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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

30 謎のゴーレム篇

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30-10 トロフィー

 手違いか。30-11がアップされたようです。
 申し訳ないです。
 アップし直しました。
「……これ、何?」
「……ちょっとまずかったか」
 仁が試しに作ったのは、日本の首都の名を冠する電波タワー型のトロフィーだった。
 いや、トロフィーというよりも、お土産屋に売っている置物のようだ。
「……やり直し」
 再び『変形(フォーミング)』で作り直す仁。
「……今度のこれ、は?」
「……五重塔」
 やはりお土産にしか見えなかったので、また作り直しである。
「今までのは冗談だ。今度は本気」
 工学魔法だからいいものの、型を作ったり一品生産だったりしたら目も当てられない手間の発生だ。
「『変形(フォーミング)』」
「あ、今度はなんかいい感じ」
「そうか?」
 一番下が馬、その上に犬が乗り、さらに猫が乗って、一番上は鶏。
 知る人ぞ知る、某音楽隊がモチーフである。因みに、オリジナルは馬ではなくロバである。

「でも、やっぱりなんか違うな……」
「あ、もったいない」
「……そうか?」
 エルザが気に入ったようだったので、そのオブジェはエルザに譲り、別の白金塊を使うことにした仁である。

「『変形(フォーミング)』」
「あ、すてき」
「……そうか?」
 一度仁は基本に立ち返ろうと、一般的な『優勝カップ』をイメージしてみたのである。
 つまり、深いシャンパングラス(フルート型)のような胴体の左右に取っ手を付け、蓋の上には羽を広げた鳥をあしらったものだ。
 胴体には月桂樹の模様と『優勝』という漢字が浅く彫られていた。
「これがいいって?」
「ん、初めて見た」
 どうも、この世界では『優勝カップ』つまり勝利の『杯』という風習がないらしい。
 そういった点では地球と異なる発展を遂げてきたようだ。
「だがなあ……」
 オリジナルデザインでないところが引っ掛かるが、これ以上いい考えも浮かばなかったので、これに決定することにした。
 ただ、『優勝』の文字は止めた。漢字では読めないだろうし、『優勝』カップでもなかったからだ。
「『魔法工学師マギクラフト・マイスター』だから……MMをデザインっぽく入れておくか」
「あ、ジン兄にしてはいい考え」
「ありがとう……と言っていいんだろうか?」
「ふふ」
 そんな他愛もないやり取りを交えつつ、『魔法工学師マギクラフト・マイスター賞』のトロフィーは完成した。
 台座には黒檀に似た重厚な木を使っている。
「これでよし。明日、残りの素材を受け取りに行った時に渡せばいいな」

 残るはメダルだが、これは自由度はあまりない。そこそこの大きさ厚さの円盤に、年号と、MMのデザイン、そして先代が好きだったと礼子が言っていた白百合をデザインして終了だ。
「裏は?」
「うーん、そうだなあ」
 のっぺらぼうというのも収まりが悪いので、こちらにも月桂樹の模様を入れることにした。
「ジン兄、トロフィーにも入っているけど、それ、何?」
「これは、月桂樹という木をデザイン化したもの……らしい」

 元は、ギリシア神話の中で、太陽神アポロンが愛した女性ダフネが化した月桂樹の枝で作った冠を勝者の頭に載せたことから来るらしい、と仁は簡単な説明をした。
 仁としてもこれ以上の由来は知らない。この話とて、年少の子たちに読み聞かせた子供向けギリシア神話の本に出ていたので覚えていただけだからだ。
 ゆえに、愛の神エロスが恋の矢をアポロンに、拒絶の矢をダフネに向けて射たくだりなどは知らなかった。

