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  カカの天下 作者:ルシカ
カカの天下609「赤い誕生日」
 カカです。

「カカちゃん誕生日おめでとー」

「カカすけ。おめでとうっ」

「トメ兄は?」

「……今朝無理やり起こされてから数十回言わされて、まだ言えと?」

「だって嬉しいんだもん」

 そうです、今日はついに私の誕生日なのです!

 ちゃんとしたお祝いは今週末にしてもらうことになっているのですが、サエちゃんとサユカちゃんは今日も集まってくれました。もちろんサエちゃんの誕生日当日も直撃するつもりです!

「はいはいおめでとう。それでな、カカ」

「ん?」

「ちゃんとしたケーキもプレゼントも週末に用意することにして、今日は簡単に、と思ってたんだが……ケーキが届いた」

「お、誰から誰から?」

「というかな、ケーキだけじゃなくていっぱい届いたぞ。知らない人から」

「……なぜに」

「ほら、おまえ今年は色々と目立ってただろ? だから学校のクラスメイトっぽいのから一般人まで、いろんな人からプレゼントが届いたみたいだ」

 む、そういえば夏祭りでも運動会でも色々やりすぎた気が……

「良くも悪くも有名になっちゃったんだねー」

「きっと悪いほうよっ! ふんどし女子とかいう噂が広まってるに違いないわ。それで、そのふんどしがマニアに高く売れたりするのよっ」

「こらこらサユカちゃん」

「妄想たくましすぎー」

 うーん……やりたいようにやってきたけど、改めてそう聞くと恥ずかしいもんだね。

「でもプレゼントくれるなら嬉しいな。なになに、何があるの?」

「まずはこれだ」

 おお、綺麗にラッピングされた正方形の箱はまさしくケーキっぽい! しかもおっきい!

「ほらほらカカすけっ、早く箱を開けなさいよっ!」

「包みはちゃんとカカちゃんのイメージカラー、赤色だねー。クラスメイトかなー?」

 えへへ、わくわく。リボンをほどいてほどいて、真っ赤な包みを開けると中からは――ほら、真っ赤なケーキが!

 ……また真っ赤?

 なに、これ。

 なんか、ぐちゃぐちゃなんだけど。

 赤黒いんだけど。

 赤黒い液体がびちゃびちゃに滴ってるんだけど!?

「ぐ、グロい……な」

「ま、まるで破裂した内臓ねっ」

『ウォォォォォォォォンン……』

「鳴いた!! 泣いた!? なななななんか唸ってるよこのケーキ!!」

「あー、なんか幽霊の気配すると思ったらケーキの中からかー」

「なんでケーキにそんなもんがいるの!?」

『ゥゥゥゥゥゥゥウォォォォン……』

 ひぃぃぃ、やだ、私が泣きそう!

「んー、『コノウラミハワスレナイ』って言ってる」

「なに!? 恨みってなに!?」

「お、おい落ち着けカカ! これさ、メッセージカードついてるぞ」

「なにさ誰さこんなの送ってきたのは!?」

「なになに? 『15話でケーキを半分喰わされた女子より』って15話てオイ」

 ケーキを、半分?

 ……あ。

 あああああああ。

「私が失敗したべちょべちょなケーキっぽいモノを、吐きそうになってるのも無視して無理やり食べさせまくって泣かせたあの子かぁ!!」

 そうだ、そうだそうだ、たしか誕生日にはすごいものくれるって言ってた! 

「じゃーこの幽霊ってその子かなー?」

「ま、まさか、そのケーキの毒で死んじゃってこんな姿にっ!?」

 ヤメテ。

「そうかもー。幽霊さんが『ウラミハワスレタコロニヤッテクル……』って言ってるー」

 ヤメテクダサイ。

「なぁカカ。このケーキ――」

 箱に入れ直す。

 蹴り飛ばす。

 ゴミ箱にホールインワン。

「でもプレゼントくれるなら嬉しいな。なになに、何があるの?」

「うわ、無かったことにしたわねカカすけ」

 聞こえましぇん。

「ま、まぁいいか。あんなの食べる気にはならないしな。ええと、次は……これだ」

 お、今度もお菓子っぽい包みだ。

 普通のお菓子だよね……うんうん。はがしはがし……ほら、普通のクッキーだ!

