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エピローグ:魔王様の街づくり!

 クイナという名を与えられた天狐の活躍で、なんとかエメラルド・ドラゴンを打ち倒し勝利を掴んだ。

 エメラルド・ドラゴンの強さは完全に想定外だった。

 Aランク以上の魔物の【狂気化】はSランクにすら匹敵する。


 それを超えて見せた仲間たちが誇らしい。

【戦争】の終了と共に、一度俺とストラスのダンジョンが向かい合っている白い部屋に案内に転送された。

 俺はそこで、クイナ、エルダー・ドワーフ、ワイト以外の魔物とゴーレム、銃火器をマルコシアスのダンジョンに転送するように、サキュバスたちに依頼した。


 一通りのあと始末が終わったあと、俺たちはダンスホールの隣の部屋に案内された。


 そこには既に、先にあと始末を終えていたストラスと彼女の【誓約の魔物】たちが居た。

 ストラスは二人の魔王と話をしていた。 

 一人は、初老の老人。もう一人は狼の耳に狼の尻尾をもった褐色の美女……というかマルコだ。

 話が終わったのか、初老の老人とマルコが去っていく。

 二人とも俺に手を振って、おめでとうと言ってくれた。

 そんな彼女たちを見ていると、意識が温かい感触に引き戻される。


 さきほどから、すっかり傷が癒えて【刻】の魔王の力で回復した天狐が左手にべったりくっついている。


「えへへ、おとーさん! クイナはクイナなの!」

「ああ、そうだ。お前はクイナだ」


 ようやく、彼女に名前を渡すことができた。

 こんなに喜んでくれるならもっと早く名前をあげれば良かった。


「クイナ……可愛い名前。羨ましい」


 エルダー・ドワーフが物欲しげにクイナを見つめていた。

 クイナはもふもふのキツネ尻尾をぶるんぶるんと振っている。


「エルダー・ドワーフもいずれね」

「頑張る! マスターに認めてもらえるぐらい。クイナに負けないぐらい活躍する」


 エルダー・ドワーフの目がやる気に満ちていた。

 彼女のことも認めているが、いい名前が浮かんでないので名前を与えていないだけだ。だが、それを今言ってやる気に水を差すこともないだろう。


 ワイトはそんな俺たちを微笑ましそうに見ていた。

 こいつは大人だ。俺よりも精神年齢が高いかもしれない。

 今後も重用しよう。

 そんな、俺たちのところにストラスがやってきた。

 いきなり頭を下げる。

 

「ごめんなさい。あなたのことを見くびっていたことを心の底から謝罪させてもらうわ」


 俺は面を喰らう。

 正直、こんなに素直に謝られるとは思っていなかった。


「いや、いいよ。そもそも俺も油断させるためにわざとスケルトンを引き連れていたからね」

「それでも、ごめんなさい。それと、これが私のメダル、大事に使って欲しいわ」


 もう一度頭を下げたあと、ストラスはメダルを渡してきた。


『【風】のメダル。Aランク。生まれてくる魔物に風を操る力を付与。敏捷に補正大。その他の能力に補正小』


 なかなかいいメダルだ。風を操るだけでも強いのに、敏捷値の補正が大きいだけでなく、耐久以外の全能力が向上する。


「ありがたく頂くよ。これで俺の【誓約の魔物】が揃う」


 実を言うと、もう【風】で作る魔物は決めてあった。


「……できればだけど、友達になってくれないかしら? 同期の中で、私が認められるのがあなただけなの。だから、これから協力し合っていきたいわ」


 少し照れて顔を赤くしながらストラスが言ってくる。

 友達か。

 ストラスは必ず有力な魔王になるだろう。それに自信家過ぎるが、素直に謝れるということは性格も悪くない。


「こちらからも頼むよ。お互い、いい魔王になれるように頑張ろう」

「ええ、よろしく頼むわ」


 ストラスと握手をする。

 初めての魔王友達が出来てうれしい。


「それと、これは【竜】の魔王アスタロト様から」


 そういって、ストラスは俺に何かを握らせる。

 これは……。


「【竜】のメダルか」


『【竜】のメダル。Aランク。生まれてくる魔物に竜の因子を与えることができる。筋力、耐久、魔力に補正大。オリジナルを使用する場合のみ【狂気化】状態で生み出すことが可能。【狂気化】状態で生み出した際には知性・理性をはく奪する代わりに、幸運を除く全能力補正極大』


 俺たちをあそこまで追い込んだ。【竜】か。

 なるほど、【狂気化】は必須ではないのか。


【竜】は普通に魔物を生み出しても強い魔物が生まれやすい。

 だが、少し俺の中に誘惑が生まれる。

 仮に、Aランク二つに【創造】を加えた魔物を、【狂気化】状態で生み出せば、いったいどれほどの魔物が生まれるのだろうか……

 ストラスの咳払いで、我に返る。


「ありがとう。でも、本当にいいのか? こんな強いオリジナルのメダルをもらって」

「いいの。アスタロト様がそうしろって言ったのよ。それに、私も【獣】のメダルをもらっているわ。もともと、【竜】の魔王アスタロト様と、【獣】の魔王マルコシアス様は仲がいいのよ。子同士もそうしてほしいみたい。それと、アスタロト様からの伝言……『娘に敗北を教えてくれてありがとう。あの子はこれでまた強くなれる。そのメダルは感謝の印だ』」


