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第二十三話:【創造】の魔王ロリケル

 渓谷地帯を抜けると次は、迷宮地帯だった。

 それもただの迷宮ではなく落とし穴が複数設置されている。

 しかも天井がいやに高い。


 よく考えられている、壁は天井まで届いていないが、わざとだろう。空飛ぶ魔物たちは、迷宮を無視して移動でき、地上でしか動けない俺たちは、迷宮の壁に阻まれ、なおかつ、いつ落とし穴にはまるかというストレスと戦わないといけない。


「マスター、三歩先落とし穴。先の角に敵が待ち伏せしてる。空からの敵と挟撃を狙っているみたい」


 しかし、そんな迷宮もエルダー・ドワーフにとっては、退屈なアトラクションだ。

 土に愛されているエルダー・ドワーフにとって、落とし穴を見つけることなど容易い。

 それどころか、即座に地面を補強して踏んでも大丈夫なように改造さえしてみせる。


 彼女は半径数キロにわたり地面が繋がっているところに、エコーを走らせ完全なマップを作ることすら可能だ。ありとあらゆる迷宮は彼女の前には無効化されるのだ。


 実をいうと空の魔物も扱いやすい。 

 なにせ、こちらに降りてくるときに必然的に迷宮の壁に動きが制限される。

 さきほどのフロアのほうがよほど戦いにくいぐらいだ。

 エルダー・ドワーフの情報のおかげで、罠にはめようとした敵を余裕をもって迎え撃つことができた。

 なんの苦労もせずに迷宮地区を抜けていく。


「ありがとうエルダー・ドワーフ。おまえのおかげで楽ができたよ」

「んっ」


 エルダー・ドワーフが頷き俺の左手に寄りかかってくる。

 どこかそわそわしていた。

 銀髪ツルペタ美少女のエルダー・ドワーフにはそんな仕草が良く似合っている。


「どうしたんだ、エルダー・ドワーフ」

「……なんでもない」


 そうは言いつつも、もの欲しそうに上目遣いに俺の顔を見ていた。目が合うと、顔を逸らす。しかし、すぐにちらちらと俺の顔をうかがう。

 ついには俺の袖を掴んだ。

 ああ、きっと撫でて欲しいんだ。

 こうやって、彼女の様子を見るのも面白いがそろそろじらすのはやめよう。


「よくやってくれたね。えらいぞ。エルダー・ドワーフ」


 エルダー・ドワーフの頭を撫でてやる。

 天狐とは感触が違う、さらさらした銀色の髪の手触りを楽しむ。


「……やだ、父さん。やめて恥ずかしい」


 とはいいつつも、エルダー・ドワーフの表情はにやけている。

 たっぷりと撫でてやる。こうして喜んでくれると俺も嬉しい。

 そんな俺たちのところににやにやとした顔で天狐がやってきた。


「ああ、エルちゃん。いつもはマスターって呼んでるのに、今、おとーさんのこと、父さんって呼んだ!」


 くすくすと天狐が笑う。


「なんのことかわからない」


 エルダー・ドワーフは顔を伏せてぼそりとつぶやく。

 耳が赤くなってる。


「なんで恥ずかしがるの? 呼びたいならエルちゃんも、マスターじゃなくて父さんって呼べばいいのに」

「言ってない」

「言ったの! 絶対父さんって言ったの」

「言ってないもん!」


 顔を真っ赤にしてエルダー・ドワーフは天狐を追いかける。

 テンパっているせいか、口調がおかしくなっている。


「きゃー♪」


 天狐は、楽しそうに悲鳴をあげながら逃げる。

 天狐が捕まった。たぶん、わざとだ。敏捷の差で天狐が本気で逃げたら、絶対にエルダー・ドワーフは追いつけない。


 俺はじゃれて遊ぶ二人の娘を見て頬を緩めていた。

 大変可愛らしい。


「こら、二人とも待て。喧嘩はだめだよ。こっちに来なさい」


 天狐とエルダー・ドワーフがこちらに来て、しょんぼりした顔になる。


「おとーさん、ごめんなの」

「マスター、取り乱しました。……申し訳ございません」

「うん、わかったらいいよ。ほら」


 二人を一度に抱きしめる。

 いい匂いがする。柔らかくて気持ちいい。ほどよい温かさ。


「やー♪」

「んっ」


 ずっとこうしていたいぐらいだ。

 二人もそれぞれに抱きしめ返してくれる。


 こうしている間も、優秀なワイトはスケルトン軍団に周囲を警戒させ、たまに襲ってくる敵を撃墜している。あいつは空気を読むスキルが非常に高い。

 ワイトが居るから、敵地でこんなことができる。


 それから、しばらくしてあっさりと二部屋目をクリアした。

 だが、そのときの俺は気が付いてなかった。

 この光景がリアルタイムで全魔王に公開されていることを。


~パレス・魔王 ダンスホールにて~


「【創造】の魔王が作ったダンジョン。なかなか面白かったわね」


 蛇人型の貴人が、ワインを片手につぶやく。


「あれの攻略には骨が折れそうだ。あの鉄の筒が気になるね。どういう手品だか……最大の評価点は、それをいくつも用意できることだ。ダンジョンの鉄の筒と、奴の魔物が携帯してるものは本質は一緒だろう。いやはや、末恐ろしい」