「差出人は、サイボーグさんって書いてある」

「カカちゃん、サイボーグに知り合いがいるのー?」

「お姉さんのことじゃないの?」

 うーん、誰かわかんにゃい。それに多分お姉はサイボーグなんかより強いと思う。

「なんでもいいじゃん、このクッキーが美味しければ。早速いただきまーす」

 私が齧るとパキ、と小気味のいい音を立てて割れるクッキー。

 うん、苺ジャムが入ってるね、おいし……い……?

 なんだろう。手に、生暖かい液体の感触が……

「か、カカ……」

「なんか……そのクッキーの断面からダラダラ流れてるのって……っ」

 な、ななななななな――

「血だねー」

 なんですとおおおおおおおおおおおお!?

「あ……やだ……手が……血で、真っ赤にぃ……!!」

「カカすけっ! 気をしっかり持って! もうっ、サエすけ変なこと言わないでよっ!」

「ごめんカカちゃん、嘘だよー、それは苺ジャムだよー」

「カカ、苺ジャム好きだよな? な!?」

「えううううううううう」

 えぐっ……な、泣いてなんかないんだから!

 でももう、イヤになってきたよぅ。

「今度のは普通だよ、ほら、トマトがダンボールでいっぱい届いたんだ」

「内臓があるんでしょ?」

「ないから」

「誰かの血が流れるんでしょう?」

「戦場じゃないから」

「……普通のトマト?」

「そうそう。ほら僕が空けるよ、ほらほら」

「……ほんとだ」

 それは確かに……美味しそうな赤色をしたトマトだ、うん。

「これ、メッセージな」

「ん……どれどれ」

 ――笠原カカ様。誕生日おめでとうございます。私はあなたと直接話す機会はありませんが、いつも遠目から元気なあなたを見て勇気づけられている者です。そのお礼に、これを贈ります。こんなものですいません。

「わ、これ私のファンっぽい! ようやく普通のプレゼントだね!」

 自然と顔がほころぶ! なになに、続きは? ええと。

 ――特に、かなり前の話になりますが、お姉さんとの腐ったトマトの寸劇はとても面白かったです。あのときのあなたたちの姿がおかしくて、一年以上をかけてようやくこれだけのトマトを作り上げました。

 トマトの、寸劇?

 一年以上かけて、たくさん?

 届いたダンボールを見る。

 トマトがびっしり詰まった大きいダンボールが十一個。歳の数だけある。かなりの量だ。

 ――腐ってはいませんのでご安心を。

 腐った、トマト?

 ああ、そういえば、そんなことしてたような……え? 

 え? え?

 なんで、そんなこと知ってるの? あのときはお姉とトメ兄しかいなかったし、誰かにそんな話はしたことないし――

 ――136話のことですね。

 何!? 136話って何!? どういうこと!?

 ――イツモ、ミテマス。

「わあああああああああああ!! 怖い!! 怖すぎる!! なに言ってるのかさっぱりわからないし!!」

「落ち着けよカカ!! どうしたんだ!?」

「これ! このトマトってどこから送られてきたの!?」

「近くからだけど」

 近く……?

 ――イツモ、チカクデ、オマエヲ、ミテイル。

「うわあああああああああああああああああああああああ!!」

「ちょっとカカすけっ!?」

 ボウソウ、ボウソウ、アハハ。

「ダメだわっ! 混乱してるわっ!」

「あ、トメさん。このプレゼントなんかいいんじゃないですかー?」

「よ、ようし! 見ろカカ! おまえの好きな変なモノだぞ!」

 ミロ?

 ミタ。

「匿名希望からのプレゼントだ」

 ――即席忍者。

 お湯をかけて三分でシュバッ!

