挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

30 謎のゴーレム篇

1102/1475

30-12 演舞

 7月28日、セルロア王国首都エサイアで『ゴーレム競技(ゴンペテイション)』が開催される日である。
 会場は王城前広場。
 4日前から準備が進められており、貴賓席を含めた観客席や、巨大な魔導投影窓(マジックスクリーン)なども備え付けられていた。
 一般庶民、観光客はもう詰めかけており、開場と同時にほぼ満席となっている。
 開始時間まであと1時間というところで、会場に声が響いた。
〈空をごらん下さい。本日の特別ゲスト、『魔法工学師マギクラフト・マイスター』である『崑崙君』その人が、自ら製作した飛行船で来場されます〉
 観客が空を見上げると、細長い物体が西の空から次第に近付いてくるのが見えた。

 蛇足ながら、蓬莱島のある東から来ずに西から来たのは、時差ボケなどの影響を少なくするため、前日のうちにショウロ皇国の『屋敷』に泊まっていたからである。

「おお、すごい!」
「俺は建国記念式典の時に見たぞ」
「乗ってみたいなあ」
「気球より速いんだな」
「お。下りてくるぞ」

『コンロン3』はゆっくりと降下、指定されていた王城の中庭に着陸した。
 場所が場所なので、仁とエルザ、礼子、それに5色ゴーレムメイドの各リーダーが降りてきたのを見たものは王城関係者だけであったが。

「よく来てくれた、『崑崙君』」
 セザール王自ら、数名の随員と共に仁を出迎えた。
「侍女ゴーレムを連れてきてくれたのか。確かに意表を突き、見栄えもするな」
 セザール王は世界会議の際に世話を受けていたので、彼女等の性能はよく知っている。
「それでは細かい打ち合わせの方は、大会役員と行ってほしい」
「わかりました」
 随員の一人を指差すとせわしなく立ち去るセザール王であった。
「『崑崙君』、今日はよろしくお願いします。私は大会役員のカバネア・ガスモといいます。カバネアとお呼び下さい」
 カバネアは30代前半くらい。人当たりのよい感じのする男だった。
「よろしく。ジンと呼んで下さい」
 握手を交わす仁。そしてエルザと礼子を紹介する。
「婚約者のエルザです。魔法技術者(マギエンジニア)であり、国選治癒師(ライヒスアルツト)でもあります」
「エルザ・ランドルです。よろしくお見知りおき下さい」
 略式のカーテシーでお辞儀をするエルザ。
「おお、貴女がエルザ媛ですか。お噂は聞き及んでおります」
 続いて仁は礼子を紹介する。
「そしてこの子が礼子です。ショウロ皇国では従騎士の位を賜っております」
「礼子と申します」
 これもまた、略式のカーテシーで挨拶する礼子であった。
 そして最後に、連れてきた5色ゴーレムメイドを。
「この5人が、今回デモ用にと思って連れてきました5色ゴーレムメイドです。目の色が紫色なのがアメズ、赤色がルビー、黄色がトパズ、水色がアクア、緑色がペリドです」
 仁からの紹介が終わると同時に、5体揃って『よろしくお願いいたします』と言い、カーテシーでお辞儀をした。
「こ、これは……いや、実に素晴らしい!」
 その仕草にしばし見とれていたカバネアであるが、やがて役目を思い出すと、仁に向かって付いて来て下さい、と言った。

 『ゴーレム競技(ゴンペテイション)』会場に隣接して設けられた仮設の建物の1つに仁たちは案内された。
 そこで大会についての最終打ち合わせを行う。
 競技内容に関しては、3日前に報酬をもらいに来た際説明を受けているし、文書でももらっているので既に理解している。
 なので、ここでの説明は、最終的な参加者についての説明が主で、あとは仁の役割についての確認であった。
 その中には、審査員長としての簡単な挨拶、というのも含まれていた。

*   *   *

 大会の始まる10分前、仁たちは審査員席に着いた。
 階段状になった席のかなり上方である。審査員席の上は貴賓席で、なぜかセザール王は仁の真後ろであった。
『詳しい解説が聞きたいからな』というのがその理由らしい。
 仁の右隣はエルザで、左隣は先程のカバネアである。礼子は仁の右斜め後ろに立つ。
 5色ゴーレムメイドは控え室で出番を待っている。

〈ご来場の皆様、お待たせ致しました。いよいよ我等がセルロア王国における記念すべき第1回目の『ゴーレム競技(ゴンペテイション)』が開始されます。まずはセザール国王陛下より開会宣言です〉
 仁たち要人の前にはマイクと同じ働きをする魔導具、『集声の魔導具(ボイスコンデンサ)』が置かれており、同じくスピーカーの役割をする魔導具、『拡声の魔導具(ラウドスピーカー)』によって会場に声を響かせることができるようになっているのだ。

