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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

31 結婚式篇

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31-14 8月11日

本日は12時に31-13を投稿しています。ご注意下さい。




 3458年8月11日。
 蓬莱島は朝から熱気に包まれていた。
「服はこれでいいかな?」
「忘れ物はないよな?」
「あー、襟が立ってるわよ!」
「うん、よいできね」
 準備は既に済ませてあったとはいえ、やはり本番ともなると落ち着かないものだ。

『皆様、新郎新婦の準備が整いました。会場へお集まり下さい』
 老君の声が、式の開始を告げる。
 会場は大会議室だ。そこに、『白無垢』に身を包んだエルザと、『紋付き』を着込んだ仁がいた。
 因みに、仁の記憶からの再現なので、細部が怪しいが、そんなことは誰も気にはならない。
「うわあ、エルザさん、きれいですわ!」
「ジン、見違えるね」
 などと、見たことのない衣装と、それを着た2人への称賛の言葉が並べられる。
「では、まいりましょう」
 頃合いを見て、礼子が声を掛けた。
 仁は後見人であるミロウィーナに、エルザは実母ミーネに付き添われて歩き出す。
 先導するのは礼子。
 今日ばかりは、礼子もミーネも、いつもの服ではなくこの日のために用意した着物姿だ。
 大会議室を出た廊下の両側には、5色ゴーレムメイドたちが整然と並んでおり、その間を、礼子、仁とエルザ、ミーネとミロウィーナ、参列者の順で歩いて行く。
 階段を登り、2階へ。
 そこにもゴーレムメイドたちが整列している。
 礼子は、ソレイユとソレイユの配下プラネたちと、ルーナとルーナの配下サテラたちが立つ扉までゆっくりと歩みを進め、一度立ち止まって仁とエルザを振り返り見た。
 2人も立ち止まり、仁は礼子に小さく頷く。礼子は扉をゆっくりと開いていった。

 そこは先代魔法工学師マギクラフト・マイスター、アドリアナ・バルボラ・ツェツィの書斎。
 そして一行は静かに部屋の中へと歩み入り、仁は隠し部屋の扉を開いた。
 参列者は書斎で足を止め、隠し部屋へ入ったのは礼子、仁、エルザのみ。
 そんな3人の正面には一つの折り鶴があった。

 まず礼子が口を開いた。
「お母さま、ご報告いたします」
 続いて仁。
「先代、本日ただいま、2代目魔法工学師マギクラフト・マイスター、二堂仁はエルザ・ランドルを妻に娶ることと相成りました」
 最後にエルザ。
「今日から私、エルザ・ランドルはエルザ・ニドーとなり、夫と共に歩むことを誓います」
 その直後、部屋には入らず、ドア前に控えていたミーネとミロウィーナが拍手を贈った。
「エルザの母、ミーネは2人を祝福します」
「ジン・ニドーの後見人ミロウィーナは2人を祝福します」
 続いて、背後に控えていた参列者たちも温かい拍手を贈った。

*   *   *

 先代への報告をした後、一行は研究所の外へと出た。
「うわぁ」
「しっ」
 誰かが小さく声を出したのも無理はない。
 そこには蓬莱島のゴーレム部隊が勢揃いしていたのだ。
 銀青色の空軍(エアフォース)、スカイ部隊。
 銀茶色をしているのは陸軍(アーミー)、ランド部隊。
 銀水色の海軍(ネイビー)、マリン部隊に支えられ、銀白色の人魚型、海中軍(マリナー)であるマーメイド部隊もいる。
 そして黄金色の宇宙軍(スペースフォース)、コスモス部隊と宇宙用小型ゴーレムアストロが。
 職人(スミス)の腕にはリトル職人(スミス)。その肩にミニ職人(スミス)がおり、更にインチ職人(スミス)、ミリ職人(スミス)も。
 その他、スチュワード、エドガー、アン、ロル、レファ、ナースゴーレムもいる。
隠密機動部隊(SP)』の面々も姿を現し、2人を祝福していた。

 その間を、礼子に先導された仁とエルザは『祠』に向かって歩いて行く。
 祠のそばには老君の移動用端末『老子』。その肩には老子直属のフィンガーゴーレムと『しのび部隊』とサム、コマンドといった超小型ゴーレムが。
 そして祠の両側にはバトラーたちが立ち並んでいた。

