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第十話:出来上がっていく街

 マルコとの挨拶を終えて、俺の街への引っ越しを完了させた。

 結局全てのゴーレムたちと銃器、爆薬を運ぶのに四日かかった。


 引っ越しの途中にサキュバスから、レベル上げに使わせてもらっている【紅蓮窟】に転移陣を作っていいと、マルコの言葉を伝えてもらい、同時に水晶を壊し攻略をする許可を得た。


 現状、あのダンジョンは毎日四〇体近くの魔物が新たに生まれることがわかっている。

 固定ではなく変動レベルの魔物をメインに戦う俺にとっては最良の狩場だ。今はまだ水晶を壊すよりも、安定した狩場として運用したほうが利益につながるだろう。


 加えて【創造】のメダルがないせいで、使えずにだぶついているオリジナルメダルが複数ある。

【竜】、【刻】、【水】。これらのオリジナルメダルが枯渇したら本気で攻略をしよう。今の俺たちならそれができるだろう。


 今はせっせと街のインフラ作りを行っている。

 人が住む家はこの四日でエルダー・ドワーフたちが二十軒ほど作ってくれた。

 とは言っても井戸、街を守る外壁、農地、水路、街である以上、必要なものは無数にある。


「マスター、水路の進捗状況は順調。今日中に完了できる」


 考えごとをしているとエルダー・ドワーフが話しかけてきた。

 彼女の手にはノートPCがあり図面が開かれており、表で進捗具合が書かれていた。

 俺はその画面をのぞき込む。


「いい感じだな。あと三日で街を完成させたい。辛いだろうが頑張ってくれ」

「うん、わかった。頑張る」


 エルダー・ドワーフがこくりと頷く。


「外壁のほうは弟子たちに任せてあるんだったな」

「あっちは、割と雑でもいい。あの子たちだけで十分」


 この街全てを覆う外壁を水路と同時並行で作っている。

 既に、おおざっぱにエルダー・ドワーフとドワーフ・スミス。エンシェント・エルフ、ハイ・エルフの土系の魔術が使える魔物総出で、土と岩を盛り上げて軽く固めてあった。


 それを、ドワーフ・スミスたちが体裁を整えつつ強度をあげている。

 もし、魔術なしでこんなものを作ろうとすれば、年単位の時間がかかっただろう。


「ドワーフ・スミスたちも、なんだかんだ言って魔力が強いからな」

「レベルだけなら私より上。ずるい」


 ドワーフ・スミスたちは変動レベルで生み出しており、なんとレベルがほぼカンストしている。

 なぜかというと、先日の【風】の魔王ストラスとの戦争だ。


 実は、彼女の配下を一掃したミスリルゴーレムたちの所有者を、ドワーフ・スミスたちに変更していたのだ。

 ミスリル・ゴーレムたちが倒した敵の経験値は全て彼女たちのものになっている。

 使い魔の経験値を得るには、距離の制限があるのでエルダー・ドワーフのままにはできなかったのだ。


「エルダー・ドワーフも少しずつレベルをあげていけばいいさ。街が安定したら、本格的にレベルをあげよう」

「ん」


 エルダー・ドワーフは静かにやる気を燃やす。

 俺はあたりを見渡す。

 至るところで、ゴレームやスケルトンたちがせわしなく動いている。

 その指揮はワイトがとっている。彼に任せれば間違いはない。


 ゴーレムが農地を作るために土を乱暴に耕し、スケルトンたちが小石等を取り除く。

 疲れ知らずの彼らは二十四時間働いてくれる貴重な戦力だ。


「エルダー・ドワーフ。伝え忘れていたけど、ゴーレムたちも、この街の売りにしていくつもりだ。増産、頼むぞ」


 ゴーレムたちはエルダー・ドワーフのスキルでしか作れない。

 一日に一回の制限があるが確実に毎日増える。