【竜】の魔王アスタロトか。優しそうなお爺さんと言いう見た目だが、本当に紳士的だ。

 今度、ストラスに頼んで会わせてもらおう。


「あと、この子もあげる」

「この子は?」


 小さな青い鳥だ。

 見た目は鳩のよう。ランクはDだ。


「この子は手紙を運べるのよ。私の魔力を覚えているから、手紙を足に括りつけて送って。私のほうも」


 もう一匹、鳩の魔物を取り出す。

 その鳩は俺の肩にちょこんと乗った。

 そして何度か、首をかしげる仕草をすると、ストラスのところに戻っていった。


「あなたの魔力をこの子に覚えさせたから手紙が送れるわ。たくさん、手紙を書くからね」


 どこか嬉しそうにストラスは言った。

 俺も笑い返す。

 すると、両手が重くなった。


「うううう」

「ん」


 左手にクイナが、右手にエルダー・ドワーフが抱き着いている。

 おそらく、父親を取られると思っているのだろう。

 そんなことはないのに。まったく、なんて可愛らしい子たちだろう。


「ああ、それともう一つ。マルコシアス様からも伝言があるわ」

「マルコから?」

「ええ、『いや、その、あのね。ちょっと君が変に注目を集めすぎて能力の分析とか、対策とか、そういうところに話題が転びそうだったからね、目先を逸らそうとしたんだよ。でもね、ちょっと思ったより燃えちゃって、うん、私も悪気はなかったんだよ。そこだけは信じてね。あとおめでとう!』


 何を言っているのかよくわからないが、とりあえず褒めてくれているらしい。

 それからしばらくストラスと話をしたあと別れた。

 この屋敷の使用人であるサキュバスがやってきて、その後のことを教えてくれた。


 十分後には、ダンスホールで俺を表彰してくれ、さらに今回の戦いが余興なんてレベルを超えた見ごたえがあるものだったとのことで、創造主から、俺とストラスに追加で褒美があるようだ。

 クイナが口を開いた。


「おとーさん、【風】と【竜】が手に入ったね。これで、クイナたちの妹か、弟を作るの?」

「ああ、作るよ。とは言っても使うのは【風】だけだよ。【竜】はしっかりと考えて使いたい」


【竜】は諸刃の剣だ。よく考えて使わないといけない。


「そーなんだ。【風】でどんな子を作るの?」

「それなんだけどね。強いだけじゃなくて、俺の夢を助けてくれる子を作ろうと思う?」

「夢?」

「うん、俺はさ。説得力がないかもしれないけど、戦いはそんなに好きじゃないんだ」


 まぎれもない本音だ。

 強くなければ勇者や他の魔王に食い物にされる。

 だから、強くなろうとしているが本質的には避けられる戦いは避けたいと思っている。


「でも、それだと生きていけないよ。ごはん食べれない」


 ご飯というのは人間の感情。魔王は人の感情を喰らって生きる。

 DPを得る以外にも魔王が生きていくためにはダンジョンに人を誘い込ませないといけない。


「わかってる。だから、俺は街を作るんだ。みんなが思いっきり楽しめる街を。もちろん、水晶を壊させないように難易度の高いダンジョンは作るけど、その上に大きな街を作りたい」


 そのための方法をずっと考えていた。

 だから、まずは人間が住める環境作りだ。

 豊かな土地、水源の確保、他の街へのアクセス。いろいろと課題がある。

 その課題を解決するための魔物を作る。


「楽しそう」

「ああ、きっと楽しくする。ちなみにだけどね。新しく作る魔物は、【風】と【人】と……【星】で作るんだ」

「どんな、妹ができるか楽しみなの!」

「まだ、妹かわからないよ」

「ううん、おとーさんが本気で作る魔物。可愛い女の子に決まってるの」


 それはひどい風評被害だ。

 まあ、今までの結果がそうなっているので言い返せない。


 そうこうしているうちに祝勝会に呼ばれた。

 ダンスホールに入るなり、割れんばかりの拍手に迎えられる。

 俺や、天狐、エルダー・ドワーフを褒めたたえる言葉がなり響く。

 そんな中、ロリケルという単語がいくつか聞こえた。

 ……あいつか。犯人は間違いなくマルコだ。だから、あの伝言か。

 後で、問い詰めよう。


 そうして、壇上にあがり、褒美を受け取り、死ぬほど飲んで、喰って初めての【夜会】は終わった。

 明日からは、ダンジョンと街づくり、新たな【誓約の魔物】候補の【合成】。それに創造主からもらった素晴らしいご褒美の活かし方。

 やることは無数にある。

 それでも……。


「おとーさん」

「マスター」

「我が君」


 いい配下たちに恵まれて、俺の魔王生活は最高に楽しかった。


 

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