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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

過去篇 肆 アドリアナの冒険

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015 活躍

「うわあ、すごい!」
『森羅』氏族に代々伝わる魔導具を収蔵するという蔵。
 そこはアドリアナにとって、正に宝の山であった。
「ゴーレム! 素材! 魔導具! なんだかわからないもの! すごいわ!」
 子供の頃に戻ったようなアドリアナ。
「お、お気に召したようで何より」
 案内役のバシャーコも少し引いている。
「ほう、アドリアナ殿はやはり興味を持たれたか」
 一方、サイトスは気にしていないようだ。
「バシャーコを付けておきますから、何かあったら相談してくれたまえ」
「お義父さん……」
 少し疲れた顔のバシャーコだったが、サイトスはいつもどおり厳格な顔で、
「では、頼んだぞ、婿殿」
 とだけ言い残し、立ち去ったのであった。
「……はあ」
 少し疲れた顔のバシャーコをよそに、アドリアナは目を輝かせて保管庫の中を歩き回っていた。
 しばらくして、
「バシャーコさん、ここの魔導具なんかも手に取って見ていいですか?」
 と尋ねるアドリアナ。興奮状態は収まったようだ。
「ええ、家の蔵と同じく、壊さなければ」
「わかりました」

 それからというもの、アドリアナは傍目はためにもわかるほど集中し、魔導具の調査を始めた。
 いや、まずは置かれていた素材サンプルに注目したアドリアナである。
「これはすごいわ! 生体素材は干涸らびて駄目になっているものが多いけど、金属素材は勉強になる……」
『森羅』氏族の用語で解説が書かれているものも多く、そういったものはアドリアナが独自の翻訳を付け、メモしていく。
「……ただの鉄じゃないわね。炭素はいいとして、マンガン? バナジウム? モリブデン? ……よくわからないけど、混ぜることで鉄の性質を改善できるんだわ。ステンレスにも応用できそうね」
 特に、鉄系合金に興味を持ったアドリアナ。

 次に目に付いたのは、小さな塊状になって置かれている金属。昔の文字で簡単な説明書きが書かれている。
「このあだ……ます……金……属……? は凄い性質を持っているみたいね。産地が限られているようね。稀少なのが残念だわ」
 その堅牢無比な金属に、アドリアナは『あだます』な金属ということで『アダマンタイト』という名前を付けた。
「はは、アドリアナさん、それは代々伝わっている金属で、何をどうしても加工できませんでね」
 横で見ていたバシャーコが微笑みながら補足説明をしてくれた。
「はあ、そうでしょうね。もの凄く硬そうですもの。ちょっといじってもいいですか?」
「それは構いませんが……」
「『変形(フォーミング)』」
 バシャーコが言い終わる前に、いくつかある中で一番小さな塊を手に取り、工学魔法を発動させるアドリアナ。
 淡く光る魔法陣が一瞬浮かび上がり……。
「おお!?」
 彼女の手の中には、アダマンタイトの器が出来上がっていた。
「な、な、なんと!」
 初めて工学魔法を目にしたバシャーコは驚きを隠さず、アドリアナに詰め寄った。
「い、今の魔法は何ですか!? その金属は、祖先は加工できたらしいですが、我々にはどうやっても加工できなかった金属なのです!」
 そのため、『不変イモータリティ金属メタル』と呼ばれているようだ。
「ちょ、ちょっと待っていてください!」
 器を持つアドリアナをそのまま待たせ、バシャーコは保管庫を飛び出していった。
 数分後、サイトスと、2人の青年を伴って戻ってくる。
 2人はヘルムトスとナデスランといい、保管庫の担当者なのだそうだ。
「アドリアナ殿!」
「……あ、はい」
 担当者の1人、ヘルムトスの勢いに、さすがのアドリアナも少したじろいだ。
「『不変イモータリティ金属メタル』を加工されたそうですが!」
 興奮して迫るヘルムトスに、思わず謝罪を口にしてしまうアドリアナ。
「は、はい。これです。……ごめんなさい」
 だが、それはサイトスに否定された。
「いやいや、アドリアナ殿、謝ることはない。その『不変イモータリティ金属メタル』を加工できたという事実を確認しに来ただけなのだから」
 そして、今はヘルムトスの手中にある器を、サイトスも手に取って見る。
「ふう、この重さ、この硬さ、間違いなく『不変イモータリティ金属メタル』だな。……アドリアナ殿と仰いましたか、これをあなたが?」
 最後に器を手に取ったナデスランがアドリアナに尋ねた。
「はい、そうです。ごめんなさい」
「何を謝っておられる? 単に確認しただけです。それにしてもあなたは凄い。何と仰いましたかな……『魔法工学師マギクラフト・マイスター』? マイスターとは大仰な、と思っていましたが、これを見せられたら納得いたしましたよ」
「はあ」
 怒られるわけではなさそうだと知り、ほっとするアドリアナであった。