「マスター、ちゃんと毎日作ってる。ドワーフ・スミスたちもCランクまでって制限があるけど、ゴーレムが作れるから作らせている」

「道理で数が多いわけだ。Cランクでも十分だよ。今は数が欲しい。さすがはエルダー・ドワーフ。気が利くな」


 俺の街ではゴーレムは重機兼警備隊として使用する。

 この街の売りの一つだ。


 ゴーレムの力を借りれば農業はかなり楽になる。

 この時代、力仕事を馬の力を借りて行うことがあるが、ゴーレムは馬以上に使いやすく、力も強い。そもそも世話に手間と金がかかる馬自体が贅沢品だ。ゴーレムが無料で利用できると聞けば、農民たちにはひどく魅力的に映るだろう。


 そして、警備員としての魅力も大きい。

 魔物がはびこるこの世界では、安全であるというのは十分に魅力的な条件に繋がる。ほぼ全ての街は外壁に囲まれ、警備隊が存在する。

 Bランクの強さを持つゴーレムたちに守られている街というのは非常に魅力的だ。よその街へ行くときの護衛に貸し出すのもいいかもしれない。


 マルコの話では、単独でDランクの魔物を倒せると一流の冒険者、Cランクなら大ベテラン。Bランクからはほとんど人外の領域となる。Aランクは英雄や勇者と言った存在らしい。

 その大ベテラン級の強さを持つゴーレムたちが不眠不休で街を守り続けてくれる。

 ここ以上に安全な場所はないと安心させることができるのだ。

 しかも無料。ゴーレムたちは人件費がかからない。これは大きい。


 何より……治安の維持にも抜群の効果がある。

 武力なしに移民が中心の街で治安を守るなど不可能だ。ゴーレムたちがはびこっている街で狼藉を働ける奴はよほどの命知らずだろう。


「でも、マスター。魔物が作ったゴーレムなんて普通に見せていいの? この街がダンジョンだってばれちゃうかも」


 彼女の心配はある意味当然と言えるが、今回に限っては杞憂だ。


「大丈夫だよ。ドワーフは魔物以外にも亜人として存在する。隠す必要はない」


 人に似ている魔物はたいてい、亜人としても存在しているのだ。

 魔王たちが作った魔物が、外で繁殖して数を増やし一つの種族として成立したがのはじまりだ。

 だから、すごく優秀なドワーフが居て、ゴーレムを作っているとありのままを伝えれば納得してもらえるのだ。


「なら、安心。たくさんゴーレムを作る」

「そうしてくれ。そろそろ、あいつらが戻ってくるころか」


 俺がそう言うと、街の長の家として、一回り大きく作っている家から、キツネ耳美少女クイナが、エンシェント・エルフ、ハイ・エルフ、妖狐、そしてカラスの魔物を引き連れてやってきた。


 実はあの家には転移陣が用意されており、狩りをする【紅蓮掘】、マルコのダンジョン、行く機会が多くなるであろう近くの大きな街エクラバ、などへの転移ができるようになっていた。

 クイナが駆け足でこちらに向かってきた。


「おとーさん、今日もがんばったのー」


 そして胸に飛び込んでくる。

 硝煙の臭い、クイナから戦いの匂いがした。


「お疲れさまクイナ。そろそろ、エンシェント・エルフ、ハイ・エルフ、妖狐たちも育ってきたかな」

「クイナほどじゃないけど、並みの相手だと遅れをとることはないの」


 生まれたばかりで、なおかつレベルが低いの彼らは戦力として心もとない部分があった。

 だからこそ、クイナの引率でレベルあげを行っている。

【紅蓮窟】で一日に沸く魔物の数を可能な限り早く狩り、すぐに戻ってくるのが日課だ。

 街づくりも大事だが、戦力の増強も同じぐらい大事だ。

 今日は忙しくて行けなかったが、いつもは俺もついていく。なにせ、魔王が所属するパーティの魔物が魔物か人間を倒すとDPが得られる。これも距離制限があり一緒にダンジョンに向かわないとDPが得られない。最近の狩りではだいたい一日1,000DPほど得られる。


