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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

30 謎のゴーレム篇

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30-22 推測

「エルザ、相談がある」
 仁の言葉に、エルザは微笑みをもって答えた。
「……わかってる。『分身人形(ドッペル)』と入れ替わるつもり、でしょう?」
「大当たり」
 仁は苦笑を交えた称賛をエルザに贈った。
「その材質を急ぎ調べてみたい。こっちの『ファントム』が、どうにも気になってしょうがないんだ」
「ん、わかる。行ってらっしゃい」
「行ってらっしゃいじゃないぞ。エルザもおいで」
「え?」
「何があるかわからないんだから、一緒にいた方がいい」
 仁としても、アニメや小説で『大丈夫だろう』と過信していて彼女や家族を攫われるというパターンを多く見てきたゆえの判断だ。
「ん、わかった」

 そこで仁は、エルザと礼子と共に『不可視化(インビジブル)』の魔法に包まれ、『コンロン3』へと向かった。
 同時にそこへは、鎧の欠片を持った『エルム』も来ていた。
『コンロン3』には2名の警備兵が付いているが、『不可視化(インビジブル)』のおかげで気付かれてはいない。
『エルム』から鎧の破片を受け取った仁は、無言のまま『コンロン3』内の転移門(ワープゲート)で蓬莱島へ飛んだ。

『お帰りなさいませ、御主人様(マイロード)、エルザ様』
 いつもどおり、老君の声が出迎える。
「入れ替わりに俺とエルザの『分身人形(ドッペル)』を送り込んでおいてくれ」
『わかりました』
 老君に指示を出した後、仁は工房へと急いだ。エルザと礼子もそれに続く。
 工房の作業台に、サンプルとなる鎧の破片を置き、いよいよ解析開始だ。
「これが鎧の破片か。軽いな……」
 第一印象は『軽い』ということ。
「ほんとに、軽い」
 エルザもサンプルを持ってみて、その軽さに驚いていた。
「さて、この金属だが……」
 仁の現代日本での記憶の中に、該当するものが1つある。
 それは『分析(アナライズ)』を掛けずとも判断が付いた。
「これは『発泡金属』だ」
「『発泡金属』?」
 オウム返しに質問してきたエルザに、仁は説明する。
「ああ。俺も聞きかじっただけだけどな」
 仁のいた現代日本でもまだまだ開発途上だった素材である。
「ガスなどを使って、アルミニウムやチタンを発泡させる、くらいしか知らない」
 そして目の前のサンプルをまじまじと見る。
「素材はチタン……軽銀だろう。そして、もの凄く微細な穴が無数に空いているんだ。だから艶消しに見える」
 どうやって作ったかはわからない、と仁は正直に話した。
「ジン兄でもわからないの?」
 驚きを隠せない様子のエルザ。
「ああ。だが、同じような物を作れない訳じゃないけどな」
 幾つか想像できる製法がある、とも補足した。
「例えば?」
 それが知りたい、というエルザである。仁は椅子の背もたれに身体を預け、自説を話し始めた。
「まず構造としては、無数の小さな穴が空いていればいいわけだ。つまり、『小さな泡』を金属の中に作ってやればいい」
「ん、わかる」
「問題はそれをどうやって行うかだ。まず考えられるのは、溶けた状態の金属中に気泡を発生させること」
 溶融状態だとかなりの高温であるが、『軟化(ソフトニング)』なら常温で可能だ。
「……確かに」
「だが、普通の気泡ではここまで微細な発泡状態にはならないだろうな。そこでもう一つの可能性として……」
 魔法で泡を作る、と仁は説明した。
「それなら、やり方次第でかなり微細な泡もできるはずだ」
「ああ、なるほど。さすがジン兄」
 しかし、仁は首を振った。
「だけど、このサンプルはまた別の方法で作ったみたいなんだよな……」
 そして腕を組み、仁はサンプルをじっと見つめた。

「でもジン兄、これって、弱いんじゃあない?」
 エルザの声に、仁は製法を考えるよりも先にするべきことがあることを思い出した。
「ああ、確かにな。だからこうして割れて破片になったわけだし」
「じゃあ、何のためにこんなものを作ったの?」
「それもそうだ」
 発泡金属の利点は、軽くなることや耐熱性が上がる(一部の合金)などあるが、鎧にするというのはいただけない、と仁は思っている。
「確かに衝撃は吸収するだろうがな……」
 ただそれだけだ。総合的にみたら防御力は低いだろう。
 そこに、老君からの追加情報が入る。
御主人様(マイロード)、現場にいた『エルム』から、その鎧を積んだ馬車には、何か重い液体を入れた樽も一緒に積まれていると言う情報が入っております。その液体の重さ……比重は液体金属並みであろうという推測と共に』
「何!」
 新たな情報に、椅子から立ち上がる仁。
 そしてもう一度腰を下ろすが、その時には、顔ににやりとした笑いを浮かべていたのである。
「ジン兄? どうしたの?」
「……今の情報で、この『鎧』の使い途がわかった気がする」
「え?」
 首を傾げるエルザに、仁はゆっくりと諭すように説明をする。
「発泡金属と液体金属。この組み合わせで気が付くことはないか?」
「……えっと、染み込む?」
「そう」
 仁は大きく頷いて見せた。
「おそらく、この発泡金属で作った鎧に、液体金属を染み込ませてはじめて、本来の性能が発揮されるんだ」
「本来の性能、って?」
 その問いに仁は苦笑を返した。
「それこそ、その液体金属がないからわからない。だが、2つほど推測は立ててみた」
「聞かせて」
「もちろんだ。……まずは、鎧の強化」
「ん、それはわかる」
「だろうな」
 発泡……有孔性金属と『液体』金属とくれば、誰でも連想するだろう。
「それにより、劇的な強度アップが見込めると思う」
 少なくとも、41番、『ファントム』の身に着けた鎧の材質が、仁にも見当付かなかった理由がそれだ。
「合金でもなければ、メッキでもない。『染み込んだ』状態だから、外観も他に類をみない」
 遠目では判断できなかったのは当然といえる。
「だが、おそらく、と前置きした上で、もう一つの推測が本来の目的ではないかと思うんだ」
「それは?」
「それこそが、この前から追い続けているものの一つ——」
 仁は一度言葉を切ってから、また続ける。
「『流体変形式動力フルードフォームドライブ』の使い方だ」
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