明くる日の朝のことだった。
夏の蒸し暑さによる寝苦しさで既に掛け布団などふっ飛ばしていた俺は、体にまとわりつく生暖かい感触で目を覚ました。何となく視線を落としてみるまでもない。触れている感触は明らかに人肌のもので、伝わってくる熱も人肌のもの。つまり、人が俺の体に張り付いているということになる。
誰だ、こいつ……とは思わない。心当たりはある。無論、ドロシーだ。
コイツ、どうも俺のことを愛玩動物か何かと考えてる節があるらしく、たまにだが寝起きに俺を抱き枕にすることもあるのだ。正直、勘弁してほしい。…………いや、俺も抱きしめられてるとなんだか気分良くなってうとうとするけどさ! なんというか男としてのプライドが……。
まあそれはいい。問題は、この暑っ苦しい八月の朝にドロシーが抱きついている、ということだ。全く、冬とかなら暖かくていいけど真夏にやるのは勘弁して欲しいぜ……。ただでさえ此処は和風っぽい温泉旅館で、冷房なんざ効いてないんだし。
そんなことを考えながら俺に抱きつくドロシーの頭を掴んだ俺は、そこで絶句した。
……現在俺の目の前には、黒い頭がある。ドロシー、黒染めした? いやそれはない。昨日寝るときも、ドロシーは確かに金髪だった。それは間違いない。
それに何より、俺の体に伝わってくる質感。いつも感じる二つの肉の塊は感じられず、その代わりに俺のよりも僅かに大きいくらいの慎ましやかな胸……。
……、
誰だ、こいつ。
「……ドロシー? おい、ドロシーはどこだ?」
すぐさま上体を起こして、周囲を確認する。まさか……攫われたんじゃないだろうな? いや、アイツに限ってそれはないか。とすると…………もしかして、攫われたのは俺の方? いや、そもそもアイツと一緒に寝てたんだから、それもおかしい。それに攫われたんだとしたら俺が今こんな風に無防備なのは逆におかしい、多分。普通ならアレだ、十字教風に改造したグレイプニル(北欧神話においてフェンリルっていう狼を縛ってたモノで、要するに頑丈なロープだ)とかそのへんの霊装でぐるぐる巻きにされてるもんじゃないのか?
「おいお前、ドロシーはどこだ」
俺はとりあえず、目の前にいる女の体を揺さぶってみようと改めてその姿を見て……絶句した。
「……あ、ずき…………!?」
俺の目の前には、どうやら上の服を脱ぎ散らかしたらしき親船小豆、その人が爆睡していたのだから。俺のパジャマ(例によって半分脱がされている)の向こうにちらっと見える、スケスケのネグリジェに包まれた、小豆の、胸――――、
朝の旅館に、俺の絶叫が響いたのは言うまでもない。
***
「ったく。人の寝顔を見て絶叫たぁいい度胸してるね、カイン」
普段なら絶対に言いそうも無い口汚い口調で両手を腰に当てたような小豆は、そんなことを言った。
現在小豆は昨夜ドロシーが着ていたような、黒くてスケスケなタイプのネグリジェを着ている。幸い局部まではスケスケじゃないが、ちょっと直視できるような格好ではない。
ちなみに俺は、悲鳴をあげた傍から『うるさいねぇ!』といって叩き込まれた魔術一〇連発に今も身悶えしている。別に、小豆の放つ魔術が宵闇の祖たる俺の肉体を傷つけることが出来るっていう訳じゃない。俺の肉体の強度を無視して、『オシオキになる程度の一定の痛み(拳骨一発分とか)』を強制的に与える魔術を使っただけだ。
うん。俺のオシオキの為だけにこんな魔術を開発するなんていう才能の無駄遣いをする奴なんて、どう考えてもドロシーしかいないね。
「……なぁドロシー? それは一体何のイタズラなんだ? 流石に、朝起きたら半裸の小豆が抱きついてるとかちょっと悪質だぞ?」
小豆――もといドロシーに、俺は少しばかりの怒気をにじませながら問いかける。
