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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

30 謎のゴーレム篇

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30-01 現状確認

 新章開始です。
 青い海に浮かぶ孤島、蓬莱島。
 そこは、魔法工学師マギクラフト・マイスター、二堂仁の拠点である。
 超高性能の魔導頭脳『老君』が管理しており、不可侵の基地でもあった。
 無許可で訪れることができる者は仁とその家族のみ。それを『仁ファミリー』と呼んでいる。

 その『仁ファミリー』の一員、『語り部』のヴィヴィアンは、とある伝承を追っていた。
 それは『魔導大戦』前の国とその技術。
 およそ300年前に勃発した魔導大戦は、最終局面で使用された『魔素暴走エーテル・スタンピード』により、実に魔導士の6割を失うこととなったのである。
 魔導士は同時に文化の担い手でもあったため、これを境に文化の継承が一部途絶えてしまうことが起こった。
 考古学者、歴史学者といった面々が、この『失われた』文化を再現しようとしているが、十分とはいえなかった。
 そこで、脚光を浴びつつあるのが『語り部』である。
 民間には文字ではなく言葉で語り継ぐ語り部と呼ばれる職業があり、その一部には過去の事実が隠されているのではないかというわけだ。

 ショウロ皇国で民間伝承を集め、編纂へんさんしていたヴィヴィアンであったが、そこで思い掛けない出会いがあった。
 元『統一党(ユニファイラー)』の考古学者、ルコールである。
 彼は『ギガース』暴走事件後、セルロア王国に逃れていたのだ。
 そこでルコールは、『統一党(ユニファイラー)』時代の知識を生かし、とある貴族をパトロンに持ち、研究資金を確保してショウロ皇国へ調査行に来ていたのである。

「ほう、なるほど……。魔導大戦の前にそんなことがあったのですか……」
 かつての『黄金の破壊姫』、エレナから得た、魔導大戦やその少し前の時代についての知識は、ヴィヴィアンを感心させたものだった。
 また、ルコールにとっても、ヴィヴィアンの記憶力とその知識は、非常に有益だった。
 というわけで2人は今、ショウロ皇国を離れ、エゲレア王国西部にやって来ていたのであった。

*   *   *

 蓬莱島では、主人である仁が老君と話をしていた。
「ふうん、ヴィヴィアンがね。……老君、彼女に危険がないよう、監視は続けてくれよ?」
『はい、御主人様(マイロード)。『仲間の腕輪』の遠隔操作はお任せ下さい。『隠密機動部隊(SP)』も付けてあります』
『仲間の腕輪』。
 仁が作った古代遺物(アーティファクト)級のアイテムである。
 障壁(バリア)発生機能の他、魔素通信機(マナカム)による通信、『仁ファミリー』としての認証機能がある。蛇足的に、発光機能を持ち、暗いところでは明かりとしても使える。
 これらのうち障壁(バリア)発生は、老君による遠隔操作でも可能となっており、睡眠中や不意を突かれた場合などにも対応できる。
 もちろん、老君が認識できないような場所にいたら遠隔操作は不可能だ。
 そのために、『隠密機動部隊(SP)』を1体、護衛のために密かに付けてあった。

「うん、それならいいかな」
 ひとまず仁は安心した。
「それにしても、先代より後、魔導大戦より前、か……」
『はい。歴史の空白期間ですね』
 確かに歴史書というものは残っている。だが、それは例えるなら歴史の教科書的な記述内容であって、おおまかな幹はわかっても、詳細な枝葉はわからないのだ。
 もう少し具体的にいうなら、『**があった』という結果はわかっても、そこに至る道筋は推測するしかない、ということである。

「『賢者(マグス)』と先代の記録が見つかったから、1000年前の事情ははっきりしつつあるんだがな……」
 先代没後、魔導大戦直前までが空白期間、ということである。
「技術の発達を考えたら、先代の技術をベースにして発展を遂げていてもおかしくないんだよな……」
 まだ読んでいない先代の記録に、そのあたりの答えはあるのだろうか、と仁は思った。
『700672号さんもご存じないというのですからね』
 そう、現人類文明以前からこの星アルスにいる700672号であるが、人類には不干渉であったし、その大半の時間を眠って過ごしていたため、そのあたりの事情はまったく知らないのである。
「月の『ジャック』からもそれほど多くの情報は得られなかったようだしな」

