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第二十二話:ダンジョン攻略

~プロケル視点に戻る~


「よし、そろそろ行くか」


 俺は屈伸し、本格的に【風】の魔王ストラスのダンジョンを攻略することを決めた。

 今まで、お互いのダンジョンが向かい合う白い部屋で様子をうかがっていたのだ。


「おとーさん、暇だったのー」


 天狐がぷくーっと頬を膨らませる。


「ごめん、ごめん。相手の戦力を削ってからがいいかと思って。それに、ゴーレムたちが手に負えない奴がいてもここからならフォローできる」


【風】の魔王ストラスは熱くなっていた。それに負けず嫌いの性格。放っておけばどんどん戦力をつぎ込んで……犠牲を出してくれる。

 俺たちがダンジョンを攻めて、守りを固めるなんてことになれば面白くない。

 攻め込むのは、相手が疲弊してからで十分。


 そして、俺のダンジョンを突破されることはあまり心配していない。

 この白い部屋で、彼女の軍勢を見ていたが、懸念していた霊体系の魔物、ガス状、スライムなどの物理攻撃が利かない敵はいないし、盾になるような魔物もいない。


 そもそもが、【風】は機動性と隠密性に優れた属性。

 高速かつ、耐久力低い魔物が生まれやすい。はっきり言ってその素早さが活かせない俺のダンジョンではただのカモだ。


 ブローリング D2 カリバー.50

 全長1560mm。重量38.0kg。口径12.7mm×99。発射速度650発/分。有効射程2,000メートル


 重機関銃による12.7mm弾の弾幕を形成できるミスリルゴーレム。

 その射程は2kmにも及ぶ。

 つまるところ、俺が作った2kmの直線ダンジョンというのは、一歩足を踏み入れた瞬間に重機関銃の射程に入り、なおかつ遮蔽物ゼロ、回避可能スペースがゼロという悪夢のダンジョンだ。


 ゴーレムは耐久力と筋力は非常に高く並みのAランクの魔物を上回るが敏捷が鈍く総合的な戦闘力は低い。

 だが、重機関銃をぶちかますだけなら、敏捷なんて一切関係ない。その高い攻撃力を活かせる。


 それに、水晶の部屋で留守番してもらっているドワーフ・スミスたちのエンチャントで火力を引き上げていた。


 12.7mmという戦闘機の機銃並みの威力を誇るカリバー.50。ゴーレムの馬鹿力、ドワーフ・スミスのエンチャント。

 そのすべてが合わさった総合的な火力はAランク上位をも上回る。それが一秒間に十発。それこそSランクの魔物でないと耐えきれない。


「おとーさんのダンジョン、あんなに単純なのに強いってすごいの」

「実はいろいろと工夫をしているんだけどね」


 そして一直線の洞窟に見えて、少しだけ工夫をしている。

 床が微妙に傾いているのだ。それも入口に近づくほど傾きか大きくなる。

 感覚的には真っすぐ見えるが、1°でも傾きがあれば2km離れた入り口と出口で高低差が30m生まれる。

 音速の三倍近い速さかつ、直進性が高いライフル弾でも2kmあれば重力に引かれ着弾までに20m~30mほど落ちる。このたった数°の傾きががその落ち幅分を確保しているのだ。


 ゴーレムのほうは打ち下ろしなので楽に射撃できるが、逆に入り口側からの攻撃は、その高低差が仇になる。落ち幅を考えて上方に撃てば3mの高さしかない天井に阻まれる。

 物理法則に縛られ重力に引かれる攻撃は絶対にミスリルゴーレムに届かない。

 それは、ゴーレムが装備している重機関銃を奪ったとしてもだ。


 さらに、二体のゴーレムを配置することで射撃の空白を消しているし、適度に銃身を冷ます時間を確保している。付け加えてある程度の距離からは山ほど地雷をしかけており、ゴーレム付近には神経毒のガスが充満している。

 

「マスター。一部屋突破された」


 ゴーレムと感覚を共有することができるエルダー・ドワーフがぼそっとつぶやく。

 少し驚いた。二部屋目に到達することはないと予想していた。


「へえ、それで一部屋突破されたあとは?」

「次の部屋で即死。一部屋突破して油断した。間抜け」

「それは重畳」


 一部屋突破されたとしても、二部屋目はまったく同じ構成。

 三部屋目は部屋自体は同じだが、もっとも難易度が高い。

 最後の部屋なので、ありったけのゴーレムを配置し、特殊な武器を装備させ、ゴーレムならではの運用法をしていた。


 エルダー・ドワーフに話を聞くと、ストラスたちはかなり強い魔物を盾にして強引に一部屋目を抜けたそうで、もう二度と同じ手を使うことはできないらしい。なら、残りに部屋を突破するのは、不可能だろう。