ついつい勢いに負けてオシオキを受けてしまった俺だが、流石に今回はドロシーだって悪いと思う。たぶん、今回の一件はドロシーが魔術で小豆の姿に化けて俺を驚かそうとしたら、眠気に負けてそのまま寝てしまったとかそういう話なんだろう。俺ってどうやらひんやりしていて夏場は冷たくて気持ち良いらしいし。ドロシー寝起き悪いし。
でも、俺と小豆が友達だっていうのをドロシーは知ってるわけだし、それに小豆の姿で半裸とか、そういうのはよくないだろ。
「は? 小豆? 一体何の話をしてんだい、アンタ」
「えっ」
「えっ」
ちょっと本気でお説教を……と思っていた俺だが、あっさりと真顔で返されてしまい逆にぎょっとした。
確かに、疑念がないわけじゃなかった。
ドロシーは常日頃から俺をからかうことに無上の喜びを感じるようなちょっと駄目な奴だったけど、俺が本当に嫌がることは絶対にしない性格だった。そんなコイツが、俺の嫌がるようなことをした後に、さらにつまらない誤魔化しをするとは思えない。
でも、だとしたらドロシーが小豆に化ける理由がない。ドロシー自身に動機がないとすると、フレッドが? いやでも、フレッドにも理由はない。俺と敵対してるヤツが、俺達の仲間割れを狙ったもの……だとしても、今こうしてあっさり誤解が解けているあたり意味はないし、俺と小豆の間に親交があると知っている人間となると容疑者はだいぶ絞られるから、わざわざそんな危ない橋を渡る必要もないと思う。
ドロシーが普通に魔術を使ってる以上、ドロシーの肉体にかけてある魔術的補正が小豆のものと入れ替わっているということもないようだし、弱体化が目的という線もないな。
何故? どうして? 誰が? そんなことが頭の中をぐるぐると回り――そこで俺は、この現象の原因に気付いた。
(御使堕し!!)
と口走りそうになって、俺は全身全霊を込めて心の中で叫ぶことにした。……あのとき小豆に念を押されてなければ、間違いなく俺は口に出してたな。
そう、確か……あー、四巻、ぐらいに起こった事件! えっと、一巻があって、吸血殺しの一件があって、妹達の事件があって、……うん、『四巻』だな。
確か、犯人は上条の両親で、でも悪気があったわけじゃなくて、偶然起こってしまった……そんな話だったはず。
まあ、そこのあたりは問題ないだろう。でも、この事件のミソは大天使『神の力』――いや、この場合『火』と『水』の属性が入り混じってるから『ミーシャ=クロイツェフ』っていうのが的確なんだったっけ――が顕現したところにある。何せ、『大天使』サマなのだ。不完全とはいえソイツが顕現するっていう事態は、そりゃもう一大事である。何だかんだで魔術の世界に生きてきて早一〇年強。そのくらいは理解できる。
そんな風に考え事をしていた俺だが、そんな俺の様子を怪訝に思ったのかドロシーが詰め寄ってくる。……どうでもいいけど、いやどうでもよくないけど、小豆の姿で詰め寄られると何だか背筋が凍るような恐ろしさを感じる。中身はドロシーなのに。
「何だい、カイン。いきなり訳の分からないこと言い出して、勝手に黙って。それはアンタ、何か心当たりがある顔だね。言ってみな、」
「い、いやいやいやいや!! 待て待て待て!! 俺もよく分からないんだってっ!!」
何だか俺がすべてを知ってるような流れになってるので慌ててドロシーの言葉をさえぎった。むう、と気持ち頬を膨らませたドロシーは、そのまま聞く体制に入る。『ここで事情説明しなけりゃ後でどうなるか分かってんだろうな?』と言いたげな感じだ。
「いや、良く分かんないんだが、俺の目にはドロシーが小豆の姿に見えるんだよ」
「はぁ? 小豆ぃ?」
予想通り、ドロシーは小豆の姿で首をかしげた。
「うん、だから服とかマジヤバい。エロい」
「そりゃ普段のアタシがあのちんちくりんよりもショボイってことかい!?」
