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第十話:【紅蓮窟】

「それ、君の配下の魔物たちなんだ」


 どこかひきつった笑みでマルコが言う。


「可愛いだろ?」


 無事レベル一〇まであがった俺と天狐は、サキュバスに転送してもらいマルコに会いに来ていた。

 もちろん、【紅蓮窟】まで案内してもらうためだ。

 そこにはスケルトン部隊も引き連れている。全員、アサルトライフルM&K MK416を担いでいて壮観ですらある。

 無感情なスケルトンと武骨な銃の組み合わせはなかなかいい雰囲気があっていい。


「スケルトンなんかを本気で運用する魔王は初めて見たよ」

「俺が使えば、スケルトンだって立派な戦力だ」

「確かにそうだね。その武器があれば使い手はなんでもいい。よく考えているよ」


 マルコは一瞬で俺の狙いを読み取っていた。

 さすがは熟練の魔王といったところか。


「プロケル。天狐一体と、九体のスケルトン。まがりなりにも十体のフルパーティになったね。生まれたての魔王にしてはなかなかの戦力だ。これなら安心して送り出せる。でも、くれぐれも油断しないように」

「もちろん、わかってるさ」


 今回はあまり深く潜るつもりはない。

 いつかは水晶を壊して、オリジナルメダルを得たいが、さすがに戦力が揃ってない状態では挑めない。


【誓約の魔物】を三体揃え、全員がレベル五〇まで行けば本格的な攻略をするつもりだ。

 それまでは、いつでも引き返せる浅い階層でレベル上げとDP稼ぎに徹する。


「まあ、君は慎重なほうだし頭もいい。無茶はしないだろうさ。念のためだけどサキュバスを貸そう。サキュバス、彼のおもりを頼むよ」

「いいのですか? 私が居なければ居住区からの魔物の転送が出来なくなります」

「大丈夫さ、たまにはラーマを働かせる」

「ラーマ様が動かれるのなら安心ですわ」


 おそらく、ラーマは種族名ではなく名前だ。マルコが名前をつけるぐらいなら強力な魔物なのだろう。


「それじゃ、サキュバス。あとは任せた。基本はおもりだけど、万が一自分の命とプロケルの命を天秤にかけるような状況になれば、自分の命を優先すること。そこまで追い込まれる状況を作った、プロケルが馬鹿なだけだ。躊躇する必要はない」


 きついことを言っているが、納得できる。

 そもそも、サキュバスを貸してもらえるだけでもありがたい。

 ランクBの魔物は貴重な戦力になる。


「かしこまりましたマルコシアス様。では、行ってまいります」

「うん、よろしく頼む」


 主従の会話が終わった。

 サキュバスが魔法陣を展開する。


「ちょっと待て、サキュバスの転送はダンジョンの外でも使えるのか?」


 魔術の展開に集中しているサキュバスではなく、マルコが俺の質問に答えるために口を開く。


「事前に転送用の陣を作っていればね。陣から陣への転送。夢の中に忍び込むサキュバスの魔法の応用だよ。連れていくのは二人が限度だけど」


 便利な力だ。

 将来、サキュバスが作れるようなメダルがあれば作ってみたい。

 アンデッドを操るリッチ。転送魔術を使えるサキュバス。

 どんどん作りたい魔物が増えていく。


「【創造】の魔王プロケル様、準備が整いました。いつでも跳べますわ」

「わかった。すぐにでも跳ぼう」


 俺はスケルトンを全員収納し、天狐と二人サキュバスの近くに移動する。

 青い光がサキュバスの呼び出した魔法陣に満ちた。


「あっ、プロケル、大事なことを言い忘れていたよ。もうすぐ魔王みんなが集まる……」


 マルコの言葉の途中で転送魔術が始まる。おそろしく内容が気になっているなか、俺の体は光に包まれる。

 そして、生まれて初めてマルコのダンジョンの外に出た。


 ◇


「暑い」


 跳んだ先で真っ先に出た言葉がそれだ。

 ここは蒸し暑い。【紅蓮窟】という名前から想像していたがかなり気温が高い。

 洞窟というより、火山の中に居るような印象を受ける。

 土と石に囲まれ、炎の明るさで照らされている。

 道幅は広く、三メートル以上はあるだろう。

 さっそくスケルトンを展開する、カタカタと音を鳴らしながらスケルトンたちが整列した。


「おとーさん暑いの?」

「天狐は大丈夫なのか?」

「天狐はだいじょーぶ」


 炎を司る天狐にとって、この程度の熱さはまったく問題ないようだ。


「私も辛いですわ。だから、ここにはあまり来たくないのです」


 サキュバスも俺と同じく辛そうだ。

 ただでさえ薄着なのに、その恰好でぱたぱっと服の裾を引っ張ったりするせいで、いろいろ見えてしまって目の毒だ。


 ちなみにスケルトン軍団はかたかたと骨を鳴らすだけ。

 まったく何を考えているかわからない。


「おとーさんも、サキュバスも熱いなら。天狐が涼しくしてあげる」


 その言葉のとおり急に周囲の温度が下がった。


「天狐の魔法か?」

「そうなの! おとーさん気持ちいい?」

「ああ、涼しくて気持ちいい助かるよ」


 天狐は炎の支配者というスキルを持っている。

 これの効果は炎属性の魔術の威力上昇極大、消費魔力の減少だ。そして自らの領域にある炎全てを統べる。

 炎魔術は熱量操作が本質であり、こうして下げることもできる。

 かなり快適になった。これだと気持ちよく狩りができる。


「天狐にお礼をするよ」


 創造でキャラメルを作る。

 すると、天狐が大きく口を開くので、そこにキャラメルを放り込む。


「やー♪」


 最近、キャラメルにはまっている天狐は幸せそうにキャラメルを舐めていた。

 そうしていると、サキュバスが俺に話しかけてくる。


「一つ先に言っておきますわ」


 サキュバスが出発を止める。

 そして、自分の足元を指さした。


「私の転送をマルコシアス様のダンジョン以外で使う場合、あらかじめ用意した陣から陣にしか飛べません。つまり、マルコシアス様の領地に帰ろうと思ったら、今、この場に刻まれている陣まで戻ってこないといけません。道はちゃんと覚えておくように」

「わかった気をつけよう」


 たぶん、普通に外に出ることはできるだろうが、転送なしでマルコのダンジョンまで歩いて帰るなんて想像もしたくない。

【創造】を使い、発信器を生み出す。


 さらに、スマホと受信機を【創造】。スマホに受信機をセットする。

 GPSがないので、地図を出すことはできないが、アプリがあれば少なくとも方角はわかる。


 一応胸ポケットにスマホを入れ、録画機能をオンにしておく。万が一の場合は頼りになるだろう。


 ありとあらゆる銃の記憶があり、こんなものまで用意できる俺は、いったいどんな人物だったのか。

 なぞは深まるばかりだ。

 たぶん、ろくな奴じゃなかったのだろう。


「サキュバス、他に何かあるか?」

「私からはもう何もないですわ」

「なら、行こう」

「やー♪ たくさん敵を倒すの!」


 準備は万端だ。今度こそ俺たちは歩き始めた。




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