挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

28 世界会議準備と遺跡調査篇(続々)

1032/1508

28-33 攻略

 仁はミロウィーナとエルザを伴い、蓬莱島の司令室に入った。
「老君、『分身人形(ドッペル)』の準備だ。礼子と一緒に現場に転送してくれ」
『わかりました』
「礼子、また頼むぞ」
「……はい、お父さま」
 現場を任せられるのは礼子以外にいない。
 礼子は少しだけ躊躇ためらった後、仁の意を汲み、再度ダース川遺跡へと転移した。
 そして3分後、『分身人形(ドッペル)』が転送された。
「こういう風に見えるのね」
 ミロウィーナは『分身人形(ドッペル)』からの映像を食い入るように見つめた。

 まずは、『パゴダ』周囲の結界である。
 黄金の建物が数百年、盗掘にも遭わず無事だった理由。
「なかなか硬い結界だな」
 礼子が力ずくで壊そうかと言いそうなので、先回りして解除の指示を出す仁。
「できるだけそこは壊さずに調査したい。頼むぞ」
 仁に『頼むぞ』と言われた礼子は、半径500メートルの周囲を走り回り、発生装置を探した。同時にランド隊も探したが、見つけたのは礼子だった。
『パゴダ』を囲むように3箇所、正三角形を描くような場所の地下10メートルに結界の発生装置が埋められていたのである。
「よし、『エーテルジャマー』を使え」
 エーテルジャマーは、一定範囲の自由魔力素(エーテル)を支配下に置き、魔法を封じる効果がある。それは魔導具でも同じだ。
 供給される自由魔力素(エーテル)が無くなれば、結界発生装置も当然停止する。
「ランド隊はそのままエーテルジャマーで発生装置を停止させ続けておけ」
 これでいよいよ『パゴダ』の調査に取り掛かれる。

『パゴダ』の入口は、ランド隊が既に発見していた。
「面白い入口だな」
「……待って、ジン君。今思い出したわ。そこはダミーよ」
 ミロウィーナが待ったを掛けた。
「資料で見た覚えがあるわ。そこは罠への入口のはずよ」
「そうですか……助かりました」
 大抵の罠は平気だが、解除したり回避したりする手間を省けるのは正直助かる。
「だとすると、地下にある空洞というのは落とし穴的なものかな?」
「そうかも」
 仁の呟きにエルザも同調した。
 元々は落とし穴に落とし、その後、拘束したりするのかもしれない。
「ええと、入口についてはなんて書かれていたかしらね……」
 考え込むミロウィーナ。
「ああ、そうそう。少し離れたところに転移魔法陣が備えられた建物があったはず……」
 と言いかけて口を噤む。
「……無事じゃあなさそうね」
 周囲はほとんど瓦礫となっていたのである。
 結界は『パゴダ』だけを守っていたとみえ、他に無事な建物は見あたらない。
御主人様(マイロード)、そうしますと転送機でしょうか?』
 老君が提案してくるが一つ懸念がある。
「ユニーにも似ているよな……」
「そうね。あそこも基本的に出入り口はないものね」
 仁は考え込む。そしてミロウィーナに一つの質問をした。
「もし、もしですよ。勝手に転移して入り込んだ場合、敵と判断される可能性はどうでしょうか?」
「そうねえ、半々、かしらね。私にもわからないわ。無責任なことは言えないしね」
「でしょうね」

 そして、まずは『しのび部隊』、忍壱と弐が転送機で偵察に行くことになった。
「まあ、可愛い」
「ユニーでも活躍してくれたんですよ」
 実績のある忍部隊である。
『では送ります。3、2、1、転送』
 因みに、ポジションの特定方法としては、『パゴダ』の周辺にいるランド隊を基準にして座標を出しているので非常に正確に割り出せている。

