ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
  カカの天下 作者:ルシカ
カカの天下809「大人の階段、六段目」
 どうも、なんか混乱中のカカです。

 目の前には姉と、タケダのかーちゃん兼タマのかーちゃんという、信じ難い設定な女性が。

「えっと、お姉。どゆこと? タマちゃんってお姉の子供なんじゃないの?」

「違うって最初から言ってたじゃん」

 言ってたような言ってなかったような、途中から誰も気にしなくなったというか。

「えっとー、私が聞いたお姉さんの嘘臭い設定はー、武者修行中、雪山で遭難したときに出会った女性と意気投合して、気がついたら子供を押し付けられてたっていうのじゃなかったっけー」

 サエちゃんてば驚きの記憶力。たしかそんな感じだった気がする。

「ああ、それは大体合ってる」

 もうこの人わけわかんない。

「よし、説明しよう! この人はね? あたしが子供の頃から知り合いの、旅行好きなおねーさんなんだよ。もうタケダ医院の院長に嫁いでて子供もいるし、歳的にもおばちゃんって言ったほうが正しいんだけど」

「ちょっとカッちゃん、黙って聞いてれば失礼なこと言ってくれるじゃないか! あたいはまだまだ若いんだよ! これだけ日本を飛び回ってんだからね!」

「元気=若いってんなら、あたしなんか赤ん坊を飛び越えて腹ん中だよ」

「あんたの星じゃそれが普通なんだろうさ」

「あたしゃ地球人だ!」

「嘘つけ! あたいはカッちゃんみたいな地球人は見たことないわ!」

「ていうか宇宙人を見たことあんのか!」

「あるさ! あんただ!」

「違うっつうのがわかんないのか!?」

「頭が悪いからわかんないね」

「頭が悪いんなら宇宙人説もきっと間違いなんだろうさ」

「いいや、あたいはカンとお通じだけはいいんだ! 断言する、あんたは地球人じゃない! もしくは地球生まれのナントカ星人だ!」

「ナントカって何さ!」

「あんたさ!」

「あたしはどんだけアレなんだ!」

 ……うわぁ、この人、喋り出したらすごい。タケダのお母さんというより、お姉の双子みたいだ。

「まーまー二人ともー、今はそんなことより説明してよー」

「そうよっ! タケダのママがタマのママでもあるってどういうことよっ」

「あはは、早口言葉みたいだ」

 ねぇお姉、笑い事じゃないと思うんだけど。

「はい、改めて自己紹介します! あたいは……そのタケダのママってのが一番わかりやすいかな! それで、タマのママでもあります」

 いやそれサユカンが言ったのまんま口にしただけだし。

「だからー、その言い方だとタケダ君とタマちゃんが兄妹ってことになっちゃうでしょー」

「そだよ」

「軽く頷いたっ!? 初めて聞いたわよ、そんな話! じゃあお姉さんの、雪山で意気投合した女性に子供を押し付けられたっていうのは」

「それも大体合ってるのよん。あたしさ、サエちゃんの言った通り武者修行してた時期があったじゃん? んで、同じく一人旅の途中だったこの人に会ってさぁ。『旅先で子供産んじゃったけどまだ旅を続けたいから』ってことで、その子供、タマをこの街まで送り届けてくれって頼まれたのよ」

