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プロローグ:変わってゆくもの

【夜会】が終わり、マルコのダンジョンに戻って一日が経った。

 俺はマルコの部屋に押しかけて彼女を問い詰めていた。


「それで、マルコ。いったいどういうつもりだ? だれが、【創造】の魔王ロリケルだ」


 マルコは、白髪で狼の耳と尻尾をもった褐色の美女。

【獣】の魔王マルコシアス。その人だ。

 

 そんな彼女が若干、慌てふためいていた。

 よりにもよって、魔王たちが集まる【夜会】でマルコはこのとんでもない名前を広めた。


「仕方なかったんだ」


 マルコが、若干気まずそうに言う。

【風】の魔王ストラスとの余興で簡易的な【戦争】を行い、俺は勝利した。

 そのあと祝勝会があった。


 他の魔王たちに祝福され、一目置かれた。

 そこまではよかった。

 だが、なぜか魔王たちは俺のことをロリケル、ロリケルと失礼な名前で呼ぶ。

 俺の名は【創造】の魔王プロケル。けして、そんないやらしい名前ではない。

 どれだけ訂正するのに苦労させられたことか……。


「マルコ、どう仕方なかったか教えてもらおうか?」

「いやね、君はいろいろと力を見せつけたじゃないか。当然、魔王たちも分析を始めるわけ、各人がそれぞれやるならいいけど、みんなで議論をし始めそうな雰囲気だったんだよ。そしたら、その場にいる多くの魔王に君の弱点が共有されてしまう。その場で君に対抗するために、新人魔王たちの同盟だってありえた」


 まあ、そうなるだろう。

 それが観戦されるということのデメリット。

 だから、俺はあらかじめ見せていい範囲というものを決めていた。


 ストラスが最後に出したエメラルド・ドラゴンを倒すために、見せてはいけない切り札を使いかけたが、キツネ耳と狐尻尾が生えた美少女……天狐という種族のクイナの活躍でそれは免れた。

 とは言っても、見せていい範囲のものでも多数の魔王に解析と共有がされればまずかっただろう。


「それが、どうしてロリケルという名前とつながるんだ?」

「話題を少しでも逸らそうと思ってね。君が天狐とエルダー・ドワーフを溺愛している場面が流されてたから、そっちに意識を向けさせればって思ったんだ……。二人ともすっごく可愛いせいか思ったより食いつきが良くて、ロリケル一色になっちゃった、悪かった。反省してる」