「お、内部が映った」
 忍壱からの映像が送られてきた。
「ねえジン君、この映像って、さっきの小さなゴーレムの目が見たものなのよね?」
 ミロウィーナがちょっと考えてから尋ねてきた。
「ええ、そうですが、何か?」
「あのね、あんなに小さい『目』からなのに映像が鮮明なのでちょっと驚いたのよ」
 要するに拡大率が大きい、とか、受像素子が小さいと画質がうんぬん、という話である。
「そういうことですか。『忍部隊』の目には、特に質のいい光属性魔結晶(マギクリスタル)を使っていますからね」
 選び抜いた魔結晶(マギクリスタル)である。とはいえ、小さいので1個の魔結晶(マギクリスタル)から何個も作れるわけだ。
 タカやワシのような猛禽類の目も人間より小さいのに遙かに遠くまで見えるし、フクロウが暗闇の中獲物を見つけることができるように、忍部隊の目も特別製なのである。
「なるほどね。さすがジン君だわ」
「ありがとうございます」
 仁としては、ミロウィーナがそういう知識まで持っていたことに、内心感心していたりする。

「ジン兄、あれ」
 エルザが画面を指差した。
「お? あれは……ゴーレム?」
 鈍い金色をしたゴーレムである。
「大きさは……2メートルくらいか」
 比較対象がないのと、ミニサイズの忍部隊から見た映像なので、画面では判別しづらいのだ。
「ジン兄、あれも金?」
『もしかすると金によく似た合金かもしれませんね』
 エルザの問いに老君が返事をした。
「サンプルがあればな……」
 今はそれよりも、この『パゴダ』内部を調べる必要がある。
御主人様(マイロード)、忍部隊は気取られていないようですので、10体全員送り込んでしまおうと思います』
「まて、まず伍までにして、それでも気取られていないようなら残りの5体、と順を追おう」
『わかりました』
 ということになり、参、肆、伍の3体が追加で送り込まれた。
 今のところ『パゴダ』内に変化はない。
 金色のゴーレムは5体。警備用ではないか、と仁は思った。
 武器の類は持っていない。
 内部は何層かに区切られているようで、ゴーレム5体があるこの場所は最下層にあたるようだ。
『この層にはゴーレムの他にはないようです。上へ向かいます』
 中央とおぼしき場所に、上への螺旋階段があった。
「待って」
 ミロウィーナがそれを止めた。
「その階段も罠の可能性があるわ」
 確かに、出入り口がないこの『パゴダ』、各階への移動手段も転移かもしれないのである。
 そこで転移魔法陣を探してみることにした。
「……ありませんね」
 5体の忍部隊員が手分けしたが見つからない。
 そこで、残る5体、陸、漆、捌、玖、拾も送り込むことにした。
 10体による探索が始まる。その効果はすぐに出た。
御主人様(マイロード)、魔法陣が見つかりました』
「お、どこだった?」
『はい、忍拾が見つけたのですが、中央の螺旋階段、その基部でした』
 ある意味盲点である。階段の0段目……つまり床部分に魔法陣が小さく刻まれていたのである。
「なんだか迷宮の攻略みたいだな」
 仁がぼそりと呟いた。エルザとミロウィーナには聞こえなかったようだ。

 転移魔法陣の起動方法はミロウィーナが知っていた。
「あの型式なら知っているわ。『始動(アクティベイト)』でいいはずよ。止める時は『停止(シャットダウン)』ね」
「助かります」
 仁たちの会話を聞いていた老君は、すぐに忍部隊に知らせた。
始動(アクティベイト)
 発見した忍拾がまず転移した。
 1分後、異常なしの報を受け、壱から伍が。そして更に2分後、陸から玖が転移し、全員が上の階層へと移動したのである。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20151225 修正
(誤)礼子が力ずくで怖そうかと言いそうなので
(正)礼子が力ずくで壊そうかと言いそうなので

 20151226 修正
(誤)武器の類は持っていいない。
(正)武器の類は持っていない。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