてしまったという経緯があるのだが。

「ええと……」
 かつて集めた知識を思い出そうと、仁は頭を捻った。
「まずは肌の手入れ、かな」
「ふむ、そうじゃの。シワやシミはない方がよいのう」
「その原因が……ええと、日焼けにあるんだ」
 紫外線、といっても通じないだろうから日焼けと言い替えた仁である。
「日焼けを繰り返すと肌が黒くなるだろう? そのまま放っておくと、皮膚の艶や張りがなくなっていくんだよ」
「そ、そうなのか」
 女性とはいえ、騎士は屋外での活動が多いので、皆大なり小なり日焼けしているのだ。
「日焼け止めと、スキンケアで大分違うだろうな」
「日焼け止め? そんなものがあるのですか、ジン殿?」
 グロリアが身を乗り出してきた。剣フェチだと思ったが、やはりお肌のケアには興味があるらしい。
「ええと、酸化チタンの細かい粉を保湿油に溶いて塗るだけで大分違うはず……」
「さんかちたん?」
「あ、軽銀の粉、といえばわかりますかね」
 チタンはこちらの世界では軽銀と呼ばれるので、仁は言い直した。
「ふむ、軽銀の粉にそんな効果が……」

「あとは食事ですね。肉、野菜、穀物、万遍なく食べるのが望ましいですね」
 食餌療法にはあまり詳しくない仁であった。
「そちらは、体調を整えてくれます。あとは便秘なども大敵です」
 エルザが補足してくれる。

 仁がちょっと考えて見ると、このアルス世界の人間は、身体が頑健な気がするのだ。
 それが、体内『魔力素(マナ)』のおかげなのかどうかまでは検証できていないのだが。
 病気・怪我を除くと、寿命は少し長いのではないかとも思える。これも統計を取っていないので断定はできないが。

「ふむ、その『日焼け止め』はどうやって作ればいいのじゃ? もしくは売っておるのか?」
「え、と……」
 チタン、つまり軽銀を酸化させてTiO2とし、それを粉体にし、適当な油や香料と混ぜることでできるのだが、エルザにはそのTiO2の作り方がわからなかった。
 それで仁の方をちらっと見る。
「……」
 実は仁も、現代地球での製法は知らない。
 が、工学魔法『酸化(オキシデイション)』と『還元ディオキシダイゼイション』というものがある。
 あまり使わないが、鉄さびを除去(というか還元して鉄に戻す)しているのは『還元ディオキシダイゼイション』、軽銀(=チタン)の表面を酸化させて色を付けているのはこの『酸化(オキシデイション)』である。
 これにより、酸化軽銀(=酸化チタン)を作り、粉体化することは可能だ。

「ええと、先日来、俺のところで試作して、売れるなら売ろうと思っているよ」
 危ういところで、『何でもかんでも無償で提供しない方がいい』とラインハルトたちに言われたことを思い出した仁である。
「ふむ、そうか。なら、近々売ってもらえるのじゃな?」
「うん。おそらく、ラグラン商会を通じて、となるかな」
 仁がそう言えば、リースヒェンは納得したように頷いた。
「なるほど、経済の活性化にも繋がるのう。無償で提供してもらうよりもいいかもしれん」
 どうやらリースヒェンは、仁よりも国の経済のことを考えているようだった。
「いずれ試供品を届けられると思う」
「それは楽しみじゃな」
 半ば口から出任せではあるが、作ること自体は困難ではないので、この場で約束した仁である。
 これにより自動的に翌日のインターバルに行うことは決まったも同然である。

「……で、話を戻すと」
 元々は結婚適齢期の話だったはずだ。
「ジェシカさんもグロリアさんも、まだまだ適齢期」
 エルザがセリフを引き継いだ。
「ふふ、そうじゃな。女性騎士が皆嫁ぎ遅れたら、成り手がいなくなってしまいかねんからのう」
 無邪気に笑うリースヒェン王女。
「のうジェシカ、グロリア?」
「は、はあ……」
「あの、何とお答えすればいいのか……」
 2人とも、返答のしようがなく、困った顔をしたのである。

「それで更に話を戻したいんだけど」
 いよいよ、意中の人がいるのかどうかを聞こうと思った仁であった。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20160522 修正
(誤)じきに辞めてしまったという経緯があるのだが。
(正)じきに止めてしまったという経緯があるのだが。

 20160523 修正
(誤)「27です」
(正)「28です」

(誤)「ふふ、そうじゃな。女性騎士が皆行き嫁ぎ遅れたら
(正)「ふふ、そうじゃな。女性騎士が皆嫁ぎ遅れたら

(旧)鉄さびを除去(というか還元して鉄に戻す)したり、
(新)鉄さびを除去(というか還元して鉄に戻す)しているのは『還元ディオキシダイゼイション』、

(旧)酸化(オキシディション)
(新)酸化(オキシデイション)

 20160524 修正
(誤)作ること事態は困難ではないので
(正)作ること自体は困難ではないので
+注意+
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