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  カカの天下 作者:ルシカ
カカの天下839「さんぽ、散歩、惨歩」
 ども、カカでーす。

 今日は理由もなく早起きしてしまったので、外へ散歩に出てみました。かなりの寒さながらも天気はよく、日光を浴びながら歩くと気持ちがいいです。

 そして同意見も人も多いのか、ジョギングや犬の散歩に繰り出す人達がちらほらと見受けられました

「お、あの犬かわいい」

 向こうから歩いてくる子犬と目があった。もちろん飼い主に首輪と紐で捕まってるけど『俺は自由だぜ、遊びたいぜ、舐め回したいぜ!』っていう顔をしていた。

「おお、こっちにくる」

 飼い主のおばさんをぐいぐいと引っ張り、じーっと私に目を合わせたまま突っ込んでくる。なんだ、やるのか。

「こ、こらこら」

 飼い主さんは困ってる模様。

「けって!」

 蹴って? や、いくらなんでも突然そんな。

 ――戸惑っているうちに子犬は目の前。勢いを殺さずに飛び掛ってくる。

「けって!」

 うん、そこまで言われちゃ仕方ない。私は目前に迫る子犬をサッカーボールのように蹴り飛ばした。

 きゃいん!?

 やはり子犬、勢いは鬼でも鳴き声(泣き声?)はかわゆい。

 でも本当のボールのように転がっていくワンちゃんを見て、ちょっと可哀想かなぁと思ったけど……飼い主の許可をもらったんだし、いいよね? そんなことを思っていたとき。

「何するの!?」

 なぜか飼い主のおばはんに怒られた。

「え、だって。蹴って、って言うから」

「ケッテはあたしの犬の名前よ!!」

 そんな変な名前つけるな。

 そう言いたかったけど我慢した。私はもうすぐ中学生。これ言ったらおばちゃんが怪物化する、そして厄介になる……そんなことくらいはわかるようになったのだ。

「全くもう! なんで皆あたしの犬を蹴るのかしら!?」

 なんで原因がわからないのか問い詰めたかったけど止めておいた。私は少しだけ大人になったのだ。

 おばちゃんと子犬に謝り倒し、再び歩き始める私。

 子犬には可哀想なことをしたなぁ。でも最後に『もっと蹴って』って顔してたような……気のせいかなぁ。

 と、またもや前方から散歩中の犬が。今度は少し大きい。そしてまた目が合った。

 さらに突進を開始する犬。私って今日は犬に好かれる日なんだろうか。それとも嫌われてるから襲われるんだろうか。

「なぐって!」

 飼い主が叫んだ。しかし私は大人になりかけ。ちゃんと学習するのだ。

「この犬の名前がナグッテなんですか?」

「何言ってるの!?」

 ああ、違うのか。じゃそのまんまの意味でとるね。とりゃ。

 ぎゅわいん!!

 かわゆくない声をあげて吹っ飛んでいく犬。ふ、私の右腕は今日も絶好調だぜ。

「何するのよ!?」

「えぇ!? なんで怒るの」

「いきなり他人の犬を殴るなんて!」

「だって殴ってって言ったじゃん!」

「この子はナグッテって名前なのよ!」

「えええ! 最初に確認したのに!」

「そのときは『何言ってるの!? その通りよ!』って言おうとしたのよ!」

「もうちょっと文法を守ろうよ!」

 とにかく謝り倒して、散歩を再開した。

 そしてまたもや前方から以下同文。今度はでっかい犬だ。

「ニゲテ!!」

 私はもう騙されないぞ。だって今回はわかりやすい。カタカナ表記だよ? これは名前だとバラしているようなもんだ。だから私は何もしない。

「もきゅ!?」

 何もしなかったら顔面にボディープレスをくらい、思っきし押し倒された。

「オゥ、ダカラニゲテトイッタノニ」

 飼い主は喋ると全部カタカナ表記な外人だったなんて、誰が想像できただろう。

 とにかく私はさんざん舐め回された後、フラフラになりながらも散歩を開始した。

 そして前方以下同文。

「だいて!!」

 もうわけがわからない。



 そんなこんなで波乱万丈な散歩を終えて帰宅すると……トメ兄が待っていた。

「お、カカ。こんな朝早くからどこ行ってたんだ」

「ちょっとね……トメ兄は?」

「ん、軽く散歩でもしようかなぁと。おまえもいくか?」

「トメ兄が私を散歩させるの?」

「……なんだ、その飼い主と犬みたいな言い方は」

 や、今朝のことを振り返ると、どうしてもその構図が。

「まぁなんでもいいや。いくぞ」

「けって! なぐって! だいて!」

「何をとち狂っとるのだオマエは」

「散歩といえばこうなんだよ。私は今朝、学んだんだよ」

「何を言いたいのかさっぱりわからない。どうしよう」

「なによぅ、じゃあトメ兄にするよ」

「何を」

「蹴る。殴る。血が抱く抱く」

「字が違う」

 そんな風に始まる私の一日。


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