7話−記憶の君
ひたすら何もない空間を歩く俺達。
まだ着かないのか沙優ちゃんに問おうとした瞬間、視界が開けた。
眩しさに俺は目を細める。
だんだん慣れて、ここが病室だとわかった。
「………ここは?」
何となく見覚えのあるこの部屋。
無言で沙優ちゃんは指を差す。
その先にいたのは、
「………母さん。」
同室の人と談笑してる母さん。
ここ、母さんのいる病院だ。
…ああ、元気そうだ。
「これは、夢の中の記憶なのです。」
「記憶?」
沙優ちゃんはコクリと頷く。
「恭也のお母さんの今日の記憶なのです。だから、本当は会わせてあげられたワケじゃないです。ごめんなさい。」
申し訳なさそうに謝る沙優ちゃん。
確かに沙優ちゃんは俺を母さんと会わせてやると言ったけど、
「謝らないでよ。」
謝る必要なんてない。
「元気ってわかって安心したし、感謝してる。」
ポンと沙優ちゃんの頭に手を乗せれば、沙優ちゃんは安心したように笑った。
次の瞬間、
─ピシッ!
何かが割れる音がした。
焦ったような沙優ちゃんの表情を見て、俺はただ事じゃないことを悟る。
狐も毛を逆立たせて低く唸った。
「恭也!早く逃げましょう!」
「これどうなって…っ!」
さっきの音を切っ掛けに、どんどんガラスが割れるみたいに目の前が壊れてく。
「空間が壊れかけてるです!早くしないと帰れなくなる!」
沙優ちゃんに腕を引かれ、走り出す。
咄嗟に俺は後ろを振り返った。
完全に向こう側は壊れていて、白い空間に二人の人間がポツリと佇んでいる。
よく目を凝らせば、それは若い頃の母さんで、泣いていた。
向かいに立つ男は母さんに何か怒声を浴びせていて、母さんはソレに泣きながらも言い返している。
………あの男は、
「……父、さん?」
いつの間にか、最初に訪れた神社に戻っていた。
「危ない所だったです。」
沙優ちゃんがホッと息をつく。
「どうしてあんなことに?」
「多分、恭也のお母さんは起きかけてたです。だから夢が壊れたのです。」
……そうなんだ。
本当に危なかったんだな。
ご苦労様と狐の頭を撫でる沙優ちゃんを見てて、俺はフと疑問に思っていたことを口にした。
「……君は、沙優ちゃんなんだよね?」
沙優ちゃんは、狐に向けていた視線を俺に向ける。
「サユはサユなのです。」
…それは、答えになってるのだろうか。
「俺が起きた時に会う沙優ちゃんと君は、同じ?」
「恭也はどう思うですか?」
質問を質問で返された。
「…どうって……。」
わからないから聞いてるのに…。
「恭也が同じだと思うなら、そうかもなのです。」
「え?」
「恭也が思った通りにするといいです。」
ニッコリ笑う沙優ちゃん。
…………あ、れ?
何で、意識が……。
急に遠退く意識。
最後に見たのは手を振る沙優ちゃん。
「バイバイ、なのです。」
そこで記憶は途切れた。
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