「『賢者』シュウキ・ツェツィに報告します……」
 旧レナード王国から移築したこの祠に、仁は『賢者』シュウキ・ツェツィを祀ったのである。
 先代にしたのと同じように報告を行い、蓬莱島における『式』は滞りなく終了した。

*   *   *

 更に仁たちは研究所地下の転移門(ワープゲート)を使い、『ツェツィ島』へと移動した。
 そこは『賢者』シュウキ・ツェツィが眠る地であり、『ナギ』と『ナミ』という、先代が手掛けた自動人形(オートマタ)が守っている。
「おいでなさいませ、2代目様、皆様」
「ようこそおいでくださいました、2代目様。礼子もよく来たわね」
「お兄さま、お姉さま。今日はお父さまご成婚の報告にまいりました」
 出迎えた『ナギ』と『ナミ』に向かい、礼子が嬉しそうに告げた。
「おお、それは! おめでとうございます、2代目様」
「よろしくお願いいたします、奥様」
 島の守護者2人も祝福の言葉を仁たちに投げ掛けた。

 仁とエルザは、シュウキ・ツェツィの墓所に花を手向け、黙祷した。
「ここも大分緑が増えてきたな」
「はい。先日来、草花の育成に努めております」
「そうか、いいことだ」
 それから仁は目を細めて、『マグス岬』方面を見つめた。
「ああ、今日はいいお天気だな」
 大陸東端にある『マグス岬』もよく見えていた。

*   *   *

「ちょっと変わっていたけど、いいお式でしたわ」
「エルザ、綺麗だったよ」
 蓬莱島を経由して、崑崙島で披露宴だ。場所は『翡翠館』。
 仁とエルザは衣装を替え、背広とドレス姿になっていた。お色直しも兼ねている。

 そしていよいよ、ペリド入魂のウェディングケーキへの入刀が行われるところだ。
 全部がケーキなので高さは40センチほど。そこに仁とエルザは2人で1本のケーキナイフを持ち、さくっと切り込みを入れた。
 2人で始めて行う共同作業だ。

「おめでとう、ジン!」
「おめでとう、エルザ!」
 列席者全員から上がる祝福の声。
《おめでとうございます、御主人様(マイロード)
 そして崑崙島を統括する頭脳、『太白』も2人を祝福した。

「……嬉しいな」
「……ん」
 皆に祝福され、仁とエルザは何ともいえない幸福感に包まれていた。
「明日はカイナ村だからいいけど、そのあとはちょっと疲れるかもな」
「しょうが、ない」

 ケーキはその後切り分けられて皆に配られ、舌を楽しませる。
「いやあ、ジンのところのゴーレム勢揃いに驚かされたな!」
「うん、まったくだ」
 それでも、警戒に出ているものがいるなど、『全員』ではなかったのだが。
 和気藹々とした宴は日が落ちるまで続いた。

*   *   *

 月……ユニーが夜空の半ばまで昇った頃、宴は終わりを告げた。
『仁ファミリー』の面々は、ある者は『翡翠館』に、またある者は『五常閣』に泊まることになる。
 そして仁とエルザ、それに礼子だけが蓬莱島に戻ってくる。
『家』には仁とエルザだけが入り、礼子は家の前で足を止めた。
「お父さま、エルザさま、本日はおめでとうございます。わたくしはここまでということで」
 一礼した礼子は玄関前に立ち止まり、動こうとしなかった。
 その気持ちを察した仁は礼子の頭を一撫でし、エルザの手を引いて『家』に入った。

 普段使わない奥座敷。
 月明かりが障子越しに差し込み、ほの明るい。
「疲れたか?」
「……ん、少し。でも、大丈夫。嬉しいから。楽しいから。幸せ……だから」
「そうか」
「ふつつか者ですが、これからよろしくお願い、します」
 誰に教わったのか、正座してお辞儀をするエルザ。
「こちらこそ、よろしくお願いするよ」
 仁はそっとエルザを抱き寄せ、唇を重ねていった。

 その夜、2人は名実共に夫婦になった。
 山の日ですよ!(違


 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20160425 修正
(誤)『おめでとうございます、御主人様(マイロード)
(正)《おめでとうございます、御主人様(マイロード)
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