 マルコが、気まずそうな顔で軽く頭を下げた。

 嘘ではないだろう。

 悪気がないだけに始末が悪い。


「わかった。それなら、仕方ない」


 あの場で何人かの誤解は解いたが、わざとからかって使う連中もいる、若干気が重い。

 それに、ロリケルと呼ばれるのは俺の行動が招いた部分もある。


 なぜか、俺の作る魔物は可愛らしい少女型が多い。

 狙っているわけではないが自然とそうなるのだ。

 次に作る【風】の魔物でその疑惑が晴れればいいのだが。


「許してくれるんだね。ありがとう。それでこそ私の自慢の子だよ」

「調子がいいな。そろそろ、自分のダンジョンを作るし、マルコと喧嘩したままで距離を取るのは嫌だったんだ」


 マルコはよくしてくれている。

 俺のことを気遣ってくれているし、有形、無形、様々な恩があるのだ。

 俺の手には【夜会】で支給された水晶があった。これを握りしめ、力ある言葉をつぶやくだけで俺のダンジョンが出来上がる。

 そう遠くないうちに、俺はマルコのダンジョンを出て自分のダンジョンを作ることになる。


「ちょっとときめいたよ。知らぬ間に男の顔になったね。プロケル」

「はいはい、俺は行くぞ」

「あっ、そうだ。ちょっと、お詫びをしようか?」

「お詫び?」

「私を抱いてみない? ほら、大人の女性の魅力を知ってもいいと思ってね」


 マルコが胸元を引っ張り、豊かな谷間を見せつけてくる。

 マルコはとびっきりの美女だ、スタイルも抜群。どこか淫靡な気配がある。

 ごくりと生唾を飲んだ。

 彼女を抱けたら、どれだけ気持ちがいいのだろう。


「遠慮しておく。マルコとは、そういう関係にはなりたくない」


 だが、断腸の思いでその提案を断った。


「そう、残念。君のことは私の体に刻んで置きたかったし、消える前に君の記憶に私を刻んで置きたかった。私には時間がないんだ」


 マルコが悲し気な顔で笑みを作る。

 マルコに聞いた話では彼女が消滅するまで残り九か月もない。

 魔王は生まれてきてから三百年で消滅してしまうのだ。


「……誰とでもそういうことをするのか」


 無性にそれが聞きたくなった。

 下世話な好奇心じゃない。胸が苦しくて、そうせざるを得なかった。


「それはないよ。私はね、私が認めた男にしか体を許さない。まあ、気が変わったら言ってよ。お姉さんがいろいろと教えてあげるから」

「気が変わったらな」

「期待せずに待ってるよ。あと、創造主からもらった追加のご褒美。あれはよく考えて使ったほうがいい。安易に使えば破滅する。あれは魅力的だが、君が思っている以上にずっと危険だ。あの人は、人が悪い。気まぐれに魔王たちをもてあそぶ」

「忠告を感謝する。それに、体はともかく茶ならいつでも付き合うよ」


 マルコが言っているのは、余興での【戦争】が予想以上に盛り上がった褒美として俺と、【風】の魔王ストラスに、創造主から追加で渡された報酬のことだ。俺が見る限りメリットしか感じがないが、マルコがそう言うなら何かあるのだろう。注意深く対処しないと。

 それで会話は終わり。

 俺は、マルコに貸し与えられている居住区にサキュバスに転送してもらった。


 ◇


「随分と手狭になってきたな」


 俺に貸し与えられているスペースに戻ってくると、ひとりごちる。


「マスターの言う通り、毎日一体ずつゴーレムを増やし続けてる」

「我が君、この前の戦いで随分と配下を増やしましたからな」


 そこに返答が帰ってきた。銀髪ツルペタ美少女のエルダー・ドワーフに、貴族風のローブを来たスケルトンであるワイトだ。


 俺に与えられているスペースには、無数のゴーレムとアンデッドたちが居た。

 ゴーレムは、ミスリル、シルバー、アイアンと素材によって多種多様。


 アンデッドのほうは、ほとんどが人型のスケルトンが二〇体、それに加えて、この前の【戦争】で得た十体の飛行型のアンデッドが混じっている。

 新たに作るダンジョンは、彼らを収容できるだけの広さが必要だ。


「あっ、おとーさん。お帰り!」

「ただいま、クイナ」


 そこにもう一体。キツネ耳美少女のクイナが現れた。

 いつものように俺の右腕に抱き着いてくる。


「新しい銃の調子はどうだ?」

「いい感じ、さすがエルちゃんなの」


 クイナは前の戦いで銃を壊してしまった。【刻】の魔王の力で修復されたが、エルダー・ドワーフは壊れてしまったことにショックを受けており急遽改良を行った。


 その際に、新たな名前を付けた。

 もはや、基本設計レベルから元になったレミルトン M870Pとは異なる銃になったため、レミルトン改という名前はふさわしくないと考えたようだ。


 カーテナ EDS-02

 全長1040mm 重量3.3kg 口径4ゲージ 装弾数四発


 それが新しい、ショットガンの名前。

 ショットガンを示すSがEDの後に来ている。そうしたほうがわかりやすいと、エルダー・ドワーフが変えたのだ。

 ちなみに、アサルトライフルだと、EDAR-0Xとなる。


「エルちゃん、これなら思いっきりフルオートで撃てる?」

「それはまだ無理。それをするには、何かしらの技術革新か、私自身の魔術付与の強化が必要。両方ともがんばってるところ」


 エルダー・ドワーフは悔しそうに歯噛みしていた。

 もしかしたら、俺が【誓約の魔物】に選べばそれができるかもしれない。


 しかし、エルダー・ドワーフは天狐がクイナになった瞬間の光景にあこがれており、ロマンチックな展開で名前を付けて欲しいと思っている節がある。

 もう少し、時期を見よう。


「じゃあ、クイナ、エルダー・ドワーフ。今から新しい子を作るよ」

「やー♪ 楽しみなの」

「私も妹が欲しかった。可愛がる側に回りたい」


 二人とも喜んでくれている。

 さあ、始めよう。

 俺の第三の【誓約の魔物】の【合成】を。風と共に歩むもの。自然を司る、この星の化身を。


 




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