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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

30 謎のゴーレム篇

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30-30 乾杯 二

『それでは、技術の発展を祝って、乾杯!』
「乾杯!!」

 一方、セルロア王国第二迎賓館でも、盛大なパーティーが行われていた。
 乾杯の音頭を取ったのは仁(の分身人形(ドッペル))である。
「いや、『崑崙君』、お疲れでござった」
「いえ、興味深い大会でしたよ」
 仁(の分身人形(ドッペル))に話しかけてきたのは第一技術省長官のラタント。今回の総責任者である。
「『崑崙君』はショウロ皇国の『魔導人形競技(ゴンクレンツ)』にも出たことがあるそうですな。我が国の『ゴーレム競技(ゴンペテイション)』と比べていかがですかな?」
「そうですね……」
 あの時は、少々おかしくなっていたエルザの父に挑まれて行われていただけなので、簡易的な催しであった。それで正直なところを打ち明ける。
「自分が出たのは簡易的な競技でしたから、比べづらいですが、今回のような大会はいいと思いますよ」
 何より、埋もれていた技術者を見出せるというのがいいと思っている。
「そうか。そう言ってもらえると嬉しいですな。何か気付いた点はないですかな?」
 あくまでも非公式な雑談として伺いたい、というラタント。仁(の分身人形(ドッペル))もその意を汲んで、
「そうですね。戦闘系だけでなく。生活補助系ゴーレムの競技があってもいいのではないでしょうか」
 と言ってみる。
「ほう? つまり貴公の『侍女ゴーレム』のようなゴーレムを競わせると?」
「ええ。もちろん、戦闘用とはまったく別枠でです。つまり、男女別競技、のようなものですね」
「なるほど。それは面白そうだ、何より華がある」
 あくまでも雑談としてではあるが、ラタントはその考えが気に入ったようだった。

「いやいや、ジックス殿、貴殿のような技術者が野に埋もれていようとは、思いもしませんでしたぞ」
 別の一角ではジックスが地方貴族に取り囲まれている。
 その表情はまんざらではないようだが、どこかに不満が透けて見えている。
 もっと高位の貴族と近づきになりたいのかも知れない。

「エルザ媛、聞きましたよ。婚約の次は結婚式ですね」
「……恐れ入ります」
 エルザ(の分身人形(ドッペル))に話しかけているのは国王セザールである。
「我が国に来られるのは後の方ですが、その分盛大な宴を開きますよ」
「……あの、ほどほどでお願い、します」
 今現在、実際に操っているのはエルザ自身なので、受け答えも違和感はない。

「残念でしたな、ヤルイダーレ殿」
「これはドナルド殿、恐れ入ります。『アルファ』の実力を見せつけられました」
 また別の一角では、エゲレア王国からの来賓、ヤルイダーレとドナルド・カローが談笑している。
「何の。今は引退しておりますので最早『アルファ』ではありません」
「とはいえ、その実力は健在。まだまだ学ぶべきものは多いようです」
「それは私とて同じ。かなりの自信作だったが、優勝は逃してしまった」
 そこへ、ショウロ皇国のエーリッヒ・ジフロも加わった。
 2、3、4位が顔を揃えた形だ。
 そしてさらに。
「『鋼鉄騎士(シュタールリッター)』は斬新な設計でしたね」
 仁(の分身人形(ドッペル))も加わる。もちろん、こちらも仁自身が操縦している。
「これはジン殿、そういっていただけると嬉しいですよ」
「限られた出力をどう使うか、いいテーマでしたね」
 ぼかして表現した仁(の分身人形(ドッペル))であったが、それを聞いてエーリッヒ・ジフロは驚く。
「これはこれは、さすが『魔法工学師マギクラフト・マイスター』ですな」
 出力を自在に割り振っていることを見抜いた仁に対し、敬意を表したエーリッヒ・ジフロであった。
 ドナルド・カローはというと、『統一党(ユニファイラー)』から『懐古党(ノスタルギア)』へと変わった際、仁とも顔を合わせているので、『一応』顔見知りである。
統一党(ユニファイラー)』を滅ぼした『デウス・エクス・マキナ』が仁と同一人物、というか仁が操る身代わりであることまでは知らない。