〈セザール・ヴァロア・ド・セルロアである。『ゴーレム競技(ゴンペテイション)』の開会を宣言する。皆、正々堂々と競い合うように〉
 短い国王の挨拶の後は大会委員長である第一技術省長官ラタントの番だ。
〈大会委員長のラタントであります。このたび、友好国であるショウロ皇国で行われている『魔導人形競技(ゴンクレンツ)』に敬意を表し、我が国でも『ゴーレム競技(ゴンペテイション)』を行う運びとなりました。ゴーレムは、人間にできない仕事も行うことができ、これからの世界になくてはならない……〉
 やや長い演説であった。長い演説の嫌いな仁は、自分は短く済ませようと心に決めたのである。

 そして来賓代表として、ショウロ皇国魔法技術相、デガウズ・フルト・フォン・マニシュラスが簡単な祝辞を述べると、いよいよ仁の番が回ってきた。
〈『魔法工学師マギクラフト・マイスター』のジン・ニドーです。こうして、ゴーレムの平和的な競い合いができることを嬉しく思います。これからも、世界の発展と平和に、ゴーレム技術が役立つことを願ってやみません〉
 そしてここで5色ゴーレムメイドの出番である。
 ぶっつけ本番であるが、事前の打ち合わせどおりに控え室の扉が開かれた。
〈自分が作りましたゴーレムです。名付けて『5色ゴーレムメイド』。アメズ、ルビー、トパズ、アクア、ペリドです〉
 5体のゴーレムメイドたちは一糸乱れぬ足取りで競技場の中央に進み出る。
 そこで見事なカーテシーを、四方へ向けて計四回披露。
 それだけで観客席からは溜め息が漏れる。
 だが、彼女等の演舞はこれからが本番だった。

 5体のゴーレムメイドたちが手を繋ぎ、初めはゆっくりと、そして次第に速く回り始める。
 そして人間には不可能な速さになったところで手を離し、5体は同時に後方へ飛び下がった。
 後方宙返りを2回行い、綺麗に着地。そして再び前方へ向けて駆け出した。
 当然5体は中央で鉢合わせする形になるが、ぶつかると見えた瞬間に急停止。再度手を繋ぐ。
 そして、チアリーディングでいう『スタンツ』、つまり組み体操のような演技を行い始めた。
 アメズがルビーを肩車し、それをトパズが。それをまたアクアが肩車し、ペリドに乗り……と、人間では到底不可能な、5段肩車を行ったのである。

「おお……」
「すごい……」
「ゴーレムに服を」
「見事ですな」
「あの動き、何と素晴らしい!」

 観客から称賛の呟きが漏れ始めたが、5色ゴーレムメイドの演技はこれで終わりではなかった。
 なんと、肩車の状態からさらに、下の者の肩に立ち上がったのである。
 これには全員がびっくり仰天。

「な、なんと、なんと……!」
「あ、あのようなことが可能なのか!」
「一つ間違えれば転倒して大惨事だろうに……!」

 仁としてもぶっつけ本番での演技なので、危ないときは『力場発生器フォースジェネレーター』で姿勢を制御して構わない、と言い含めておいたのだが、ほぼ無風という好条件も手伝って、彼女らは見事にその演技をこなしたのであった。

 そして、上から順に飛び降りで終了、なのだが、一番上は6メートル近い高さからなのにもかかわらず、無事着地したものだから、驚きを通り越して言葉も出なかったのである。
 演技を終えた5体が、もう一度カーテシーで挨拶をして控え室に引っ込んではじめて、思い出したように拍手が起こり、それが切っ掛けで拍手と歓声が観客席全体に広がって、割れんばかりの大拍手となったのであった。

『さすが、各国が認めた『魔法工学師マギクラフト・マイスター』のゴーレムだ』、と、列席者全員が感嘆したのは言うまでもない。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20160311 修正
(誤)セルロア王国首都ロイザートで
(正)セルロア王国首都エサイアで

(旧)紫色なのがアメズ、赤がルビー
(新)紫色なのがアメズ、赤色がルビー
 他の色は全部、「*色」としていたので揃えました。
(旧)〈ショウロ皇国『魔法工学師マギクラフト・マイスター』のジン・ニドーです。
(新)〈『魔法工学師マギクラフト・マイスター』のジン・ニドーです

(旧)『さすが、ショウロ皇国が認めた『魔法工学師マギクラフト・マイスター』の
(新)『さすが、各国が認めた『魔法工学師マギクラフト・マイスター』の

(誤)「それでは細かい打ち合わの方は
(正)「それでは細かい打ち合わせの方は
 orz
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