「怖いいいいいいいいいいいいいいいい!!」

「え? おい待てカカ! これのどの辺が怖いのか説明してくれぇ!」

 もうヤダ。

 プレゼントヤダ。誕生日ヤダ。

 誕生日キライ。



「……行っちゃった」

 トメです。

 すっかり怯えきってしまったカカは半泣きのまま自室に閉じこもってしまいました。

「作戦成功ですねー」

「成功だけど……心が痛むわね。カカすけ、泣いてたわよ?」

「むぅ、兄としてもかなり心が痛いぞ」

「仕方ないじゃないですかー。そういう作戦なんですからー」

 そう、作戦だ。

 今回、カカに送られてきたプレゼントはもっとたくさんある。でも僕らはその中でもカカが苦手なものしか見せなかった。いやまぁプレゼントにカカが苦手なもんをこれだけ送ってくるやつらも何してんだコラって感じなんだけど……

 本物のメッセージカードをいくつか取り出す。

『ふふ、びっくりした? 前に私の誕生日で無理やり変なケーキを食べさせてくれた仕返しだよー。本当は去年にあげようと思ってたんだけど、カカちゃんたらサエちゃんたちにばっかり付きっ切りになってたから私、拗ねちゃって。でも別のクラスになっちゃって、カカちゃんと喋る機会がなくなって、寂しくなっちゃって……これをきっかけに仲良くなれればいいな、なんて思います。すごいでしょ、ケーキ。カカちゃんこういうの嫌いだよね! 嫌がらせだよ! ちゃんと私に怒りにきてね!』

 ケーキをくれた子からは、こんなメッセージ。

『近所に住んでる農家の娘です! 夏祭りでカカちゃんのファンになっちゃいました! うちからプレゼントできるのはこのくらいしかなくて申し訳ないんですけど、もしよかったら受け取ってください!』

 トマトをくれた子からは、こんなメッセージ。

 そう、善意しかないメッセージだ。ん? 血みどろクッキーか? あれについていたメッセージには『赤いからコレ』としか書いてなかった。だから意図は不明だ。即席忍者? カップラーメンみたいなもんだ。これこそ詳細はわからん。各自想像せよ。

 ともかく、だ。これだけの善意あるプレゼントに細工してカカを怖がらせるように仕向けたのは――他ならぬサエちゃんだった。

「運動会のときと逆ですよー。“落として、上げる”です」

「わかるけどぉ……去年もそんなのやったし……でも、ここまでする必要あるのかしら」

「去年のカカちゃんの喜びよう見たでしょー? あれがもう一度見たいのー」

「ま、終わりよければ全てよし、って言うしな。最後にあの顔が見られるなら……少しくらい、悪者になってやるさ」

「うううっ! いいけどっ! サエすけ! ちゃんと細工した分は、後でカカすけに誤解ないようにバラしなさいよっ! 他人様のプレゼントをいじるなんて、本当は失礼なんだからっ!」

「わかってるよー。本人の了解もとってあるしー」

 ごめんな、カカ。誕生日ってさ、その日も大事だけど……やっぱり祝う気持ちのほうが大事だと思うんだよ。

 当日がこうだから、きっと落胆も激しいだろう。

 でも、だからこそ次は笑顔に。

 もっと笑顔に。

 ……いちいちやり口が邪悪なのがサエちゃんらしいけど。もう少し我慢な? カカ。魔法をかけるのって大変なんだよ。

 その代わり、ちゃんと心からおめでとうって、言ってやるから。
 
  
 カカ、誕生日おめでとう!!
 えー、とは言っても全然めでたくない内容なのですが。
 今のところは。

 カカには悪いですが、送られてきたプレゼントを見てサエちゃんがこんな作戦を思いついてしまったのだから仕方ないです。そう、誤解を招きそうなものばっかりくれるから!! ありがとう!! いろいろくれた皆さんに最大級の感謝を!
 いつもだったら読者さんも騙すところですが、今回はプレゼント自体が読者さんにもらったものですからね、やめました。一緒にカカを騙しましょう。

 ところで注意。
 この作戦はサエちゃんという卓越した腹黒さがあってこそ成功する可能性が高い作戦です。現実に素人がやるとただ単に嫌われてしまう可能性があるので注意しましょう。

 さらに、ちなみに。
 作中では話の都合上、細工していると言いつつ――実際にはいただいた要望を割とそのまま採用してたり……
 その発想に脱帽です。私も負けてられません。
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