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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

31 結婚式篇

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31-33 のんびり

「明日1日はのんびりしような」
「ん」
 ロイザートの『屋敷』で風呂に入った仁とエルザは、居間で寛いでいた。
 時刻は午後9時。
 そして2人の前には白ワイン、エルリッヒの3454年が。
「ラインハルトの好きな銘柄だっけ」
「そう、アウスレーゼといわれる高級酒。エルリッヒ地方というのはワス湖の東岸一帯のこと」
 エルザが説明してくれる。
 甘口のこのワインは、つまみなどなくても十分楽しめるのでナイトキャップにも向いているようだ。
 仁とエルザは、それぞれワイングラスに注いだ。
「飲みやすいな」
「ん。白ワインは甘口が多いから、飲みやすいものが多い」
 赤ワインは甘そうな印象があるが、辛口のものが多く、また、赤い色はブドウの皮によるものなので、独特の渋みもある。よってワイン初心者向けではない、とエルザが説明する。
「なるほどな」
 仁は現代日本にいた頃、自腹で酒を飲んだことはなかったので、酒に関するそういった蘊蓄はほとんど知らない。
 逆にエルザは、ワイン好きのラインハルトの影響で、そうしたことには詳しいのだ。
『屋敷』にいるのは、仁とエルザの他にはバトラーD、礼子、エドガーだけ。静かなものである。
 ワイングラスをテーブルに置いて、仁がぽつりと言った。
「……でもなんだか、ようやく実感が湧いてきたよ」
「何の?」
「エルザが、俺の嫁さんになった、という」
「あ、う」
 仁の顔が赤いのは、照れているだけではなさそうである。口当たりがいいため、仁は少し早いペースで飲んでいるようだ。
「……ジン兄、酔ってる?」
 少しジト目になりながら仁を見つめるエルザ。
「酔ってるかもな」
 仁自身、酔っているという自覚はあった。
「あまり飲むと、明日、頭が痛くなる」
「……そうしたらエルザに治してもらうよ」
「え」
「なんだ、治してくれないのか?」
「そ、それは、治す、けど」
「なら、いいじゃないか」
「……うん」
 他愛のない会話。だが、そこには確かな絆があった。
 それからも何杯かワインを飲んだ2人は、連れだって寝室へと向かった。

 その夜、2人はいい夢を見たことだろう。

*   *   *

「お父さま、エルザさま、そろそろ起きて下さい」
 礼子の声に起こされる仁とエルザ。
「……ああ、もう朝か」
 目を擦りながら仁が呟く。
「朝というよりお昼近いです」
「え、もうそんな時間か」
「はい、間もなく10時になります」
「……寝坊したな……」
「あまり夜更かしはどうかと……」
 つい仁に向かって小言めいたことを口にする礼子。だが、すぐに謝り、頭を下げる。
「……済みません、差し出がましいことを申しました」 
 そんな礼子の頭を仁は撫でてやる。
「礼子、思ったことは言ってくれ。それが俺には嬉しいんだから」
「……はい、お父さま」
 嬉しそうに微笑んだ礼子は、続けてもう一言。
「……あの、そういうお言葉は、エルザさまにこそお掛けになるべきかと」
「え?」
 礼子に言われて横を見ると、目を覚ましたエルザが、少し膨れた顔で仁を見つめていたのであった。
「……」
「ごめんごめん」
 仁は、そんなエルザをいきなり抱き締めた。
「……!」
 驚いたように硬直するエルザであったが、すぐに身体の力を抜き、仁に身を任せる。
 仁はそんなエルザの耳元に何ごとかを囁いた。
 エルザはほんのり頬を染めて頷く。仁はそっとエルザを抱いていた腕を放した。

「シャワーを浴びてから食事にしよう」
 仁はベッドから降りて伸びをする。
 今からだと朝食と昼食を兼ねた食事となりそうだ。
「……ん」
 まだ少し顔の赤いエルザも頷いた。
 そして2人は着替え、寝室を出て行く。付いていく礼子。寝室の外にはエドガーがタオルを用意して待っていた。

*   *   *

「さて、今日はどうするかな」
 遅い朝食(=早い昼食?)を食べ終わった仁とエルザは、その日の予定を考えてみる、とはいえもう午前11時を回っているので半日しかないわけだが。
「昨日言ってたように、のんびり、しよう?」
 エルザがふわりと笑みを浮かべながら言った。
「そうだな」
 何かしなければならない、というような決まりはないのだから。
 文字どおりのんびりしよう、と決めた仁である。
「……どうにも貧乏性が抜けないな……」
 1人呟く仁であった。

「そういえば、実家へは行かなくていいのか?」
 エルザの実家はここショウロ皇国の首都ロイザートから見て、トスモ湖を挟んだ対岸である。
 行こうと思えば『コンロン3』でひとっ飛びだ。
「ん、今はまだ。この披露宴が全部済んでから、と思ってる」
 今は『公の場』での役割を果たすことが優先、とエルザは言った。
「それに」
 エルザは更に言葉を続ける。
「今の私の家は、ジン兄のいるところ、だから」
「……そっか、ありがとう」
 なんとなくお礼を言わずにはいられない仁であった。

 結局、この日は1日、2人ともロイザートの屋敷から出ることはなかったのである。
 いつもお読みいただきありがとうございます。
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