「送り届けてってー……タケダさんちには届いてないみたいですけどー」

「お姉のとこで暮らしてるよね。や、正確にはシュー君の家かな?」

「うん、わたしもタマはカツコさんの子供だと思ってたし」

「ええ!? どういうことよカッちゃん!」

 えええ、お母さんも知らなかったの!? でもお姉ってば涼しい顔で、

「や、だってさ。あんた言ってたじゃん、『うちのキンジロウは男のくせに弱っちいからこの娘はあんたが鍛えてくれ』って」

「それは酒の勢いよ!」

 オイ。

「だから鍛えるためと思って、タマはずっとあたしんとこで預かってたのよ。そういう意味だと思ったんだけど、違った?」

「……ちょっと待って。あたい、嫌な予感がしてきたわ。ねぇカッちゃん。あなた、ちゃんとあたいの夫とキンジロウに子供ができたって報告、した?」

「してないよ」

「なんで!?」

「そういうのはあんた本人がするもんでしょ」

「そりゃそうだ!!」

 オイオイ。

「旅に夢中で忘れてたわ……え、じゃあ何。この数年、タマは家族に知られることなく育ってきたってこと!?」

「たまにタケダの坊やと遊んでたから、てっきり知ってるもんかと……でも知らないんだろね、話を聞く限りじゃ」

「うわ、じゃあ今、衝撃の事実を告げたら……」

「家族の、感動の再会!」

「燃える!」

「泣ける!!」

 その前に呆れる。何この人たち。

「いやぁ、あたいのテキトーな性格のせいで色々あったみたいだけど、タマは強く育ってるみたいだし、他の家族も元気でやってるっぽいし、結果オーライだね」

「そうそう、あんたは昔からテキトーすぎるんだよ」

「カッちゃんにだけはテキトーって言われたくないね! あたいよりテキトーなくせに」

「いやいやあんたにゃ負けるってばさ、あっはっは」

「……なんで?」

 なおも笑い飛ばす二人に向かって、思わず私は呟いた。

「なんでそんな風に笑ってられるの。二人とも、大人なんだよね? 大人なのに、そんなバカなことをして、恥ずかしくないの?」

 私の悩みを吹っ飛ばすような、わけのわからない、突飛すぎるバカ話。それを聞いて私は黙っていられなかった。大人というものに真剣な疑問を持っていた自分は一体なんだったのかと問い詰めたくなる。

「うん、こりゃ恥ずかしいわ! 失敗失敗」

 嫌味っぽい私に対して、タケダ母さんから余りに堂々とした返事が。

「でもやっちゃったもんは仕方ないわ!」

 ドーンと胸を張りまくった返事が。

「ねぇカッちゃん!?」

「うん、どんまい!!」

 明るすぎる励ましが。

 なんかもう、開いた口が塞がらない。

「んあ? カカちんどったの?」

「あ、お姉さんっ! それはわたしたちが説明するわっ」

「実はカカちゃんねー」

 ぽかーんとする私の代わりにサエちゃんとサユカンが説明してくれた。私の、大人に対する疑問等について。

「――それでですねー? 大人になるためにはバカなことをしてはいけないんじゃないかーって思ってるときに、お姉さんが超絶的にバカなことをしたので、カカちゃんとしては不満なわけですよー」

「サエすけ、君ってばバカバカとハッキリ言いすぎ。いくら途方もないバカ相手でも少しは慈悲をかけましょうよっ」

 そうだそうだ、もっとバカバカ言っちゃえ。そしてたまにはお姉も凹め。私みたいに。

「大人だろうが子供だろうが、男だろうが女だろうがバカだろうが関係ないわ! あたしはあたしだ! あたしの人生は、あたしが楽しければそれでいいんだ!」

 ……なんて迷惑な人なんだろう。微塵も凹みやしない。

「人は迷惑かけて当たり前、とか開き直るつもりはないけどね。周りばっか気にして自分を張れないんじゃ、生きてる意味がないんだよ。『大人はこうあるべき』だなんつー誰が決めたか知らない規則より、『自分はこうあるべき』ってぇ心に従うべきだ。じゃないと人生楽しくないよん」

「――――」

 一瞬前までただの手前勝手な人に見えていたお姉の言葉が、するりと私の胸に入ってきた。

 自分はこうあるべき。そんなこと、私は考えたことあったっけ?

 今まではずっと『なんとなく』行動していた。ここ最近になって『大人はこうあるべき』なのか? と考えるようになった。では今お姉が言ったように『自分はこうあるべき』と考えたことがあるだろうか? 

 ない。

「カッちゃん。それって結局は自分のやったバカへのイイワケじゃないの?」

「うは、厳しいお言葉。でもこれは本当にあたしの信条だもんね! っていうか最初にバカやったのはあんただろ!? 旅行先で子供産んで、さらにその子を他人に預けて、家族への報告も忘れて旅行って……どんだけ旅行好きなんだよ!」

「あたしは旅行してないと死ぬんだ! 泳いでないと死ぬマグロと一緒だ!」

「このマグロおばちゃんめ!」

「そうさマグロバンザイ! 赤身魚ヒャッホウ! それがあたいの人生さ! 大人である前に母である前に旅人なんだ!」

「子がいる母なんだから少しは自重しろ!」

「すいません! でもカッちゃんこそ自分を人間と言い張るなら自重しろ!」

「できん!」
 
 なおも二人のバカ大人がグダグダ会話した後、どうやらタケダ家の家族再会シーンが展開される予定らしい。

 ちょっと興味はあったけど、私は私で忙しいのでお姉たちと別れた。サエちゃんとサユカンはもちろん私についてきてくれた。

「私はどうあるべきか……か」

 大人は、というよりも先に考えるべきことのような気がする。



 ――そろそろ答えが見えてきたかな。次は誰に話を聞こうか。


 作中、現実ともに色々あって長引いた階段も、そろそろ終着点です。

 タマとタケダの関係については最初から決めていました。なかなか公表するタイミングがつかめず、気がつけばこんなところまできてしまいましたが笑 ほら、タケダとタマが絡む話とかあったでしょ。あれ何気に伏線(誰もきづかないってば

 そっちサイドの話はまた改めて書くとして、まずは階段です。そろそろ日常的などうでもいい話が恋しくなってきました、カカは元通り緩いボケをかましてくれるようになるのでしょうか。はてさて。
 気に入りましたら、こちらお願いします♪

NEWVELランキングへ投票(月一回)

 長編小説ランキング

 HONなびランキング



+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。