「だー!! 違う違う! 意外性というか! 美人は三日で飽きるって言うだろー!」
「アンタはアタシに飽きてたのかー!?」
「うわーもうこいつ面倒くせえな!!」
せっかく言外に『お前は美人だ』って言ってやってんだからそっちのほうを察しろよ……。
で、一通りわめいた俺たちは改めて冷静になる。
「……で、どういうわけか分からないがアンタにはアタシがあの親船小豆の姿に見える、原因は分からない、と……」
小豆の姿で指を顎に当ててるドロシーの姿は、あの日の何か悪巧みっぽいことをしてる小豆にも似た感じがする。
「…………だが、何でよりによってアタシと親船なんだい? 騙し目的にしても意味がなさ過ぎるし、無差別だとしても『全世界の中でアタシと親船だけにピンポイントに影響が出る魔術』なんて都合がよすぎる……」
すっかり考え込んでしまったドロシーから俺が少し視線を外したとき、すす……とふすまが開けられた。
「……うるさいな。何かあったのか?」
この口調……声色は物凄いハスキーになっているが、フレッドか! さっきから姿を見ないと思ってたけど、多分身支度なりをしていたんだろう。
そう思い振り返ってみると、そこには黒いローブを纏った……中学生くらいの少女が立っていた。
毛先のハネた黒い髪を肩くらいまで伸ばしている。何だか、とてつもなくメイド服が似合いそうな……、あ! コイツ黒花か! 小豆の仲間の転生者でメイドやってるっていう!
「ああいや、カインの奴が急にアタシの姿かたちが親船の奴と入れ替わってるとか言い出してね。……どうしたんだい、カイン?」
「い、入れ替わってる……」
「…………どういうことだ?」
「お前、黒花と……あの小豆の御付のメイドと」
「いや。……は?」
「入れ替わってる……」
「…………、」
少しだけ、沈黙がその場を支配する。
「なん…………だと……!?」
フレッドの表情から、余裕が消えた。
***
「ああ、うん。そうそう、……間違いないね? 嘘の情報握らせてたら、いつか絶対テメェの耳の穴に貫くもの叩き込むからね」
その後、いつもの服に着替えたドロシーは即座に清教と確認をとり、昼になる頃にはあらかたの情報を入手することが出来た。正直、あの服装はボッキュッボンなドロシーだから許されてた訳で、小豆が着るとそこはかとない違和感が……。
電話の向こうから聞こえてくるローラの声はいつもどおりだったので、多分ローラは御使堕しから逃れられたんだろうな。流石最大主教…………、って感心してる場合じゃなくって!
「……ふぅ。とりあえず、カインがこの術式、向こうの命名だと御使堕し……の発動に関与してないってことは教えておいたから、これでアタシらが命を狙われる可能性はなくなったよ。ったく、この手の術式は術者には効果を及ぼさないっていうのは分かるが、だからといって効果を及ぼさない人物は全員犯人って考え方はやめてもらいたいモンだね」
「にしても、何で俺は御使堕し食らわなかったんだろ?」
「さぁ、吸血鬼だからじゃないかい?」
「やっぱそうかな?」
「清教の解析班によると、この術式は『天使を人間の位階に堕とす』ことによって成立してるらしいからね。吸血鬼の『肉体』が人間の範疇に収まらないのか、『魂』が収まらないのか……」
「むぅ……」
そう言われて、普段着に着替えた俺は唸る。
自分の姿かたちが変わらなかったのはありがたいが、そう考えるとなんだかちょっと……。御使堕しを食らわないってことは俺の魂は人間のものじゃないってことになるからな。それってつまり、魂が人間のものじゃないなら俺が本当の意味で人間になれる可能性も薄いってことになるわけで……、
