挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

過去篇 弐

1028/1534

20 転移門

 シュウキ、彼の高弟たち、そしてアドリアナらは協力して魔法陣の解析を行った。
 そして1ヵ月後、ついに転移の要諦を得ることができたのである。
「そうか、ここの魔導式(マギフォーミュラ)が空間を繋ぐのか」
「2点間を結ぶには正確な『同調』が必要になるのかな?」
「いや、受け入れ側がはっきりと指定できていればいいようだ。魔法陣というものは単独で動作するものだからな」
「でもお父さん、かなりの魔力素(マナ)をしょうひするね」
「そうだな、アド。魔法陣で魔力素(マナ)を増幅しているのもその対策だな」
「ここは『魔力貯蔵庫(マナタンク)』をつかえばいいんじゃない?」

 彼等は協力して新しい技術を作り上げていく。
 そして出来上がったのが……。
「よし、この『転移門(ワープゲート)』なら実用に耐える!」
「師匠、やりましたね」
 以前ミツホで開発した『転移門(ワープゲート)』は、まだまだ動作が不安定で、人間を安心して送り出せるものではなかったのである。
 だが、これなら。とはいえ、十分な試験をする必要がある、とシュウキは思った。
「まずは短距離でテストを行いたいな。人間は危ないから……」
「こういうときこそ、ゴーレムだね!」
 ユルガノの町でアドリアナが作ったゴーレムは、そのままこのカルナグまで運び込んである。
「『起動せよ(ウエイクアップ)』」
 魔鍵語(キーワード)に反応し、ゴーレムが起き上がった。
「よし。あの魔導機(マギマシン)の中に入りなさい」
 まだ発声装置がないため、アドリアナのゴーレムは右手を軽く挙げて了解の意を示した後、転移門(ワープゲート)の中へと歩いて行った。
「そこで止まりなさい」
 アドリアナの指示に従って停止するゴーレム。
「よし、転移門(ワープゲート)作動!」
 シュウキの号令により、高弟の1人、テンペスが転移門(ワープゲート)へと魔力素(マナ)を接続した。
「おお!?」
 転移門(ワープゲート)内に魔法陣の輝きが淡く浮かび上がるのが見えた。そして次の瞬間、輝きは消え、それと共にゴーレムも消えていたのである。
「先生! こちらにゴーレムが現れました!」
 すぐ隣に設置した受け入れ側の転移門(ワープゲート)内にゴーレムが現れた。
「成功だ!」
 その後、転移門(ワープゲート)の距離を離していき、実験は続けられた。
「これは素晴らしい!」
 その結果、最終的には隣町までの転移を確認することができたのである。
 以前作った『転移門(ワープゲート)』に比べ、起動までの時間も短く、送り出せる物体にも制限はない。
 しかも、以前の試作機の3分の1の大きさ、10分の1のコストで作れる。
 まさに『完成型』であった。
 シュウキは、いつの日か、ミツホに設置した転移門(ワープゲート)もこれと置き換えたい、と考えたのである。
 そしてそれは、遠い将来、彼の愛娘が果たすことになるのだ。

*   *   *

「『賢者(マグス)』殿! よくやってくれた!」
転移門(ワープゲート)』完成の知らせは国王に届き、シュウキたちは褒詞を受けていた。
「この技術は国内……いや、大陸に革命をもたらすであろう」
 今までのような馬や馬車、徒歩での移動とは比べものにならない。
 移動時間はほぼ0、魔力素(マナ)を供給している限りは延々と移動が可能。
 人間での安全確認もシュウキたち自身で済ませていた。
「食糧、生活物資、素材などの輸送にも革命が起きるな」
 国王の機嫌はいい。
「貴殿を特別名誉国賓としよう」
 今まででも破格だった待遇を更に引き上げてくれるという。
 だが、さすがにシュウキもこれは辞退した。
「いえ、それは遠慮させていただきます。私はまだ道半ば、もっともっと世間に魔法工学を広めていきたく存じます」
「ふむ、そう言うと思っておったよ。だが、それならば尚のこと、受けてもらいたい」
 王の横に控えていた宰相が詳しい説明を引き継ぐ。
「シュウキ様、『特別名誉国賓』となれば、この国のどこへいらしても上級貴族に準じた扱いがなされます。それは貴殿の目的にも叶うのではありませんか?」
 確かに、レナード王国内に魔法工学を広める旅をするにあたり、余計な手続きなどの手間はないに越したことはない。
「……わかりました、有り難くお受けします」
 こうして、シュウキ・ツェツィはレナード王国の特別名誉国賓となった。

