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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

30 謎のゴーレム篇

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30-18 演武

〈さあ、ゴーレム競技(ゴンペテイション)2日目、最終日です! ……2日間というのは短いですね、解説のトルフさん〉
〈そうですね、司会のエムシィさん。ですが、こうした盛況が続けば、開催日数も増えると思いますよ〉
〈だといいですね。……さあ、2日目は、『演武』と模擬戦です!〉
〈ここで解説しておきますと、『演武』といいますのは、それぞれのゴーレムが得意な戦闘技術などを披露することです〉
〈なるほど、わかりやすいです。ところで、『など』とはどういう意味でしょうか?〉
〈はい、『など』と付けたのは、戦闘技術でなくてもよいからですね。例えば踊りでもいいのです。もちろんそれ相応に点は低くなりますが〉
〈ありがとうございます。……今、点について話が出ましたので、ここでご説明致します。『演武』に付きましては、審査員5人がそれぞれ10点満点で評価し、その合計を競います〉
〈因みに、審査委員長が『魔法工学師マギクラフト・マイスター』のジン・ニドー氏です。そして特別審査員として国王セザール陛下がいらっしゃいます〉
〈それはすごいですね〉
〈審査員は公正に選ばれたそうです〉
〈ありがとうございました。さて皆様、そろそろ参加者たちの準備が整ったようです〉

 合図の太鼓と鉦が鳴らされると、控え室へと続く門が開き、ゼッケン1番から順に参加者とそのゴーレムたちが入場してきた。
(演武、か……)
 仁はいろいろ考えていた。
 既に、大会役員に今日も演武の模範演技をする了解は取り付けてある。
(さて、どう反応するか、それが予想つかないからなあ……)
 謎の男とゴーレム、その目的が不明なままなのが、予想を困難にしている最大の要因だ。
(少なくとも、やり方を見ている限り、何かよからぬ企みがあるとしか思えないし)
 研究目的ならもっと他にやり方があるだろう、と仁は独りごちた。
(それにあのジックスとかいう男……)
 急遽、ニカライの町へ第5列(クインタ)を派遣し、ルコールの友人、ジダン・ケーシーに接触し、それとなく研究を盗んだ助手の人相を調べてみたのだが、どうもジックスとは別人のようなのだ。
 そのガンノ・アッシャーはもっと若い男だったようであるし、髪や目の色も違うらしい。
 もちろん、偽名や変装の可能性もあるが、何とはなしに、仁は複数犯……ジダンの研究を盗み、チンピラ相手とはいえ私刑をしていたのでこう呼ぶ……のような気がしているのだ。
 というのも、例の『凧式』飛行船にしても、個人であれだけのものを用意することは難しいだろうという考えからである。
 自分のことは棚に上げているのはわかっているが、そうそう自分のような存在が他にもいるとは考えにくいからだ。

 一際大きな歓声が上がったので、仁は物思いから覚め、顔を上げた。
 ちょうど41番が入場してきたところである。
 そして41番で最後なので、いよいよ大会2日目が始まるわけだ。

〈参加者が全員揃いました! 残念ながら、13番、21番、37番は、本日は棄権することになりました〉
 昨日の結果を見て、2日目の参加は取りやめたということだろう。
 無理もない、と仁は思った。
〈さて、本日も、審査員長の『魔法工学師マギクラフト・マイスター』、ジン・ニドー氏の作ったゴーレムによる『演武』が行われます〉
『スチュワード』の登場である。