「マスター。ただ、気になるのが一番懸念していた【竜】の魔物が居なかったこと。たぶん、守りのために温存している」


 マルコが教えてくれた。

 ストラスの親は【竜】の魔王アスタロト。

 最強候補の魔王の一柱。そして、その【竜】は俺の【創造】のように特殊なメダルであり、特別な【合成】ができるということだ。


 マルコの話では、”ひどく扱いにくいが単純戦力は最強。これ以上はフェアじゃないから教えない”。


 そのメダルをストラスに与えていないことは考えにくい。

 温存したのか、それとも出せない理由があったのか、あるいは大型で、俺のダンジョンではそもそも狭すぎて入れないのか。

 どっちみち、警戒はしないといけないだろう。


「じゃあ、俺たちも行こうか」

「やー♪」

「マスター。了解した」

「我が君、アンデッド部隊の力、お見せしましょう」


 そして、俺たちもいよいよ、【風】の魔王のダンジョンの攻略に乗り出す。

【風】の魔王は俺のダンジョンを攻略するためにかなりの戦力を割いてくれた。

 守りも手薄になっている。

 制限時間は残り、一時間三〇分。

 これだけあれば、十分に攻略できるだろう。


 ◇


「ふははは、どうですか我が君。スケルトン軍団の強さは!」


 貴族のような優雅なローブを来た骨の魔物ワイトが高笑いを浮かべる。

 彼は二〇体のスケルトンを指揮し、敵を殲滅していく。

 ……ワイトのスキルで即座にスケルトンの育成ができると聞いて、予備のアサルトライフルと同数のスケルトンを追加購入したのだ。

 最初の部屋は渓谷だ。

 一歩足を踏み外せば谷底に落ちる。


 そんな中、ストラス配下の翼を持つ魔物たちが空を旋回している。

 あいつらにとっては足場の悪さは関係ない。

 厄介なのは、死角から急降下し攻撃をしかけてくるうえに、攻撃を仕掛けるとき以外は近づいてこないこと。並みの魔物ならなすすべもなく倒れるだろう。


「我が君、私の軍団レギオンに死角などありませぬ。総勢二一名。四二の眼が全てを見通して見せましょう」


 だが、相手が悪かった。

 ワイトは二〇体のスケルトンすべての視覚情報を共有し統合して共有する。


 スケルトンたちが分担して全方位を警戒してるので死角なんて存在しない。

 さらに、ワイトに統率されたスケルトンはすさまじい連携を見せる。

 ワイトの指示のもと、一瞬にしてアサルトライフルの弾幕が張られ、鳥の魔物たちは銃撃され墜落する。

 逃げ場を多方向から潰しつつ殲滅するお手本のような制圧射撃。


「ワイト、なかなかやるな」

「お褒めにあずかり光栄です。我が君」


 相変わらず優雅な動作でワイトは礼をする。

 こいつはステータスは低いがなかなか優秀だ。こうしている間にもスケルトンたちにしっかりと周りを警戒させている。


「天狐様、お力をお借りしたいのですが、よろしいでしょうか?」


 突然、ワイトが顔をあげ、天狐のほうを向く。


「やー!」


 天狐はこくりと頷いた。


「天狐様、三秒後、南東六〇°。3…2…1…今です!」

「いくの!」


 ワイトの合図に合わせて、天狐が引き金を引いた。

 天狐の大口径に改造されたショットガンが火を噴き。散弾が無数に弾けて、超高速で飛来した巨大な緑色の鷲型の魔物を捉える。

 Bランクの強敵。スケルトンたちの5.56mm弾程度では耐えてしまい。なおかつ、弾丸を見てから避けれるような魔物だ。


 ワイトは状況判断能力もすぐれ、スケルトンたちの射撃では捉えられない素早い敵や火力不足だと判断すると大火力の散弾を持つ天狐に対応を依頼する。

 こういうところも信頼できる。


「さすが天狐様、あの難敵を一撃とは」

「天狐にお任せなの!」


 ストレスなく魔物を倒し。天狐も上機嫌だ。

 本当にワイトは優秀だ。Sランクで生み出してやりたかった。

 天狐が褒めてほしいのか、これ見よがしに俺の右腕に近づいて来たので頭を撫でてやる。

 やわらかく、滑らかな髪とキツネ耳の感触が心地よい。


「やー♪ おとーさんの手、大きい」


 エルダー・ドワーフがうらやましそうに見ながら、きょろきょろと周りを見ていた。

 彼女も褒めてほしくて、手柄を立てたいのだろう。素直に褒めてくれとおねだりできない彼女らしい。

 さあ、このまま突き進んでいこう。

 一部屋目の終わりが見えてきた。だが、このまますんなりいくとは思えない。

 気を引き締めて行こう。

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