特別欲求
彼は典型的な中二病だった。
他人と同じことを嫌がった。それ故に反社会的な行動を取るに至った。
最初は雨の日に傘を差さない、学校のテストでわざと間違った回答をするなどと馬鹿げたものだ。けれど、段々行動がエスカレートし、未成年で酒や煙草をたしなんだ。
こう言うと単なる不良とも思えるかもしれないが、彼の場合はもっと厄介だった。
素行不良を繰り返す内、一つの疑念を抱いたのだ。
生きている時点でその他大多数と変わらないんじゃないか。
彼は学校の屋上に行き、落下防止のフェンスを乗り越える。
しかし、異変に気付いた教師が思い止まらせようとする。だが、彼も取り合わない。
「俺は特別なんだ! だから他とは違うことをする!」
「お前、この世に自殺者が何千人いると思っているんだ!」
彼ははっと我に返った。だけれども、他人との違いを求め続けた彼は困惑する。
自らの矛盾に折り合いが付かず、悩んだ末に彼はもう一つの人格を作り出した。死の人格だ。
彼の中で生きている人格と死んでいる人格が同居し始めた。
つまり何も変わらなかった。