「みんな装備も、だいたい固まってきたようだな」

「ううう、妖狐たちひどいの。クイナはショットガンをおすすめしたのに、アサルトライフルのほうが使いやすいって」

「気持ちはわかるよ。射程もあるし弾数も多いしね」

「でも、どかーんってないから物足りないの」


 妖狐たちはアサルトライフル、ハイ・エルフはアンチマテリアルライフルを装備している。

 はじめは、クイナがショットガンを妖狐たちに使わせようとしたが、どうも扱いが難しいらしく、結局エルダー・ドワーフと同じM&K MK417 MR762A1を使用するようになった。取り回しがよく、口径7.62mmで攻撃力が高いので汎用性に優れている。


 それにしても……。


「なぜ、こうなるんだろうか」


 妖狐も、ハイ・エルフもみんな美少女だ。クイナたちには一ランク劣るが、みんな十分すぎるほど可愛い。

 年齢も十代半ばから後半。

 ここまで来ると、もう呪われているのかもしれない。


「ご主人様。ただいま戻りました。やっぱり、生き物を撃つのは楽しいですね。癖になっちゃいそうです。この子で撃つとぱーんって破裂するんですよ」


 エンシェント・エルフがいつの間にかこちらに近づいてきていた。

 うっとりとアンチマテリアルライフルを抱きしめ。微妙に怖い発言をしている。


「まあ、楽しそうで何よりだ」

「はい! 撃てば撃つほど感覚がするどくなってくる気がするんです! もっと、もっと撃ちたいです」

「一日に湧く魔物にも制限があるからほどほどに。それにおまえには仕事もあるだろう?」

「ですね。銃も好きですが、自然も大好きです。あっ、もうほとんど水路が出来てますね。これなら」


 エンシェント・エルフがエルダー・ドワーフのところに向かい、あれこれと会話をする。

 そして二人で水路沿いに歩きながら、要所要所で魔術を使っていく。


 エルダー・ドワーフの土魔術だけでは足りないところをエンシェント・エルフが補っていく。

 そして……。

 二人が振り向き、ぐっと指を立てた。

 そうかできたのか。


「エンシェント・エルフ、水を流してくれないか」

「はい、いいですよ」

「計算上は完璧」


 二人が頼もしい返事をしてくれる。

 そして、エンシェント・エルフが魔術を起動した。

 ここの水路は基本的には地下水と、雨水を水源にしている。

 もし、水不足になればエンシェント・エルフとハイ・エルフが雨を適度に降らす。


 そのため、俺の街には水不足は絶対に起こらない。

 水路の水をせき止めていたが開かれ水が勢いよく流れる。

 ゴーレムたちが耕し、スケルトンたちが整えた農地の横を爽やかな清流が通っていく。これなら農作物もよく育つ。


 これで、いつでも農民たちを受け入れる準備ができた。

 豊かな土地に、豊富な水源。

 明日にでも、種を撒き、エンシェント・エルフの力で成長を促進させ、豊作が約束される土地でることをアピールできる状態にしよう。


 街の奥のほうを見る。そこにはこの街の象徴があった。

 立派なリンゴの木がいくつも並び赤い実をつけていた。

 あれもそろそろ収穫しないと。

 やることがたくさんだ。


「みんな、もう一仕事だ。終わったら温泉に入って飯だな」

「やー♪ 温泉楽しみなの」

「あれはいいもの。作ってよかった」

「温泉が出たのは驚きでしたね。鉱山フロアが隣に出来た影響かもしれません。温泉を楽しみにもう一踏ん張りしましょう」


 そうして、俺たちは街づくりを続ける。

 しだいに形になっていく達成感が心地よい。

 そして、一日の疲れを洗い流す温泉が今から楽しみだ。

   

 


ついに四半期ランキング一位です! 本当に本当にありがとう!

みんなの応援のおかげです。この感謝を面白い物語を書くことで返していきますよ!

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