 ともあれ、これで頼まれごとも済んだ、とほっとした仁なのであった。

*   *   *

「ふうははは、このゴーレムは素晴らしいな!」
 エゲレア王国伯爵、デーヴ・メイダ・ガラナは愉快そうに笑った。その鼻は右に曲がっている。
 昨年、王城で行われた『ゴーレム園遊会(パーティー)』での騒動に巻き込まれ、鼻の骨を折られ、それが少し曲がったままくっついたのだった。
 しかしながらガラナ伯爵は、ブルーランド西部地区長官。鉱山関連の領地を預かり、金回りがいい。
 その金を当てにして擦り寄る者は多かった。
「で、ございましょう?」
 隣に立つジックスもその一人。薄い笑いを浮かべたジックスは、最初クズマ伯爵の下を訪れたのだが、少し話をした後、『君の話には何か企みを感じる。今回は遠慮しておこう』と言われて体良く追い払われたのである。
 その後、ガラナ伯爵の下へ行き、こうして雇われたのであった。

 今、2人の目の前では、1体のゴーレムがガラナ伯爵家警備の兵士10人を相手取っているところだった。
「相手の戦い方を学習してどんどん強くなっていくのは見ていて面白いぞ。よくぞ儂のところに来てくれた」
「いえ、ブルーランドを事実上牛耳っておられる伯爵の下へ参上するのは当然のことです」
「ぐふふ、よくわかっておるではないか、ところで貴様、このたびセルロア王国でゴーレムの競技が行われることを知っておるか?」
「いえ、初耳です」
「ここのところ、各国共高性能なゴーレムの開発が進められておるようだから、あの国も更なる強化を目指しておるのだろう」
「そうですか……セルロア王国で」
 ジックスはじっと考え込んでいた。
 彼等の目の前では、10人の兵士がなす術もなく剣や槍を弾き飛ばされ、無力化されていた。
「ふははは、すごいぞ! 今度は倍の20人とやらせてみるか!」
「はい、お願い致します」

 結局その日のうちに、伯爵の手兵30人を相手取って瞬殺するまでになったゴーレムと共に、ジックスは姿を消したのである。
 ガラナ伯爵は恩知らずめと憤ったが、1人と1体の行方は杳として知れなかった。

*   *   *

『飛行船か気球らしきもの、ですか』
 だが、ブルーランド担当の第5列(クインタ)から、深夜、全長7メートルから10メートルくらいと思われる飛行物体が西へ飛び去った、という報告が老君にもたらされていた。
『風魔法独特の風切り音、時速は60キロほど……』
 それ以上の情報は得られなかった。
『ウォッチャー』からの監視にしても、飛行船らしきもの、時速60キロということが裏付けられただけである。
 しかも、雲の中に入られたため、そこで監視は中断せざるを得なくなり、それ以降その飛行物体は発見されていないのである。
『西……行き先はセルロア王国、もしくはショウロ皇国でしょうね』
 老君としては、そちら方面の第5列(クインタ)に通達し、注意を喚起すると共に、夜が明け次第仁に報告することを決めたのであった。
 そして。

「飛行船か……」
 仁はすぐに興味を示した。
『はい、熱気球とも水素気球とも違うようです。また、連続した風魔法独特の風切り音も聞こえたということです』
「となると、推進器の音かもな」
 連続して聞こえたことからの推測をする仁。
『浮遊に使った可能性はありませんか?』
「うーん……だが、『気嚢』らしきものが見えたんだろう? 第5列(クインタ)からも『ウォッチャー』からも」
『はい、そのとおりです』
「だとするとやはり推進器と考えるのが妥当かもな。あとは……」
御主人様(マイロード)?』
「いや、なんとなく思いつくものがあるんだが、検証しないと何も言えないな」
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20160310 修正
(旧)つまり、深いシャンパングラスのような胴体の左右に取っ手を付け
(新)つまり、深いシャンパングラス(フルート型)のような胴体の左右に取っ手を付け

20160420 修正
(旧)ガラナ伯爵は、ブルーランド東部地区長官
(新)ガラナ伯爵は、ブルーランド西部地区長官
+注意+
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