 今度は、虎の獣人の紳士が肉をかぶり付きながら、笑みを浮かべた。


「俺は【風】のスキルが気になるな。予想以上だ。今回は通用しなかったが、反則級の強さだよ。それにあれだけ部下に慕われているとはね。いい魔王になる」

「だな、それにまだ結果はわからんよ。【風】は【竜】の子だ。必ず”アレ”がある」


 魔王たちの会話はどんどん盛り上がっていた。

 パレス・魔王のダンスホールでは、【夜会】に参加している魔王たちが上等な酒を片手に【戦争】を楽しんでいた。


 空にホログラムが二つ浮かんでおり、一つはプロケルのダンジョンを写し、もう一つはストラスのダンジョンを写している。

 つい、さきほどまでは魔王たちはプロケルのダンジョンを食い入るように見ていた。

 しかし、ストラスが攻略を諦め、生き残った魔物を全て撤退させ始めたことで、プロケルのダンジョン攻略に注目が集まっていた。


「なかなか見ごたえがあるダンジョン攻略だ。【創造】の魔物は低レベルだが、恐ろしく強い魔物たちだ。それに装備がいい。あの装備、取引で手にいれられないものか」

「それは難しいだろう。あれは【創造】の戦略の根本。そう簡単に渡したりはしないさ」


 魔王たちは新たなライバルの戦力分析をすると同時に自分たちの利益にどうつなげるかを考えていた。


「にしても、【創造】の魔物はすごいな。あのレベルであの強さ。あれは変動レベルで生み出してる。元の強さは”最低”でAランク。まだ底を見せてない。……それに可愛い」

「確かに、可愛い。どのメダルの組み合わせで出来たか、教えてほしいものじゃ……そのな、別に孫のようにかわいがりたいわけじゃなくて、ただ戦力としてじゃ」


 魔王たちが天狐とエルダー・ドワーフが可愛いと盛り上がる。

 確かに魔王たちですらそうそうお目にかかれない美少女たち。

 しかも、プロケルに甘える仕草が、おそろしく可愛らしい。

 そんなときだった。ホログラムで、プロケルが天狐とエルダー・ドワーフをまとめて抱きしめる。

 日常ならともかく、戦場でその行動はどう考えても頭がおかしい。さすがの魔王たちも驚きを隠せない。


「あの男いったいなんなんだ」

「そういえば、さっきから配下がおとーさんとか、父さんとか呼んでたり、ちょくちょく頭を撫でたりしてたな。無理やり呼ばせているのか?」

「危ない魔王だ。こんなやばい奴、見たことがない。そういえば、【創造】の魔王、名前なんだっけ、たしか、ぷ、ぷ」


 たまたま、その場の魔王たちはプロケルの名前を失念していた。

 そこに、褐色白髪の狼の耳と尻尾を持った美女が現れる。


「ああ、あの子の名前はロリケルだよ。【創造】の魔王ロリケル」


 その美女は、よほど影響力がある魔王らしく周りから、畏怖と尊敬が入り混じった目で見られている。

 何人もの魔王たちが彼女に頭を下げる。


「あっ、姉さん。お久しぶりです。そうだそうだ、ロリケルだ! 確かそんな名前だ。名は体を表すと言うがこれは……」

「まあ、覚えやすくていいじゃないか。【創造】の魔王、ロリケル。要注意だな。いろんな意味で」

「名前の通りの人ね。覚えたわ。ロリケル……うちの子に手を出されないようにしないと」


 そうして、おそろしい勢いで魔王たちの間で【創造】の魔王ロリケルの名前は広がっていた。

 そうこうしているうちに、スクリーンの中の【創造】の魔王プロケル一行は最後の三部屋目に入る。

 いよいよ、この【戦争】も佳境。

 圧倒的にプロケルが優勢だが、まだ結果はわからない。

 最後のフロアでプロケルを倒せば、一瞬にして勝敗がついてしまう……それに、【風】には切り札たる。【竜】がまだ残っているのだから……。

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優れた暗殺者は万に通じる。彼は普段は理想の領主として慕われ、裏では暗殺貴族として刃を振るうのだった。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 精神年齢がレベルにも生後の経過時間にも準拠してないってことは、天狐やエルダードワーフの種族特性で一生ロリなの?Sランクの最強種族なのに。さすがに無理があるでしょ。
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