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第十一話:スケルトンの弱点

 いよいよ初めてのダンジョン探索だ。

 魔物を狩るだけではなく、他の魔王が作ったダンジョンの構造はしっかりと見ておきたい。自分がダンジョンを作るときの参考になるからだ。

 今の俺の考えでは、第一階層のみは地上に置き、豊かな街を作る。そして第二階層以降は地下に伸ばしていき、水晶を壊されないように多数の魔物と罠を配置する。

 DPは一階層の街に集めた人間たちから得るので、地下の階層は客寄せのための接待ダンジョンではなく殺意しかないような凶悪なものを作る。


 緊張感あふれる探索になると思っていると天狐があくびをした。


「おとーさん。暇」

「まあ、そうだな」


 俺たちは火山の内部のようなダンジョンを歩いている。

 岩と土に囲まれた洞窟で、遠くにあるマグマの赤に照らされれいた。

 どんな探索になるかと不安と緊張があったが、それはまったくの杞憂だった。なぜなら……。


「ギュアアアアア!!」


 人間を丸のみできそうな巨大な火蜥蜴が、前方から現れ咆哮をあげる。

 空気がぴりぴりする。肌で感じるのだ。あれはランクC相当の強さがあると。


 しかし、タンタンタンと子気味良い音が響いた。

 巨大な炎を口から漏らす蜥蜴は現れた瞬間、スケルトンたちのアサルトライフルの一斉射撃でハチの巣にされたのだ。

 魔物が弱いわけじゃない。Cランクでステータスも悪くない。ただ、スケルトンたちの攻撃力が高すぎる。

 スケルトンはやはり何の表情も見せない。


「……」


 スケルトンたちは誇るでもなく、銃を下ろし歩き始める。

 冷静に自らの仕事をたんたんとこなす精密機械。その姿は完璧にプロフェッショナルのそれだった。


 スケルトンの射撃回数から残弾数を計算する。まだ弾の補充は必要ないだろう。

 スケルトンたちは自分で弾倉交換できないので弾数管理は俺がしている。いくら訓練してもそれは覚えさせられなかった。

 そんなスケルトンたちを見て、天狐がぷくーっとほほを膨らませる。


「また、スケルトンに先をこされたの!」


 天狐が悔しそうに地団駄を踏んだ。


「まあ、仕方ない。射程が違う」


 スケルトンたちには、構え、撃ての両方の命令をしているので、動くものが見つかれば即座に射撃する。

 しかも前方と後方の二組にわけて、それぞれの方向を警戒してもらっていた。


 予想以上にスケルトンたちはよく働き、魔物に会う瞬間に即死させてしまう。有効射程四〇〇メートルは伊達じゃない。

 天狐のショットガンは五〇メートル程度の射程。天狐が魔物近づく前にスケルトンが倒してしまう。


「おとーさん。天狐も戦いたいの!!」

「スケルトンたちが対処できない魔物が来たときのために力をとっておこう」


 スケルトンたちが対処できないのは、動きが早く、銃弾をまともに当てれない相手や、硬すぎて5.56mm弾では歯が立たない相手だ。

 そうなれば、天狐の出番だ。


 天狐ならどれだけ素早い相手でも容易に追いつける。

 そして、天狐の持つ、ショットガン、レミルトンM870のスラッグ弾は大口径のライフル弾並の威力がある。

 これが通じない相手はほぼいないだろう。

 天狐は納得がいってないようだが、とりえあず落ち着いてくれた。


「でも、パーティなんてものがあって助かったよ」


 俺はパーティの存在を教えてくれたサキュバスに礼を言う。

 サキュバスがパーティについて教えてくれた。


 最大十人で結成可能で、パーティを組んでいる間は得られる経験値は全員で等分。さらにDPは魔王である俺の独り占め。

 これを利用しない手はない。

 事実、さきほどからスケルトンたちはレベルがあがってるし、天狐も経験値をきっちり得ている。

 スケルトンたちを変動レベルで作ったのは正解だった。このペースだとあっという間にレベル一〇は超えそうだ。

 視線を感じて振り向くと、サキュバスが俺とスケルトンを交互に見ていた。


「【創造】の魔王というだけはありますわ。スケルトンがこれほど強くなるとは思いませんでしたわ」


 サキュバスは、Cランクの魔物すら一蹴するスケルトンたちを畏怖の目で見ていた。


「攻撃力だけは、Bランクの魔物並みにあるけどからね。逆に守備力はそのまま。攻撃を喰らえば一発でお陀仏だ」

「それだけ遠くまで攻撃が届くなら、攻撃を喰らうことなんてありえないのでは?」

「それはどうかな。不意打ちを喰らうことはあるだろう。まあ、死んでも懐が痛まないのがスケルトンのいいところでもあるから」


 死んでも20DPがぶっ飛ぶだけなので対して痛くない。

