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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

30 謎のゴーレム篇

1101/1622

30-11 凧式

 3/9に手違いで一度本話をアップしてしまいました。
 一度お読みになった方には申し訳ないですが再度のアップし直しです。
 仁は思いついたことを検証するため、工房へ向かった。
「礼子、手伝ってくれ」
「はい!」
 最近、あまり仁の手伝いをさせてもらっていない礼子は、大喜びで手伝いを開始した。
地底蜘蛛絹(GSS)を用意してくれ。それと、軽銀」
「はい、すぐに」
 地底蜘蛛絹(GSS)は丈夫で耐熱性が高いレア素材であるが、蓬莱島では例外的に豊富に手に入る。
 それは地下で地底蜘蛛(グランドスパイダー)を養殖しているからだ。
「模型だから、10分の1くらいでいいだろう」
 手早く作業をしていく仁。
 すぐに模型は形をなした。
御主人様(マイロード)、それは?』
 出来上がったのは、帆を水平に、そして真上に張ったゴンドラ。
「ああ、俺の考えではこれでも空を飛べるはずだ」
『これでですか?』
「そうだ。『ミニ職人(スミス)』に乗って試してもらおう」
「お父さま、ミニ職人(スミス)2がちょうどおります」
 ミニ職人(スミス)は身長10センチのミニミニゴーレムである。細かい加工の仕上げや、模型での試作運転に威力を発揮する。

 研究所前の広場で実験だ。
「……いいか、説明は以上だ。頼んだぞ」
「ハイ、ゴシュジンサマ」
 ミニ職人(スミス)2は発声装置も小型なので、周波数の高いキンキン声で返事をした。
「よし、『強風(ウインド)』発生装置、起動」
「リョウカイ」
 ゴンドラに積んだ小型の魔道具から風が上向きに吹き出す。
 その風を受けて帆が膨らんだ。
「……浮いた!」
 要は『凧』が浮くようなものである。
 かつて、セルロア王国の大商人エカルト・テクレスは、風魔法に反動がないことを利用して帆船の帆に風魔法で起こした風を吹き付けて船の推進力とした。
 この『凧式飛行船』も同じ考え方である。
 吹き付ける風の角度を変えれば、進行方向も変えられる。
「お父さま、上手くいきましたね」
御主人様(マイロード)、さすがです。おそらくこれが、昨夜確認された飛行物体の原理と思われます』
 礼子と老君から讃辞が述べられた。
「でも、この方式は無駄が多いよな」
 風魔法で発生させた風の大半が無駄になっているようにみえる。これでは効率が悪いと言わざるを得ない。
「だが、今の世界には合っているか……」
 既存の魔導技術だけで作れる、この『凧式飛行船』は、熱気球より速度は出せるし、積載量も多い。
「誰かが発明していてもおかしくはないわけだしな」
 それがたまたま、昨夜見かけたものだった可能性もなくはない。
『ですが、ちょっと気になります』
「だな……」
 ジックスという男と謎のゴーレム。
 彼等が消え、同時に見かけられた飛行体。
 これが何を意味するのか、今のところはまだ不明である。

『ですが、そのジックスという男と、ゴーレムの外観は特定できますので、この先、第5列(クインタ)に捜索させておきましょう』
「うん、そうしてくれ。なんとなく、そのゴーレムが気になるんだ」
『でしたら、秘密裏に撮影した映像があります』
「ああ、そうか。ブルーランドには第5列(クインタ)を増強していたんだっけな」
 折から、3体の第5列(クインタ)がブルーランドにいたため、ジックスと謎のゴーレムの出現を捉えることができていたのである。
『クズマ伯爵に追い払われたあと、ガラナ伯爵の下で雇われたその日に失踪するとは思いませんでしたが』

