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  カカの天下 作者:ルシカ
カカの天下36「いろんなお店」
 うっかり店、INトメ&カカ。

「チキンカレーとライス、並盛りで」

「私も同じのー」

「はい、かしこまりました」

 店員さんは深々とお辞儀して去っていった。それを見送るのは僕とカカ。

 ここは商店街に最近できたカレー屋さん。カレーとライス、もしくはナンを別々に頼むところらしい。こういうお店に来るのは初めてだ。無難にライスを頼んだけど、今度はナンを頼んでみよう。

「お待たせしました」

 速くも頼んだものがきたようだ。蓋をされた皿が二つずつ、僕らの前に並べられた。

「じゃ、いただきますかー」

「たっまには、そっとで、おっしょくじー♪ カレーカレー!」

 普段は家でしょぼいものを食べさせているせいか、こういうときのカカは非常に上機嫌でヘタな歌まで自作してしまう。うん、オンチだ。僕に似たな。

「ところでカレーは枯れたら何になるんだろう」

 とりあえずゴミになると思うが。うん、変だ。姉に似たな。

 そんなことを思いながら、僕らは蓋を開けた。

「……ん?」

「これ」

 僕の前にある皿は二つともカレーだった。カカも同じく。

 つまり、僕らのテーブルには四つのカレーが並べられたわけだ。

「店員さんのミスかな」

「多分ね」

 人間のやることだ。こういう失敗もあるだろう。

「すいませーん!」

 僕らは店員さんを捕まえて、ライスがきてないことを伝えた。

 平謝りしながらも、店員さんはすぐに厨房に引き返して、お皿をもってきてくれた。

 四つのご飯を。

 つまり、僕らのテーブルには四人分のカレー&ライスが並べられた。

 僕らはしばらく沈黙してから……もう一度店員さんを呼び止めた。

「はい。追加注文ですか?」

 おまえは僕らを太らせて食う気か?

 僕らはいろいろ間違ってる旨を伝えて、余計な皿を下げてもらった。

「やん、失敗しちゃった♪」

 男性店員のこのセリフでテンションまで下げられた。

 ……しかしなんだかんだあったけど、結構おいしかった。

 そして会計。

「40000円になります」

「まてやオイ」

 どこのぼったくりカレーバーだここは。

「やん、間違えちゃった」

 すげームカつく。

「4000円になります」

「いやだから待たんかい」

 それも違うだろ四人分の値段だそれは。

「やん、おにーさんたらツッコミ上手なんだから!」

 そういうあなたは人をムカつかせるのがとても上手ですね。

「はぁ……俺、なにしてるんでしょう」

 あ、我に返った。無理やりやらされてるだけだったのか。

「バカみたいだ」

 ええ、ほんとに。

 しかしなんなんだろうねこの店は……

 とりあえず、彼の問いには答えておいてあげた。

「注文とか値段とか以前に、人として間違ったことをしてると思うよ」

 店員は泣いていた。

 


 あとから聞いた話だと、どうやらそこはドジッ子をウリにしようとしていたらしい。

 ぶっちゃけた話、普通の店の店員のドジなんか客が苛立つだけで意味がない。

 そのふざけたやり方は、お客の数が急降下してようやく店長が意味の無さに気づくまで続いたらしい。

 

 チャレンジの店、IN姉。

「いらっしゃいませー」

 結構混んでいる中で席をみつけ、あたしはどかっと座った。

 しばらくすると、皿を持った店員があたしのテーブルに寄ってくる。

 ちなみにあたしはまだ何も頼んでいない。だが、ここではこれでいいのだ。

「ショートケーキが一つ」

「残念、モンブランでした」

 がっかり、とあたしは肩を落とす。はずれだ。

 この喫茶店は、客の注文を聞かない。

 客を見た店長が勝手に作り、勝手に出すのだ。そのかわり、何を出すかを当てるとその代金はいらない、というおもしろい制度である。

 おもしろいのはいいけどあまり儲からなさそうではある。客の意見を聞かないのだから当然だろう。一部では流行っているが。

 どうやら金持ちの息子が道楽でやってるそうだ。

 あたしは結構好きだから、この店によく来る。

 一日の運試しついでに。

 でも――なぜか何が出てくるか当てたお客は一人もいないと言う。

「店長、なんであたしの考えを読めるのさ」

「勘です」

 謎だ、店長。


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