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  カカの天下 作者:ルシカ
カカの天下329「大人ということ」
「……お、なんだろあのイベント」

 こんにちは、カカです。

 今日は休日。昼間からゴロゴロしてるトメ兄に頼まれて買い物に行く途中、なんだか人がいっぱい集まっている場所を見つけました。

 あ、看板がある。なになに……成人式会場?

 ふむ……たしか大人の階段をのぼる集まりだっけ。どんな階段のぼるのか気になるなぁ。ちょっと突撃してみよう。

 おー、人がすごいいっぱいいる! しかもみんな綺麗な格好してるなぁ。こないだお母さんに着せてもらったみたいなやつだ。振袖だったっけ。それにしてもなんで女の人はみんな髪の毛がボンバーなんだろ。噴水みたいな髪の毛もあるなぁ。うーん、おもしろい。ところで階段はどこだろう。

「ねね、そこの人」

「うん? なんだいお嬢ちゃん」

 わからないので聞いてみることにした。

「お兄さんはもう大人の階段のぼったの?」

「へぇ!? ぁ、いや、ま、まだ」

「なーんだ」

 がっくり、ってあれ。なんで聞いてみたお兄さんのほうがガッカリしてるの?

「うぅ……どうせ僕はフラレ虫さ、20歳になるまでに35回連続でフラレた男さ」

「ははは! おいタクヤ、凹むな。きっといいことあるさ!」

「そうよ! 35回も彼女はできたんだから! 階段はのぼれなかったけど」

「35回も踏み外すなんてなかなかできないぞ!」

「35回もいちいち数えるのもなかなかできないわね」

「うあああああん!!」 

 なんだかよくわからないけど皆さん仲良し団体みたいだね。

「ねーねー、皆さんって大人なの?」

「おう! 成人式を迎えたからには大人だな!」

「へー。じゃあこのお兄さん以外は階段のぼっちゃったのか」

「えっと……お嬢ちゃんがどういう意味で言ってるかわからないが、その言葉はあんまり使わないほうがいいぞ。その言葉にはいろんな意味があるからな」

 む? そなのか。

「とにかく、お兄さんたちは大人になったんだよね?」

「そうだ!」

「へー、へー! 具体的にはどう大人になったの?」

「えっと、お酒が飲めるとか!」

「じゃあ今までは飲んだことなかったんだ」

「そ、そういうわけじゃ……仕事の付き合いとかで、ちょーっと」

「む? んじゃ変わってないじゃん。他は何が違うの?」

「えーっと、そうだ! 年金を払ったり、住民税を払ったりとか……」

「お金払うようになっただけなの?」

「「ガーン!!」」

 あれ、なにやらショックを受けてる皆さん。

「お、俺たち、本当に大人になったのか?」

「いや、そんなこと言われても……でも、今日を迎えて何が変わったかって言われると……思い浮かばないな」

「むううう……あ! デストロイヤー教頭だ!」

「え!?」

 おぉ? 本当だ。名前を呼んだのが聞こえたのか、こちらに向かってくる。

「やぁ、君たち。何年ぶりだろう」

「お、俺らのこと覚えてくれてましたか!?」

「教え子を忘れるわけがなかろう……おや、君は」

「ど、どもー」

「なぜここに――」

「教頭先生! 俺たち、聞きたいことがあるんです!」

 ナイスさえぎり。なぜここに来たかと言われても「ノリで」としか答えようがなかったからね。

「昨日と今日の僕らは本当に違うんでしょうか? 僕らは、本当に大人になったんでしょうか!?」

 わりと切羽詰ったその質問に、教頭はわりとあっさり答えた。

「んなわけなかろう」

「がああああああん!!!」

 若者の希望をデストロイ。

「そ、そんな!」

「じゃあこんな日なんか意味ないじゃないか!」

「そうだ! 成人式だの成人の日だの、意味ないじゃないかぁ!!」

 嘆き、悲しみに暮れる若者たち。あわれ。

 しかしそんな彼らに――デストロイヤー教頭は厳かに口を開く。

「それは早計だぞ。意味があるか無いかは、人によるのだから」

「……え?」

「成人式。その日は一般的には若者が大人と認められる節目の日である。建前はな」

 出るか、建前デストロイ!

「実際は単なる休日。若者に騒ぐ口実を与える日でしかないのが現状だ。今では先達の助言を真剣に聞く若者も少ないからな。だが――その騒ぐだけの日を意味あるものにはできる」

 力ある声に惹かれたのか、周囲で騒いでいたグループも静まって教頭の話に耳を傾ける。

「久々に会う同級生と友情を深め直すもよし、これを機に新たな友好関係を築くもよし、成長した友から何かを学ぶもよし、世話になった教師や親御さんに礼を言うもよし……また、酒を飲み騒ぎ楽しむだけでもよし。その日を意味あるものにするかどうかは君ら次第ということだ」

「意味ある、ものに」

「そうだ。大人などという曖昧なものに「なれた」などという節目など、実際はない。だが、この日を意味あるものにし、自身が理想とする大人に近づくことはできる。しかし覚えておくがいい。世間的に大人と認められようが認められまいが、君らは君らでしかないのだ。日々精進し、成長すべきなのである」

 教頭先生のお話は難しくて、正直よくわからない。でも、なんか、みんな真剣に聞いてる。

「ふむ、少し厳しいことを言ったな。だが――あえて、世間的に大人と呼ばれるまで成長した君らに、おめでとうと言わせてもらおう。先達としてできるのはそれくらいだからな。今日を――いや、日々を意味あるものにするのかどうか、それは君ら自身で考えるといい。少なくとも――それができるのが大人というものだろう?」

「「……はい!!」」

 おー、なんかいい話だったのかな? 皆やたらと元気になっちゃった。

「よし……ところでカカ君」

「は、はい!?」 

 お、怒られるのかな。

「君は私の言ったことがわかったかね?」

「よーわかりまへん」

「はっはっは、そうかそうか。つい説教くさくなってしまうのは昔からのクセでね。そう、今の若人たちがあの小学校にいたころからの、ね」

「そのころからデストロイヤーだったんですね」

「そう呼ばれていたな。結構気に入っておる」

「似合ってますよ。ところで今のお話、もしかしてこういうことかなーってのはあるんですけど」

「ほう、なんだね?」

「毎日を大切にしなさい、ってことじゃないの?」

「……君は、なかなか頭がいいようだ」

「正解?」

「ああ。君は毎日――聞くまでもないか」

「うん、楽しいよ!」

「それはよかった」

 うんうん、私も追い出されなくてよかった! いまのうちにこっそり抜け出そ。

 それにしても……あんな難しいお話じゃないと納得しないなんて、大人って面倒くさいね。毎日を大切に。それだけで済む話なのになぁ。
 成人の日、ということで成人式のお話なんか書いてみました。コメディ要素は少ないですが、教頭がどうしても喋りたがったもんで^^;成人式は昨日だった、とかいうツッコミはなしにしてください。昨日書けばよかったなぁって書いた内容見てから後悔しましたが……
 でも、意味あるものにすべきなのは昨日だけじゃないと思います。きっかけさえあればどれだけでも日々は意味づくものだと思うので……どうか、皆さんが毎日楽しく過ごせますように^^
 あと、成人を迎えた方がいらっしゃいましたら、私のほうからもおめでとうと言わせていただきます。すばらしい大人になれますよう、願っております!
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