「ところで、『風』を纏うという発想ですが、あれは素晴らしかったですね」
 今度はヤルイダーレに話しかける仁(の分身人形(ドッペル))。
「いや、お恥ずかしい。『ザーベラー(魔術師)』などと称しておきながらあの程度しかできなくて」
「いえ、そんなことは。本当に感心させられました」
 有り余る資材と恵まれた能力を持つ仁は、限界を極めようと努力する、その姿勢に熱いものを感じていたのだ。

*   *   *

 ひとしきり談笑した仁(の分身人形(ドッペル))が目でエルザ(の分身人形(ドッペル))を捜すと、セザール王とまだ何か話をしていた。
 そこへ仁(の分身人形(ドッペル))がゆっくり歩いていくと、エルザ(の分身人形(ドッペル))とセザール王、双方同時に気が付いたようだ。
「やあ、『崑崙君』、今婚約者殿と君の噂をしていたところだよ」
「陛下、今回の『ゴーレム競技(ゴンペテイション)』の成功、おめでとうございます」
「うむ、ありがとう」
 さらにそこへ、ジックスがやってくる。国王陛下だけだと畏れ多くてなかなか近づけなかったのだろうが、今は仁とエルザ(の分身人形(ドッペル))がいるので、話しかけやすいと踏んだのだろう。
 纏わり付いていた地方貴族は尻込みしてしまい、寄ってきたのはジックスだけとなった。
「ご歓談中失礼。ジン殿……いや、『崑崙君』とお呼びした方が?」
 まず話しかけられたのは仁であった。
「『崑崙君』、敬服いたしました。まだあれでも全力ではなかったのでしょう? いや、『ファントム』もですけどね」
 敬語ではあるが、話の中身に若干の自尊心が透けて見えるようだ。
「まあ、模擬戦は所詮お遊びですし、『ファントム』の真価は戦闘にあるのですがね」
「ゴーレムの役目を限定するのはどうかと思いますよ」
 仁が軽く反論すると、ジックスは仁を睨むようにして言葉を返してきた。
「取り繕ってみても、ゴーレムの目的は戦闘でしょう。人間には到達できないレベルの戦いができる。……そしていずれは、人が戦う代わりにゴーレムが戦えばいい」
「人間の代わり、という点には賛成ですが、それは何も戦闘に限ったことではないでしょう」
「いや、こうした技術が一番発達するのは戦争のとき。それは歴史が証明しています」
 いやに自信満々なジックスに、分身人形(ドッペル)を操っている仁は水を向けてみることにした。
「ですが、300年前の『魔導大戦』では……」
「あれは歴史上の汚点です!」
 皆まで言わないうちに、ジックスは勢い込んで遮る。
「あれがなければ、魔導技術はもっともっと発展していたはずなのに……!」
「いや、だから戦争が技術を発展させるとは一概に言えないというんです」
 これは歴史的事実であるから、ジックスも反論しづらい。
「……ですが……!」
 それでも何か言おうとするのを遮るように、仁は畳み掛ける。
「人的損失も大きいですし、物資も消費されます。それは国力を低下させます。もちろん、防衛のために戦うことを否定はしません。ですが、戦うことが目的の戦争はするべきではないと思います」
「……!」
 仁の言葉に、ジックスは返す言葉を失った。
 仁自身、たいした論客ではないという自覚があるが、その仁に言い負かされたジックスは、どうやら交渉事は下手なようだ。

「ジックス、と言ったか」
 そんな彼に、セザール王が声を掛ける。
「……は、陛下」
 少し暗い声で返事をするジックス。
「そなた、その技術はどこで学んだものだ?」
「……一時的に師に付いたりはしましたが、ほとんどは独学であります」
「ふむ。……師の名前を聞いてもよいか?」
「はっ。……フレシアスと……」
「と?」
「……ジダン、です」
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 お知らせ:
 28日の投稿にも書きましたが、本日早朝から31日午後くらいまで所用で実家へ帰っています。その間レスできなくなりますので御了承ください。
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