「気にするもんじゃないよ、カイン! それに、清教の話によるとあの上条の野郎も御使堕しの影響を受けてないみたいだし、ローラのクソババァも結界やら防御魔術やらで入れ替わりを防いでるらしいじゃないか! アンタは『原初の罰』なんてとんでもない力を体に秘めてんだ。それが術式を阻害してるっていう線もあるだろ?」
「……、ありがと、ドロシー」
すっかり落ち込んでいた俺だが、ドロシーにそう元気付けられてとりあえず気を取り直した。……そうだな、俺が落ち込んでちゃ始まらない。ドロシーの言うとおり、何かが阻害してるっていう可能性もあるもんな。
……っていうか、小豆に励まされてる絵って何か新鮮だな。アイツが本心からこんな台詞吐けるわけないし。
「……これからは、どうするつもりだ? 俺はとりあえず神裂とかと合流しようと思うんだけど。話を聞く限りだと、あいつら日本に来てるんだよな?」
御使堕し自体は、俺が干渉しなくても勝手に解決できる類の事件だったと思う。詳しいことは忘れたけど、上条の親父さんが何かドジって偶然魔術を発動させちまったのが原因とかそういう話だったはずだし。
…………いや、そういえばこの事件だとミーシャが降りてきてたんだっけ。あれに関しては、放っておいても確実に解決できるって訳じゃないな。
ミーシャの足止めには、確か神裂が抜擢されてたはずだ。確かに神裂は神道系の術式を使ってるから、十字教ではそもそも対抗することすら出来ない『天使』を相手にするにはもってこいだろう。だが、アイツが如何に聖人とはいえ、所詮人間だ。『天使』の相手をするには、少々役者不足。現に、事件の解決があともう少し遅れてたら神裂は無事では済まなかっただろう。
俺だって、流石に何でもかんでも首を突っ込むほどガキじゃない。でも、かといって友達に『危険』が迫ってるってのに傍観決め込めるほど、大人じゃあねえ。
此処で『大人』になって『原作』に沿おうと仲間の苦しみに目を瞑るくらいなら、ラプラスの悪魔は蹴り飛ばしてその先の未来を俺が作る。
「ああ。御使堕しの中心点に上条がいるらしいからね。一応容疑者だからそっちに向かってるはずだよ。まあ、あの忌々しい右手で魔術を使えるとは思えないけど、一応確認は必要だし」
「じゃあ、俺らもそっちに行こうぜ」
応えたドロシーに、俺は提案してみた。それを聞いたドロシーとフレッドは、その可憐な顔を歪めて軽く渋い顔をする。
「何だってアタシらがあいつらのところに行くのさ。確かに上条の周辺に御使堕しの術者がいる可能性は高いけど、それにしたって今回の件はあの『聖人』である神裂が動いてんだよ? アタシらがわざわざ行くほどのことでもないだろ」
「俺も同感だ。術者が堕とした『大天使』を使役している可能性も考えられるが、並の人間が手綱を握れるものじゃあないしな、アレは」
……まあ、こいつらの意見は尤もだ。元々俺らは外部の人員だしな。そんな俺らが世界の存亡に関わる(天使が関わるってことはそういうことだ)事件に干渉するのはマズイって、なんとなく分かる。俺もオツムは弱いが馬鹿じゃないし。
……だが、それで友達のピンチを見逃せるかっていえば、そんなことにはならない。
「それでも、俺らが行けばもっと早く事件が解決するかもしれないじゃんか。相手は最低限天使を堕とせるほどの力量があるはずなんだ。神裂だから安心ってのは少しばかしアイツのこと過信しすぎじゃねえ?」
上条に関しては心配してない。俺が心配なのは、『原作』の通りになるんなら天使と戦う羽目になる神裂の方だ。
『神を殺すための』肉体調整をして、長時間戦闘する……言葉にすれば簡単だが、それが簡単なことじゃないってのは同じような術式を使う俺だからこそ良く分かることだ。この吸血鬼の体がなければ、今頃俺は何回も死んでる。ましてアイツは人間だ。不死身の俺と違って致命傷を負えば普通に死ぬんだから、そんな危険は避けさせるに越したことはない。
