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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

30 謎のゴーレム篇

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30-39 調査 一

「くっ……」
「残念だ……」
 5色ゴーレムメイドたちに取り押さえられたジックスとガンノは悔しげに顔を歪ませていた。
 そこへエルザ(の分身人形(ドッペル))がそっと近付いていった。
「おい、何の用だ」
 エルザ(の分身人形(ドッペル))はそれには答えず、右手をジックスの額にかざした。
「な、なんだ、何を!」
 いっさい取り合わずに診察を行うエルザ(の分身人形(ドッペル))。本人以上に無口である。
「『診察(ディアグノーゼ)』」
「……」
 ジックスの診察が終わると次はガンノ。
「何だ、この女!」
 身を捩るガンノを、ゴーレムメイドがさらに押さえつける。
 動きが止まったガンノの額に手を当て、魔法を発動した。
「『診察(ディアグノーゼ)』」
「……」
 難しい顔をしたエルザ(の分身人形(ドッペル))を見たセザール王は、興味深そうに尋ねた。
「エルザ媛、何かわかりましたか?」
「……はい。頭の中に『毒物』が蓄積していて、正常な判断ができなくなっているようです」
 セザール王や他の者たちにもわかりやすい表現で説明するエルザ(の分身人形(ドッペル))。
「何と!」
「それでは、治療すればおとなしくなるのですかな?」
「少なくとも、正常な判断はできるようになると思います」
「それは朗報だ。では、第二迎賓館へ戻りましょう」

 自分たちが乗ってきた馬車及びガンノの馬車を使って移動する一行。ガンノたちは縄で拘束された。
 御者はゴーレムメイドが務めている。

*   *   *

「……何とかこの騒動もこれで収束かな?」
 蓬莱島司令室の椅子にもたれかかり、仁が呟いた。
「……ん。でも、脳の治療は私が行った方がいいと思う」
「ああ、そうか。じゃあもう一度入れ替わるか」

*   *   *

 仁とエルザ(の分身人形(ドッペル))は、診察に使う薬を取ってくる、という名目で『コンロン3』に立ち寄り、本物と入れ替わった。
 もちろん、『回復薬』も持ち出してきている。

 ジックスとガンノは第二迎賓館の医務室へと連れて行かれた。
 途中、あまりに暴れるので『麻痺(スタン)』で気絶させてある。これでゆっくり診察ができるようになった。
「『診察(ディアグノーゼ)』」
 改めてエルザが自ら診察を行った。
「……やっぱり、身体のあちこちに金属らしき異物が蓄積している」
 仁としても、水銀中毒の詳しい症状やメカニズムは知らないので、その蓄積した『異物』を取り除くくらいしか方策は思いつかない。
 エルザも同じだ。
「異物を取り除く。……『抽出(エクストラクション)』」

 この『抽出(エクストラクション)』は特定の成分を分離、抽出する工学魔法だ。知らない物質には無効だが、既知の物質から未知の物質だけを抽出する場合は可能。
 エルザはこれを人体に応用しているわけである。
 人体の構成物は既知なので、それ以外が中毒症状を引き起こしている物質というわけだ。

 抽出されたのはわずかな灰色の粉。化合物なのだろうか、と仁は思った。
「危険だからビンにでも入れとこう」
 回復薬をジックスに飲ませ、空いた瓶に入れる仁。もちろん手で触れることはしていない。風魔法を上手く使ってビンの中へ集めたのだ。
 同じことをガンノにも行い、回復薬を飲ませて処置は完了した。

「……要は、毒が頭に回ってしまい、感情の抑制ができなくなっていたよう、です」
 改めてエルザが説明をする。
 セザール王はそれを黙って聞いていたが、難しい顔で口を開く。
「わかった。とはいえ、この2人の罪は消えぬ。私やラゲード、ラタントを害そうとした事実があるのでな」
 この世界では『酒の上だから大目にみる』というような風習はない。
「まあ、エルザ媛の診断を加味して、多少軽減はできるくらいだな」
 それは仕方ないことなのだろう。
 先のゴーレム競技(ゴンペテイション)飛び入り参加ではないが、特例をぽんぽん作ってしまっては、法の意味がなくなる。
 まして、法を作り、それを守らせる立場にいる人間が率先して例外を作るというのは以ての外だ、とセザール王は結んだ。

 それからはいろいろな処理が行われた。
 まず、首と胴が切り離された10体の『鈍色にびいろゴーレム』の回収。
 それから動きを停止したゴーレムの回収。
 低温での凝固から回復すればまた動き出すのはわかっているので、仁が『制御核(コントロールコア)』を取り出すことで対処した。
『隷属書き換え魔法』で『消去(イレーズ)』する手もあったが、その内容を消すのは惜しいので、こちらの方策を採ったのである。

「さて、『流体金属』の正体は、と」
 セルロア王国からの正式な依頼ということで、仁は礼子を助手にしてゴーレムの解析を始めた。エルザは見学である。
 場所は第二迎賓館内にある小工房。ここは備品などを修理・新調するために備えられた部屋である。

 立ち会い人は第一技術省長官ラタント。
 ジックスたちが運んでいた樽には、まだ少量の『流体金属』が残っていた。
 まずはそれに駄目元で『分析(アナライズ)』を試してみる。
 すると。
「……やっぱり『水銀』か……」
 正確には水銀の『魔力同位元素(マギアイソトープ)』であることがわかった。
 銀とミスリル銀のような関係だ。
 仁は、持ち帰って研究したいからと第一技術省長官ラタントに断り、1リットルほどの『流体金属』を入手した。
 これもビンに入れて運ぶこととなる。
「金属の容器ではまずいのですかな?」
 ラタントが質問してきた。
「ええ、これは『水銀』ですから、いろいろな金属を溶かしてしまうんですよ」
 そう伝えるとラタントは驚いたようだ。
「なんと! そうなのですか?」
「ええ。一部の錬金術師はそれを知っているはずです」
「ふむう……」
 この世界には魔法があるので、金属の精錬法はあまり発達していない。
 金銀を鉱石から分離するための『灰吹き法』すらないようなのだ。

『灰吹き法』は、金銀鉱石を砕いて鉛と共に熱し、融けた鉛に金銀を合金として溶け込ませてからさらに加熱する。この際、十分な空気を送り込んでやると鉛は酸化鉛となって金銀と分離するのだ。
 この際、多孔質な耐火性のある容器で行うことで、酸化鉛だけが吸収され、金銀の合金が容器に残ることになる。
 日本の場合、石見銀山などで行われていたようである。
 この時、鉛の代わりに水銀を使うこともできる。こちらはアマルガム法と呼ばれ、必要な燃料は少なくて済むが、蒸発した水銀すなわち水銀蒸気が人体に有害なので、実用性には程遠い。
 あとで水銀の危険性に関して詳しく説明しよう、と仁は思った。

 それはさておき、そんな折にジックスたちが目覚めた、という知らせが入り、仁たちも尋問に立ち会うべく一旦小工房を後にした。
 いつもお読みいただきありがとうございます。
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