挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

31 結婚式篇

1174/1504

31-41 王女とグロリアの来訪

「どう思う?」
 前夜祭が済んだあと、部屋に戻った仁はエルザと相談していた。
「グロリアさんも、兄さまのことを変わらず想っているのは確かだと、思う」
 エルザの意見も仁と同じである。
「だよな。絶対に意識しているもんな」
「ん」
「第一段階はクリア目前、としても、その後のことがなあ……」
 どちらも国家機密を知っているであろうから、国が手放さないような気がする、と仁は思っている。
「お父さま、『国際警備隊』というのはどうでしょうか?」
 そこへ、礼子からの提案が。
「そうか、『国際警備隊』か!」
 少なくともどこかの国に属するよりはいいかもしれない。
「そこで数年すれば、機密は機密でなくなる可能性もあるしな」
 なんとなく、方向性としてはいい気がする仁である。
「あとは機会を見つけて本人の気持ちを確認してみるか」
「それがいい」

 そんな会話を交わした2人は、疲れていたので備え付けの浴室でゆっくりと身体を伸ばし、ぐっすりと休んだのであった。

*   *   *

 明けて9月1日。
 午前9時、王城の正門が開け放たれ、銅鑼どらが鳴らされた。
 なにごとだ、と驚いた者もいたが、事前に通達がなされていたので、大半の市民は驚くことはなかった。
 むしろ、飢饉以来暗い出来事が多かったため、明るい話題を待ち望んでいたくらいだ。

「『魔法工学師マギクラフト・マイスター』だって?」
「ほら、あの『ポンプ』を開発した技術者らしいぞ」
「随分若いんだな」
 ローランドが所属するラグラン商会はポンプを普及させ、それと共に開発者の名も知られていたのである。

「王様の病気を治してくれたのがあの奥さんらしいぜ」
「へえ、若いのに」
「18とか聞いたな」
「うちの娘と同い年じゃねーか」
「美人だし、凄いな」

 などと言う声も聞こえてきた。

「リースヒェン姫様とも仲がいいらしいよ」
「ああ、聞いた聞いた。エゲレア王国のアーネスト王子との仲を取り持ったとかなんとか」
「顔が広いんだな」
「何せ世界でただ1人の魔法工学師マギクラフト・マイスターですからね」
「誰にも負けない技術者と治癒師か。凄すぎて羨む気にもなれねえ」
 一部『第5列(クインタ)』の声も混じっているようである。

*   *   *

 晴天の下、市内を巡ったパレードは城内へ戻り、昼前から夜にかけて披露宴が開催された。
 その中で、貴族からの挨拶を受ける場面は、なんとか『分身人形(ドッペル)』と入れ替われた仁とエルザ。
 とはいえ、もう一度入れ替わってからもうたげは長く、疲れ果てた2人である。

*   *   *

「……あと一国!」
「……まだ明日がある」
 貴賓室でソファにぐったりともたれる仁とエルザ。
 礼子はそんな2人に、ペルシカジュースを差し出した。
「お父さま、エルザさま、どうぞ」
「ああ、ありがとう」
「ありがとう」
 冷たいペルシカジュースを飲むと、少し頭がすっきりする。
「明日は多分静かな会だろうからいいとして、残るはフランツ王国か」
「……カトリーヌさんの国」
「ああ、そうだったな」
 カトリーヌ・ド・ラファイエット。
 魔族絡みの事件の時に知り合った人物だ。彼女は現国王の母親でもある。
「今は王太后か?」
 そんな仁の言葉を、エルザは否定した。
「違う。王太后というのは先王のお后ということであって、生母のことではないから」
「そうなのか。でも言われてみればなるほどな」
 こうした身分制度については、仁よりもエルザの方が詳しい。
「ん。王様の正妃が王妃。次代の王が、その人の子供でなくても、王太后はその人」
「なるほど、わかったよ。ありがとう」
「どういたしまして」
 ふふっ、とエルザがいたずらっぽく笑った、その顔が愛おしくて、仁は思わずエルザを抱きしめる。
 それを見た礼子は部屋の明かりを暗めにして、外へと出たのであった。

*   *   *

「今日はのんびり過ごして下さい」
 翌2日、午前8時半、仁とエルザは軽い朝食を済ませた後、パウエル宰相の訪問を受けていた。
 宰相は自ら仁たちに告げる。
「静かな、後夜祭という名目のお茶会……昼食会だけですので」
「わかりました」
 12時までは特に予定もないため、のんびりすることに決める仁。

 午前9時半、リースヒェン王女がやって来る。
 ティアとジェシカ、それにグロリアを伴って。

「ジン、エルザ、退屈しておらぬか?」
 開口一番、そんなことを言い出す王女。仁は笑いながら答える。
「ああ、正直少し退屈かな」
「じゃろう? 話し相手くらいにはなれると思ってやって来たのじゃ」
 仁としては、グロリアが一緒なのは助かった、と思える。
 仁の方からグロリアを呼び出すのは、今回の立場上、特定の個人を贔屓ひいきしていると思われでもしたら、自分だけでなくグロリアの立場上もまずいと思っていたからだ。

「ティア、調子は悪くなさそうだな」
「はい、ジン様。おかげさまで」
 だが、まずは無難な話から始める仁であった。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 参考資料9に各国の国章を載せてみました。

 20160521 修正
(旧)そこへ、礼子からの発言が。
(新)そこへ、礼子からの提案が。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