「おお……お?」
「あれ……が魔法工学師マギクラフト・マイスターの作?」
「なんだか期待外れだな」

『スチュワード』は、わざと外見は鈍重に見えるようなデザイン……旧式ゴーレムに似せて作ってあるので、観客が戸惑うのも無理はない。
 だがそれも、『スチュワード』が演武を始めるや否や、感嘆の呟きに変わった。
「お、おおお!」
「す、すごい!」
「速すぎて霞んで見える……」
 セルロア王国で用意された大剣……ツーハンデッドソード=両手剣よりもさらに大きい、グレートソードと呼ばれる剣を片手に持ち、素振りをしているだけ。
 もちろん、人間用のものであるので、『スチュワード』にはこれでもまだ軽いのだ。
 袈裟斬り、逆袈裟斬り、横薙ぎ、逆横薙ぎ、唐竹割り。
 昔、マンガで見た剣道の技を素振りでやらせているだけだが、その身体能力ゆえに見応えがあるようだ。
「おおっ!」
 そしてさらに動きが加わる。
 今度はショウロ皇国の剣技を織り交ぜる。
 とはいっても、上級兵士……分隊長クラスが使うレベルだ。
 それでも、片手剣……ショートソードで行うそれを、グレートソードの片手持ちで行うと、迫力が違う。
 剣が風を切る音が観客席まで届いている。
(そんなところで止めておけ)
 模範演技であるので、ある程度のところで止めておかないと、参加者の演武が霞んでしまうとまずい。
 かといって、41番の気を引けないのも上手くない。
 よって、技術はそこそこにし、身体能力を見せつける方向での演武を行ったわけだ。
(これで食い付いてくるかどうかは五分五分かな)
 演武を終えた『スチュワード』には、万雷の拍手が贈られていた。

〈さあ、ジン・ニドー氏作のゴーレムによる素晴らしい演武も終わり、本戦突入です!〉
〈参加者たちの演武も楽しみですね〉
〈まずは1番、鋼鉄騎士(シュタールリッター)からです!〉
〈1番も剣ですね。しかも、若干小振りですがグレートソードです〉
 鋼鉄騎士(シュタールリッター)もまた、グレートソードを片手で振り回し、技術を見せた。
〈これもまた素晴らしい! セルロア王国の剣技ですね〉
 途中で左手に剣を持ち替える、独特の技を挟み、試技は終わった。
 大きな拍手が巻き起こる。
〈審査員の採点が行われています〉
 手元の『木紙』の小片に点数を書いて大会役員に渡す。それを集計した役員が、結果表示専用の魔導投影窓(マジックスクリーン)に映し出す、という手順だ。
〈28点です!〉
 歓声が起こるが、これが高いのやら低いのやら、今のところわからない。
 仁は『まあまあ普通』ということで5点を付けていた。

 次の2番『ザーベラー』は、普通の片手剣……ショートソードで剣技を見せた。
 それでも、その動きは洗練されており、仁は6点を付けたのだが、他の審査員の評価は辛かったようで、21点に留まったのである。

 次々に演武が行われていく。
 半数が終わった時点での最高点は16番蒼天の騎士(ブルーナイト)の31点であった。
 人気があるだけあって、剣の型は非常に洗練されている。ただし、威力に欠ける、と仁は4点を付けたのだったが。

 26番は珍しく槍を使った演武だった。
 もの珍しくはあったのだが、技術が伴っておらず、結果、16点に留まった。

 35番鉄戦士(アイアンウォリアー)と40番古き戦士(アルトクリーガー)は共にグレートソードを使った演武であったが、鉄戦士(アイアンウォリアー)は27点、古き戦士(アルトクリーガー)は30点を獲得した。
 そして41番。
「おおっ!?」
「2本だと?」
『ファントム』はショートソードを1本ずつ、両の手に持って演武を開始した。
(二刀流……剣だから二剣流?)
 そんなことを考えながら見ていた仁であるが、『ファントム』の動きはどうにも掴みにくい。
(やはり身体構造が違うからだろうか……?)
 だが、その動きは速く、滑らか。剣技も洗練されており、演武は最高得点となる40点を得ていた。
 仁も8点を付けたので妥当な線だ。
 これで演武は終了。因みに、演武においては1位100点などの入賞ポイントはない。

〈トルフさん、演武が終了しましたね〉
〈はい。1番、40番は安定感ある演武を見せてくれました。ですが41番には驚かされましたね〉
〈左右の手に剣を持ち、見事に使いこなしてましたからね〉
〈ええ。人間でしたら、あんなふうに振ることはまず不可能ですね。左右の剣が別人が振るっているように動きながら、互いに干渉しあわない。これは見事と言うほかありません〉
 それは仁も同感である。
(『ファントム』はやはり、かなりの処理能力を持った制御核(コントロールコア)が搭載されているんだな)
 さらに興味を持った仁であった。
 いつもお読みいただきありがとうございます。
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