 それもスケルトンのメリットだ。……教育の手間を考えなければ。

 そう思っていると地面が揺れた。

 それもかなり近い。


「キュワ!」


 甲高い鳴き声を上げて、俺たちの陣形のど真ん中の地面から敵が飛び出した。

 炎の蛇だ。

 奴を注視する。すると名前とランクが脳裏に浮かんだ。レベルがあがったわかげで魔王の力が強化され相手のレベルだけじゃなく名前とランク、能力も見えるようになっていた。

 ただし、今のレベルだとランクDまでしか見えないし詳細なパラメーターは見れない。


種族:フレイム・バイパー Dランク

名前:未設定

レベル:38

スキル:地中移動 火炎 


 地面から現れた炎の蛇に対してスケルトンは完全に無防備だった。

 運悪く炎の蛇の出現場所の近くに居たスケルトンは、太い胴に巻き付かれ、一瞬でへし折られた。ランクGの防御力は紙のようにもろい。

 俺は舌打ちをする。ここは陣形の中心、スケルトンに銃を撃たせるわけにはいかない。


「スケルトンども、やめ!」


 敵を見つけ次第射撃するように言っていたスケルトンたちに射撃中止の命令を出す。

 そうでもしないと同士討ちになる。

 俺は奥歯をかみしめる。防御力がない以外にも、こんな欠点があったのか。

 だが、攻撃しないということは敵に好き勝手させること。炎の蛇は次のスケルトンにとびかかる。


「させないの!」


 そんな中、天狐が走る。味方が集中している中でショットガンは打てないと考え、腰につるしている軍用大型ナイフを引き抜く。


 それはナイフといより鉈だ。50cmもの長さの分厚い刀身は光を吸収する漆黒。

 天狐は炎の蛇の首をがっしりと掴みと躊躇なく軍用大型ナイフを振り上げ、首を切り落とした。

 首を失ったが炎の蛇の胴体が、ぴくぴくと動く。

 生命力が強い蛇も頭を落とされればどうにもならない。


「おとーさん、やったの!」


 切り落とした炎の蛇の頭を持ったまま、無邪気な顔で天狐は振り向く。


「助かったよ天狐」


 本当に助かった。

 天狐が早急に炎の蛇を倒さなければもう、二、三体スケルトンがやられていたかもしれない。

 炎の蛇が青い粒子になってきえる。

 俺が苦労して銃の扱い方を教えたスケルトンも青い粒子に変わってしまった。


「これはなんだ?」


 蛇の死体が完全には消えていない。硬質な牙があった。

 それを拾って叩くと、まるで金属のような音がなる。


「あら、ドロップアイテムですわね」


 サキュバスが、少し明るい口調で伝えてくれる。


「ドロップアイテム?」

「ええ、運がよければ魔物の魔力が集中している部分が、消えずに残りますの。長く生きている魔物ほど、ドロップアイテムを落とす可能性が高いですわ。人間たちの中にはそれ目当てでダンジョンに挑む方もいます」


 なるほど、だからマルコのダンジョンではドロップアイテムをほとんど見なかったのか。

 なにせ、混沌の渦から生まれたばかりの魔物ばかりと戦っていた。


「教えてくれてありがとう。それと、スケルトンの運用、ちょっと考えないとな」


 一方的にアウトレンジで攻撃しているうちはいいが、今回のように不測の事態が起きて距離を詰められればそのもろさを露呈する。

 やはり、指揮官が欲しい。

 手足のようにスケルトンを扱える指揮官が。


「おとーさん、いい考えがあるの! スケルトンはやめて、妖狐を作るの! 強いの、話せるの、頭いいの、骨がたくさんより、キツネがたくさんのほうが可愛いの!」

「……まあ、それはおいおいだな」


 DPが追いつかない。それに、俺は十や二十じゃない。何百という単位の軍団を早急に作りたい。妖狐の値段だとそれは無理だ。ただ、キツネたくさんに興味がないわけじゃない。DPが余るようになったら考えよう。

 それからあとは、ほとんどスケルトン無双で敵を倒しながら初回のレベル上げは終わった。

 訓練を終えたスケルトンを一体失ったのは痛いがいい教訓になった。

 この反省を生かす方法を俺は考えていた。

 

 


 

 


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[気になる点] スマホみたいなソフトウェアと電子工学の専門知識が必要な複雑な機構も複製できるのはちょっとやりすぎ感がありますね
[気になる点] 誤字報告です 第十一話:スケルトンの弱点 >「攻撃力だけは、Bランクの魔物並みにあるけどからね。 正:「攻撃力だけは、Bランクの魔物並みにあるからね。 [一言] 楽しく読ませてもら…
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