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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

30 謎のゴーレム篇

1110/1504

30-20 ハプニング

 遅れて済みません……m(_ _)m
 転がり出た十数体分の鎧。
 仁が見れば、ジックスが連れたゴーレムが身に付けているものと同じ形式であることがすぐわかったろう。
 ただし、色は違う。くすんだ、艶のない暗い灰色をしていた。

「す、すまん! 大丈夫か、そちらの人!」
 ルコールは相手馬車を気づかう。
「ちょっと! あなたたち! しっかりしなさい!」
 ヴィヴィアンは自分たちの馬車の御者を介抱した。
「うう……」
「あいたたたた……」
「よかった、無事なようね」
「無事じゃねえっすよ……」
「あちこち痛えし……」
「それだけ喋れれば大丈夫」
「ひでえなあ……」
 ヴィヴィアンたちの御者は打撲だけで済んでいるようだが、相手の馬車の方はというと。

「おい! しっかりしろ! おい!」
 気を失っているようである。
 相手の馬車も4頭立てで、御者以外には誰も乗っていないようだ。
「ルコールさん、どうですか?」
「ああヴィヴィ……ヴィア、どうもいかん。頭を打っているらしく、気を失ったままなのだ」
 見れば、まだ若い男である。ルコールが気付かせようと揺さぶっているので、ヴィヴィアンはそれを止めた。
「ちょっと! あまり揺すっちゃ駄目です!」

 その頃になると、騒ぎを聞きつけたか、ゴーレム競技(ゴンペテイション)会場の警備員が駆け寄って来た。
 馬車が2台転がっているのを見れば、何があったかは誰でもわかる。
 ということでまずは事故処理だ。
 警備用のゴーレムを1体引きつれていたので、まずは転倒した馬車を起こし、道脇に移動させるところから始まった。
 ルコールたちの馬車は荷物がほとんどないため軽く、簡単に起こせたが、相手の馬車はそうではなかった。
「な……何だ?」
「お……重い!」
 警備員2名とゴーレム1体で掛かり、やっとの思いで馬車を起こしたのである。

 まだ相手の男は気が付かないので、ルコールとヴィヴィアン、それに御者をしていた手伝い2人が事情を説明することになった。
ゴーレム競技(ゴンペテイション)を見たくて急いでいたら、脇から出てきた向こうの馬車とぶつかってしまい、双方転倒したんです」
「ふむ」
 気を失った男の治療のため、ゴーレム競技(ゴンペテイション)会場に詰めていた治癒師が呼ばれてきた。
「『治療(キュア)』」
 とはいえ、初級の治癒魔法しか使えないらしく、あまり効き目はない。
「とりあえず、会場の救護室へ運ぶとするか」
「それがいいだろう」
 警備員2人は相談し、ゴーレムに男を運ばせていくことにした。
 1人が付いていき、1人は残って、ルコールたちの相手をする。
「向こうの馬車はどうするのだ?」
「あ、俺が移動させましょう」
 手伝いの男が申し出た。
「ああ、それなら、2台とも道脇でなく、向こうの馬車用の空き地に移動させてほしい」
 ゴーレム競技(ゴンペテイション)会場用の駐馬車場である。まだ若干の空きがあるので、そこへ運んでほしいということだった。
 ゆっくりと馬車が移動していく。
「おんや?」
 事故の相手方の馬車を移動させている手伝いの男が、怪訝そうな顔をした。
「どうしたの?」
 まだ距離が近かったので、その呟きを聞きつけたヴィヴィアンは、おや、と思って尋ねた。
「いえ、動きが重いなって。……こりゃ、よっぽど重い荷物を載せてるんですぜ」
「……ふうん?」
 そういえば、先程馬車を起こしていた警備員もそんなことをぼやいていたな、とヴィヴィアンは思った。
「重い積み荷ですか……いったい何なのでしょうね」

*   *   *

 何気ない言葉であったが、そこには真実の一端が潜んでいた。
 ヴィヴィアンを隠密裏にガードしている『隠密機動部隊(SP)』『エルム』は、一部始終を見ており、それを老君に送信していた。
『謎のゴーレムと同じ型の鎧ですか』
 それは今現在、ゴーレム競技(ゴンペテイション)に出場している飛び入りのゴーレムと何らかの関係があるはず、と老君は推測した。
『違法にならない範囲で調査を行って下さい』
 今のところ緊急性はないため、こうした穏健な指示を出した老君であった。

*   *   *

「とりあえず法を遵守しつつ、ですか……」
 指示を受けた『隠密機動部隊(SP)』の『エルム』は、共にヴィヴィアンを護衛しているもう1人の『隠密機動部隊(SP)』である『アッシュ』にヴィヴィアン護衛の任を一時任せ、自分は事故現場を探り回った。
「何か手掛かりになりそうなものはないですかねえ」
 と、その鋭い目に写ったものがある。
「これは……」
 金属の欠片。色からして、先程転げ出た鎧の一部に違いない。
 落ちた衝撃で欠けたのであろう。思ったより脆いということだ。
 掌に載るくらいの欠片ではあるが、分析には十分であろう。
「落とし物、というか、元の形がわからないならもうこれはゴミですよね。金属片が道に落ちていたら怪我をする人が出るかもしれません。片付けるのが筋というものでしょう」
『エルム』はまずそれを第一の手掛かりとして確保。
「もうないでしょうかね……」
 だが、さすがにその場にはもう何も残っていないようだ。
「と、なると、向こうの馬車に何か手掛かりがあるかも」
 再び『不可視化(インビジブル)』の魔法を身に纏い、『エルム』は駐馬車場へと向かった。

*   *   *

 駐馬車場には、ヴィヴィアンたちが乗ってきた馬車と、事故を起こした相手の馬車とが並べて置いてあった。
 手伝いの男たちはヴィヴィアンたちの馬車の中で昼寝をしている。
 そして、同じ敷地の端には警備員の詰め所と仮設の救護室があって、ヴィヴィアンとルコール、それに気を失った男はそこにいるようだ。
 一方馬車の方には、危険物等を積んでいないかどうか規則に則って、おざなりではあるが確認を行おうとしている警備員が2名。
(ちょうどいい。横から見せてもらいましょう)
 ヴィヴィアンとルコールの馬車には、昼寝をしている手伝いの2人と最小限の手荷物しかなく、チェックはあっという間に終わる。
 だが、もう1台の馬車の荷物は。
「おい、こりゃ何だ?」
 先程も見かけた、鎧が十数人分。
「変わった鎧だな。……にしても、軽いな?」
「どれどれ。……本当だ。見たところ鉄か何かのようなのにな」
「新しい素材なのかもしれんな。人が集まっているから売り込みに来たといったところか」
 謎の金属でできた鎧については、別段怪しいというほどでもなかった。
 そして。
「あとは……樽が2つか。水か酒でも入っているのかな?」
 そう言った警備員は、手にした警棒で樽を叩いてみた。すると、ごん、というような低い音が響いたのである。
「おいおい、何だ、この音は?」
「少なくとも水が入っているような音じゃないな」

 同じ音を『エルム』も耳にしており、同時にその音は老君にも伝えられていたのである。
 いつもお読みいただきありがとうございます。
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