 アルスの月『ユニー』は、元々あった衛星ではなく、人類の祖先である『始祖(オリジン)』が今の軌道に乗せた小惑星であった。
 それを統括していた魔導頭脳『ジャック』を仁が引き継いだのである。
 が、それとて、地上の人類を眺めてはいても、何をしているのかについては無関心であった。
「ミロウィーナさんもな……」

 ミロウィーナは、旧レナード王国王家、その最後の1人である。
 旧レナード王国で、235年前に『魔力性消耗熱』という病気が流行し、それから逃れるために転移魔法陣を使ってユニーに逃げ延びた人々がいた。
 が、結局は、持ち込まれた『魔力性消耗熱』の病原体により、逃げてきた甲斐もなく、大半が倒れてしまったのであった。

 旧レナード王国の記録も持ち込まれているので、多少のことはわかるのだが、それでも情報不足は否めない。
 そもそも旧レナード王国は周囲の国とは積極的な交易をしていなかったようなのだ。

「手詰まりか……」
『あとは、ヴィヴィアンさんがどんな発見をされるか、ですね』
「そうだなあ……」
 全ての記録が消滅したはずはなく、どこかに残っているはずである。
 それを知ることで、更なる発展に繋げられれば、と願う仁であった。

*   *   *

「そもそも、魔導大戦前の技術がまったくといっていいほど残っていないのはなぜなのか? ……それが私には疑問なのだよ」
 専用の馬車の中で、ルコールがヴィヴィアン相手に討論をしていた。
「わかります。伝承も、300年前を境に、急激に減るんですよ」
 少し前に、仁たちは異民族……フソー、ミツホなどを巡って来た。その際、グースという青年が『こちら』へやってきて、ヴィヴィアンは色々と話を聞いたものだ。
『異民族はほぼ途切れずに文化が引き継がれているのに……』と思わずにはいられないヴィヴィアンであった。

「もうすぐニカライですよ」
 御者から声が掛かった。
 今、ヴィヴィアンとルコール、それに手伝いの者2名、計4名が『調査隊』としてエゲレア王国西部を回っているのである。
「今度こそ手掛かりがあるといいのですけど」
「それは同感だな。いくら考古学には忍耐が必要だといっても、そろそろ何か見つかってもいい頃だと思うわい」
 2人は苦笑を交わした。

 ニカライの町は、人口1000人ほどの小規模な町である。
 一行は、2つある宿のうち、高級な方に泊まった。各自個室である。
「やれやれ、これも研究資金を出してもらえているおかげだな」
 今、ルコールとヴィヴィアンは食堂で夕食を摂っていた。
「その貴族って、どなたなんですか?」
 そういえば名前も聞いていなかったな、とヴィヴィアンが今更ながらに尋ねた。
「ああ、教えていなかったかな? セルロア王国のバッフル・ノシー・ド・ヤンシーという方だ」
「そうなんですか」
 セルロア王国出身のヴィヴィアンも聞いたことのない名前であった。
「新国王の政策で切り捨てられなかった方だから、それなりに有能なのだろうと思うよ」
 この年の2月にセザールが即位してからというもの、粛清されたり降格されたりした貴族・重臣がいた中、現状維持できた貴族なのだという。
(単に立ち回りがうまいだけじゃないかしら)
 と思ったヴィヴィアンであるが、それは口にはしないだけの自制心は持ち合わせている。
 とにかく、そのバッフルなんとかのおかげで、こうして自腹を切らずに研究のための旅ができているのだから。
「明日はさっそく聞き込みですね」
「そうだな。資料を探したり、古老を訪ねたりと、やることはたくさんある。これまでのように手分けして行おう」
「異議はありません」

 研究の成功を祈って、ワインで乾杯した2人であった。
 今回は状況整理なので分かりづらくてすみません……

 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20160229 修正
(誤)資料を探したり、古老を訪ねたりと、やる頃はたくさんある。
(正)資料を探したり、古老を訪ねたりと、やることはたくさんある。

(誤)それを統括していた魔導頭脳を仁が引き継ぎ、『ジャック』と名付けたのである。
(正)それを統括していた魔導頭脳『ジャック』を仁が引き継いだのである。
 仁が名付けたわけではなかったですね……
+注意+
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