「……はぁ、カイン。『聖人』サマのことを一丁前に心配できるような奴、アンタくらいしかいないよ」
ドロシーが呆れたようにサイドテールを揺らして、溜息をついた。どうやら折れてくれたみたいだ。……つっても、俺がアイツのことを心配できるのは俺が『吸血鬼』だからだけどな。もしも俺が生身の人間だったら、多分そんなこと考えることさえできないと思う。
「……俺は反対だがな。……だが、神裂だけでは戦力に不安があるというのも事実、か……」
腕を組むフレッド(メイド服を着せたい)はそう言うと、こう続けた。
「幸い、まだ昼時だ。上条当麻達がこの旅館を出てから、まだあまり時間も経っていないだろう。今すぐ行けば、合流できる」
***
そんな訳で、現在俺は旅館近くの砂浜にいる。
「カイン」
ドロシーが『隠匿術式』を使うことで『他人が上条達の居場所を探ってる違和感』を隠した上で旅館の人に上条達の行き先を尋ねたのだ。旅館の人は『海に行くと聞いた』という証言をしていたので、その証言に従って俺達も砂浜に来たわけだが……。
「なあ、カイン」
上条は今頃家族といるだろうしどうやって接触しようかねーと思っていた俺だが、予想と違い上条は一人でパラソルの下に座っていた。多分、後から来る家族のために一足先にパラソルを設置しているんだろう。
「なあ、カインってば」
ちなみに、俺達の服装はバッチリ水着である。
フレッド(が中身の黒花)に関しては、元々ヤツが全身に刺青を彫っているから肌を晒すのをよしとしないということもあり、何とか事なきを得たが、これでフレッドが水着姿になったら必然的に上半身がオープンされてしまい、どう考えてもR-18な感じなので助かったと思う。
「カインっつってんだろうが無視してんじゃないよ!!」
「ごぱぁっ!?」
「何っだよさっきからうっせー……な……?」
横合いから来たドロシー(が中身の小豆)のツッコミに俺が吹っ飛ぶという一連の流れに、上条がツッコミながらパラソルの陰から出てくるものの、俺達の方を見て即座に凍りついた。いや、『俺達を見て』じゃなく、この場合は『ドロシー(が中身の小豆)を見て』だろうな。小豆と上条は友達らしいし。
「……お、親船……と、カイン!?」
まあ、上条が凍りつくのも無理はあるまい。
ドロシーの今の水着は、胸元、腹部、臀部を強調することで心臓と子宮を象徴する『裸の儀式』が執り行える特別製のビキニだ。普段のドロシーならそれに似合うボディをしているので、それはそれはダイナマイトなインパクトだろうが一過性のもので問題はないだろう。
しかし、これが小豆のような……言ってはなんだが『貧相』な女の子が着ていると思うと……かなり背徳的なアレとかアレが前面に押し出されて、なんとも酷い絵面になってしまう。
ちなみに、俺は下がボーイレッグ(一部丈くらいまであるボトム)のツーピース水着だからヘソが出てるところ以外は露出度自体はいつもとあんまり変わらない。ハイニーとかは穿いてないけどな。
「お、おやっ……おま、何て格好! お前ってそんなキャラだったっけ!? ってか何で此処に!? 麦野がいるから襲撃の心配はないんじゃなかったっけ!? 何だよ何だ、お前もドッキリに参加してんのかよ!? っつーかお前が主犯だろ! 統括理事会が絡んでるんなら此処まで大掛かりなのも納得できるし! いやそれ以前に、何でお前カインと連れ立ってんだ!? あーもうチクショウツッコミが追いつかねえ!!」
「そもそもアタシ、親船じゃないしね」
全くひるんだ様子もなくそう言うドロシーに、上条はただ『は、』と息を漏らした。
「こっちのローブに見覚えはあるだろ?」
ドロシーは小豆とは似ても似つかない粗暴な仕草で親指をフレッドの方に向ける。特徴的な服装をしているフレッドは、たとえ肉体がちょっとおっぱいの大きな少女に変わっていても一目で分かるだろう。