「では、こちらの素材で器は作れますかな?」
「はい」
 出されたのはミスリル銀。
 魔法に対して抵抗のあるアダマンタイトに比べたら数倍楽な素材である。
「『変形(フォーミング)』」
「おおっ!」
「すごい!」
「何と!」
 一度()の当たりにしたバシャーコはともかく、初めて目にした3人は驚きに目を丸くした。
「それではこれはどうですかな?」
 今度は軽銀が差し出される。
「『変形(フォーミング)』」
「おお! では、これは?」
「『変形(フォーミング)』」

 十種類近くの素材を『変形(フォーミング)』で加工して見せると、サイトスたちがアドリアナを見る目は違ってきた。
「いや、感服しましたぞ」
 サイトスが笑顔でアドリアナに会釈を行った。
「正直、貴公をどう捉えればいいかと悩んでおりました。が、バシャーコの話といい、この妙技といい、間違いなく貴公は求道者。我が氏族は全面的に協力いたしましょう」
「えーと、ありがとうございます?」
 話の展開に付いていけないアドリアナは、とりあえず礼を述べることしかできなかった。

*   *   *

「これでこのようなものを作れますかな?」
「ええと、こういう形に加工して欲しいのですが」
「これと同じ物を4つ作っていただきたく」

 それから丸2日、アドリアナは『森羅』氏族からの要望で、『変形(フォーミング)』を使い、彼等の望む形状の物品を作り続けた。
 聞くところによると、先祖代々伝わってきた器や皿などの食器が、年月の経過と共に破損してしまい、どうやって補填するかが悩みの種だったそうだ。
 訓練にもなるし、デザインの勉強にもなり、また、世話になっているお礼でもあるので、嫌な顔一つせずにアドリアナは要望に応えた。
 これにより、彼女は『魔法工学師マギクラフト・マイスター』として『森羅』氏族の信頼を得ることになったのである。

「いや、助かった。『魔法工学師マギクラフト・マイスター』アドリアナ殿。明日からは御希望どおり、保管庫の魔導具をお好きなだけ研究していただいて構わない」
「ありがとうございます」
 こうしてアドリアナは、『森羅』氏族に伝わる古代遺物(アーティファクト)を含む、数々の魔道具を研究する機会を得たのであった。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20160221 修正
(旧)その堅牢無比な金属に、アドリアナは『アダマンタイト』という名前を付けた。
(新)その堅牢無比な金属に、アドリアナは『あだます』な金属ということで『アダマンタイト』という名前を付けた。
『アダマンタイト』の由来が弱かったので。

 20160222 修正
(旧)少し疲れた顔のバシャーコを尻目に
(新)少し疲れた顔のバシャーコをよそに

 20160501 修正
(誤)一度目の当たりにしたバシャーコはともかく
(正)一度()の当たりにしたバシャーコはともかく
+注意+
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