「お父さん、なーに?」
 そんな、講義が休みのある日。
 シュウキはアドリアナをカルナグ郊外に連れ出していた。
「今日はアドに頼みがあってな」
「えっ? なになに? あたし、何でもやるよ!?」
 気追い込むアドリアナ。
「うん、今日はこの絵のようなものを作って欲しいんだ」
 シュウキは1枚の皮紙をアドリアナに差し出した。
「ふうん、面白いたてものだね。大きさは小さくていいの?」
「ああ。この奥、『祠』っていうんだが、1メートルちょっとくらいでかまわない」
 材料は事前に運び込んであった。
「よーし、張り切っちゃうぞ!」
 アドリアナは既に高弟たちをも凌ぐ魔法工作士(マギクラフトマン)になっていた。
「ええと、石をこの形に『成形(シェーピング)』して、『融合(フュージョン)』でくっつけて、と……」
「ああ、いい感じだな」
「ねえお父さん、この動物みたいな像ってなあに?」
変形(フォーミング)』を行いながらアドリアナが尋ねた。
「それは『狛犬』っていって……うーん、狐でも狛犬っていうのかな? ……ま、まあ、要は門番みたいなものだよ」
「ふうん、これが門番なんだ……『変形(フォーミング)』」
 祠、狛犬(?)、そして鳥居が完成した。
「面白いかたちの門だね。『強靱化(タフン)』」
「ああ、いい出来だ。ありがとう、アド」
 シュウキは礼を言ってアドリアナの頭を撫でた。
「ねえ、とびらを付けたけど、何か入れるの?」
 祠なので御神体などを入れるために扉が付いているのだ。
「ああ、そうさ。これをね」
 シュウキが取り出したのは小さな狐の像だった。
「あれ? それもこまいぬ?」
「ああ、かたちは狐だけどね。……見てごらん?」
 シュウキはその像をアドリアナに手渡した。
「あれ? これって、魔結晶(マギクリスタル)?」
「そうさ。『読み出し(リード)』をかけてごらん」
「うん。『読み出し(リード)』」
 すると、魔法陣が浮かび上がり、無数の文字が浮かんでは流れて消えていった。
「これって……記録なの?」
「そうだよ。今日までの……日記みたいなものかな。もしかして、私と同郷の者や、アドに匹敵する魔導士なら読めるように、ここに封印しておくつもりなんだ」
「ふうん……」
 シュウキは祠の扉を開け、その狐の像を安置。そして扉を閉め、
「アド、封印をしてくれないかな?」
「うん、まかせて!」
 封印とは結界である。固体を通さない結界を祠の周囲に張ることだ。
 結界のための魔石(マギストーン)は祠の扉に取り付けてあった。
「これでよし。一定以上の魔導士でなければ取り出せないはずだ」
 シュウキ自身にももう取り出すことはできない。
「いつの日か、この祠に興味を持った者が、中の記録を見て、後世に伝えてくれたら、と思うよ」
 記録には、日記だけでなく、魔法工学に関連した情報が詰め込まれている。
「お父さん、その誰かは、きっとお父さんに似た人だと思うな」
 遠くを見つめるような目をしたシュウキの横で、無邪気に笑うアドリアナ。
 魔法工学は発展期に入ろうとしていた。
 いつもお読みいただきありがとうございます。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