 司令室に戻った仁は、魔導投影窓(マジックスクリーン)を見つめた。
 そこには、謎のゴーレムとガラナ伯爵の私兵の模擬戦が映し出されている。
「ふうん……。少し動きに違和感があるな」
御主人様(マイロード)ならそう仰ると思いました』
「老君も感じたか」
「わたくしにもどこかおかしい、と思えます」
 仁の隣にいる礼子も違和感を口にした。
「おそらくだが、あのゴーレムは内骨格式じゃない」
 斜めについた筋肉によらない捻り運動。それは腕や脚の捻りに特徴が出る。
「となると外骨格ということになって、中身は魔導樹脂(マギレジン)ということになるんだが、それもおかしい」
『ですね。あのゴーレムの質量は明らかに中まで金属ではないかと思わせます』
「そうですよ。あの地面のえぐれ方や足のめり込み具合、それに剣を受け止めた際の反動などを見ていますと、かなり重いことがわかります」
「だな」
 それで思い出すのは、以前魔族領で戦った敵ゴーレム、『ゴルグ』だ。
 アダマンタイトの塊で、『変形(フォーミング)』の応用、『流体変形式動力フルードフォームドライブ』(当時仁は別の呼び方をしたが)で動いていた。
「だが、あれよりも遙かに機敏だぞ」
 30人の兵士を相手取って、一撃も喰らわずに全員を退けるというのは並の速度ではできない芸当だった。
『何か新しい方式ということでしょうか』
「それが一番可能性があると思っている」
 先日話題に出た、『変形動力(フォームドライブ)』を突き詰め、生体素材よりも優秀な結果を出せるか、という疑問が、ここで生きてくる。
「あれは、その証明なのかもしれない……」

*   *   *

「『ゴーレム競技(ゴンペテイション)』に出すゴーレムの準備はどうなっている?」
「はい、既に完了し、輸送中です」
 ここは懐古党(ノスタルギア)本部。
 セルロア王国で行われる『ゴーレム競技(ゴンペテイション)』に参加するのだ。
 とはいえ、懐古党(ノスタルギア)としてではなく、ドナルド個人として、である。
 なにしろ、ナンバー2であるドナルド・カローは、元アルファ、つまりセルロア王国1の技術者だったのだから。
 だが今は、『統一党(ユニファイラー)』の消滅を機に、公式に引退していた。
 とはいえ、引退した今も、ドナルドが有名人であることに変わりはない。
 彼が『統一党(ユニファイラー)』のナンバー2でもあったことを知るものはセルロア王国にはいない。
 であるから堂々と出場できるのである。
「このゴーレムが認められれば、また少し世界に貢献できるでしょう」
「そうだな」
 懐古党(ノスタルギア)のトップ、ジュール・ロランは深く頷いた。
「まだまだフォルツの若僧には負けませんよ」
 ドナルドやステアリーナといった上位陣が抜けた穴を埋めるべく、セザール王の代になって臨時の選考会が行われた結果、若いフォルツ・ダラントがアルファとなっている。
 フォルツ・ダラントは、リシャール王時代にはシータ、つまり8位だった男だ。
「頑張って下さいね。私はこの本部で応援しています」
 鈴を転がすような声。
 かつては『黄金の破壊姫』、今は『黄金の姫君』、エレナである。
「ですが、先日の謎のゴーレムのこともあります。気をつけて下さいね」
「そうだな、エレナの言うとおりだ。ドナルド、気をつけてくれよ」
「わかっています」
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20160310 修正
(旧)アダマンタイトの塊で、『変形(フォーミング)』の応用、『変形動力(フォームドライブ)』で動いていた。
(新)アダマンタイトの塊で、『変形(フォーミング)』の応用、『流体変形式動力フルードフォームドライブ』(当時仁は『変形動力(フォームドライブ)』と呼んだ)で動いていた。

(旧)それゆえ順位的に彼の下、つまりベータであったフォルツ・ダラントがアルファとなっている。
(新)削除
(旧)「まだまだフォルツの若僧には負けませんよ」
(新)「まだまだフォルツの若僧には負けませんよ」
 ドナルドやステアリーナといった上位陣が抜けた穴を埋めるべく、セザール王の代になって臨時の選考会が行われた結果、若いフォルツ・ダラントがアルファとなっている。
 フォルツ・ダラントは、リシャール王時代にはシータ、つまり8位だった男だ。

 20160327 修正
(旧)(当時仁は『変形動力(フォームドライブ)』と呼んだ)で動いていた。
(新)(当時仁は別の呼び方をしたが)で動いていた。
 いろいろややこしくなるのでぼかしました。
 実際「変形動作」と17-24で呼んでましたし……
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