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カカの天下
作:ルシカ



カカの天下50「はむはむかみかみ」


「チョコが食べたい」

「あっそ」

 夕食後、ふと思いついたように我が妹カカは言いました。そして僕、トメはめんどくさげに相槌をうちましたとさ。

「食べたいの」

「あーそう」

 繰り返し言ったカカに、またしてもだるそーに相槌をうつ。

「た、べ、た、い、な」

「あ、ら、そ、う」

 なんかゆっくり言ってきたからゆっくり言い返した。

「たーべたいな、たべたいなー♪」

「あーそうですか、そうですかー♪」

 なんか歌ってきたから歌い返してみた。

「食べてーんだってばよ」

「そうかいってばよ」

 なんかてやんでぃだからてやんでぃ返してみた。

 なんだこのやりとり。

「で、なんだ突然」

「だから食べたくなったんだってば、チョコが」

「夕食おわったばっかだろ」

「デザートという文化がありますね」

「あーそうですね、そういうお金持ちの文化がありますが、それがなにか?」

「気分だけでもお金持ちになろうよ」

「そのお金持ち気分のせいで貧乏になったら本末転倒だ」

「それでも使ってしまうのが人の常だよ」

「む……まぁ、そう、だが」

 小学生に言う言葉じゃない。またタケダ君の入れ知恵か。

 嫌い嫌いと言ってるわりには言葉は聞いてるんだな……まぁ珍しい言葉がおもしろいからだろうけど。

「で、今からチョコを買いにいけと?」

「うん。ごー!」

「お小遣いあるだろ? 自分でいけよ」

「子供に夜道歩かせる気?」

「こんなときだけ子供ぶるんか」

「私子供だもん。税金払ってないもん。胸ないもん。生えてないもん」

「生えてないとか言うな」

「じゃボーボー」

「そうじゃなくてね」

 ……いい性格してるよ、あの姉みたいに。

「てかさ……太るぞ? こんな時間に食べると」

「子供がそんなこと気にするもんじゃないよ」

 普通なら大人が子供に言うようなことを、なんでこのお子様はいつも自分で言うんだろう?

「あのね、普通の板チョコでいいの。私これから勉強するからさ、その前に頭はっきりさせておきたくて」

 む……甘いものを食べて脳の疲労をとってから勉強する、というのは僕もやっていたことだ。勉強という言葉を聞かされては教育上協力すべきではあるまいか。いや、しかし。

「食べないとできないのか?」

「できないわけじゃないけどやる気でない→頭に入らない→テスト点悪くなる→いらいらする→トメ兄かじる→ヒャッフー!」

 なんてわがままな連想ゲームだ。

「なんでかじるの」

「チョコかじりたいから代わりに」

「おまえはケモノか。あとヒャッフーってなに」

「変になるの」

 おまえはいつだって変だよ。誰かなんとかしてくれ。チョコやるから。

「じゃあ、チョコだけに甘がみならいい? はむはむと」

 想像してみた。

 甘がみって……耳とか?

 危険にもほどがある!!!

「……あー、わかったよ買ってくるよ」

「なんで顔赤いの?」

「赤くない!!」

「タコみたいだよ」

「ならタコでも食べてろっ」

「タコみたいなトメ兄を食べるの?」

「だから僕を食べるな!」

「じゃ舐める」

「兄妹でそんなことしちゃいけません!!」

 ……はっ。いかんいかん。なんか前後不覚に。

 まぁ、なんにせよ結局折れました。

 なんだかんだで妹が可愛い、いいお兄ちゃんな僕でしたとさ。



 で、買って帰ってくると。

「寝てやがる」

 可愛さ余って憎さ百倍でしたとさ。

「……結局勉強しないんかい」

 確かに九時寝るのは子供っぽいけどさ。

 とりあえず僕は無駄な行動が虚しくて、なんとなく買ってきたチョコをかじりましたとさ。

 ……甘がみで。








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