「……………………ああ、親船のメイドさんか」
しばし考え込んでから思いっきり誤答(いや、外見だけ見たら大正解だけど)した上条に、俺は思わずずっこけた。
「いい加減気づけよ! 入れ替わってんの! 世界中の人間が! そういう魔術なの!!」
「え、は? ……でも、お前入れ替わってねえじゃん」
「俺はいいの! 今んところ吸血鬼だからアレがあーなって俺には効かないの!!」
そこまで言い切って、俺ははーはーと肩で息をして呼吸を整える。……年甲斐もなく熱くなっちまったぜ。今の俺の年齢、一六歳だけどさ。
「……で、魔術って、どういうことだよ」
「此処まで言っても分からないのかい? 今、世界中の人間が入れ替わってるのは『とある魔術』が原因だって言ってんだよ」
「……親船? ……っていうかお前さっきからドロシーみたいな口調で喋ってるけど、どしたん? その過剰な露出度の水着と言い、なんというか親船には合ってないんじゃないかなーと上条さんは思うんでせ、」
「だァから『世界中の人間が入れ替わってる』っつってんだろうがこのスッタコ!! アタシは『親船小豆』じゃなくて『ドロシー=ガードナー』だよッ!!」
そう言って、ドロシーは砂浜を思い切り蹴り飛ばしてドゴォ!! と上条に飛び蹴りをかました。
……そもそも、相手が小豆だとしても『ドロシーみたいな口調』じゃどんな口調なのか伝わらないと思うんだが……。
「ひでぶッ!? って、ドロシー!? お前が!?」
「……んで、あそこの女の子がフレッドな」
「ええ!? あのメイドさんが!?」
「……言うな。気持ち悪い」
そんなことを言って、上条はどこか残念そうな瞳でフレッドを見返す。まあ、この女の子の中身が男だと知ったらなんか悲しくなるよな。
「それで、どうするつもりなんだ?」
「? どうって?」
「なんだか良く分からねえけど、何かヤバい魔術が発生してんだろ。お前らはどうするんだよ。まさかこのまま放置するって訳じゃないんだろ?」
「ああ、それは、」
「うにゃー。カイン達は飛び入りゲストなんだにゃー」
質問に答えようとしたところで、後ろから男の猫ボイスが聞こえる。殆ど反射的に振り返ると、そこにはアローハーな服装の金髪グラサンな腹筋男が立っていた。
……コイツ、は……、土御門か。学園都市のスパイ……いや、逆スパイだったっけ? まあ良いや。
「つ、土御門……? お前、何で此処に、」
「私もいますが」
びっくりしたような表情で口を開く上条の言葉に被さるように女の人の声が聞こえた。
見るといつの間にか、土御門の背後に黒髪のポニーテールが似合うウェスタンサムライガール神裂火織が佇んでいた。
何気に記憶喪失な上条は反応できないが、その神裂を見て、俺は思わず、
「か、神ざ、」
「ステイル=マグヌス……!」
「きぃ……?」
……叫ぼうとするが、その後ろからそれ以上の声量で発せられたドロシー(が中身の小豆)の声に思わず途中で首を傾げてしまった。
…………え? ステイル? ……どのへんが?
しかし、神裂はそんなドロシーの言葉を否定する様子もなく、ただ疲れた様子で溜息を吐く。
ドロシーはそんな神裂の様子にさらに怒りのボルテージを上げていく。……うん?
…………うん?
・カインは魔術師なので魔術関係の原作知識は(普段使っている為)結構鮮明、という設定です。
・原作(とアニメ、漫画)を既読・既視聴の方はもう既に最後のカオス部分の原因はお分かりだと思いますが、未読・未視聴の方(いらっしゃるのでしょうか?)は次回までお待ちください。
2012/02/15 修正
0212/02/22 修正
2012/04/13 修正
+注意+
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