5話−ユメの中
気が付いた時、俺は神社へと続く階段の前に立っていた。
…夢だ。
すぐにわかった。
周りを見回しても、誰もいない。
ただ、田んぼが広がるだけだ。
そして気付いた。
…音がする。
ボールか何かをつくような音だ。
この音は…神社から?
音に誘われるように、俺は神社の階段をのぼる。
やがて、俺は階段をのぼりきった。
すると、さっきまでしていた音は聞こえなくなっている。
そのかわり、俺の目の前には鞠を持った沙優ちゃんが立っていた。
そして、その隣には銀色の毛のボルゾイくらいの大きさの狐が座っている。
「本当に来た」
俺を見て、沙優ちゃんは嬉しそうにそう呟き、狐の頭を撫でた。
そして、俺に近付いて来る。
沙優ちゃんが俺の手をとった。
「行くですよ」
俺は、沙優ちゃんに手を引っ張られる。
咄嗟に、その手を振りほどいた。
「これは、何なの?俺の夢?それとも…」
「“イナリ"にお願いしたのです。サユはこんなこと出来ないから…」
俺にはなされた手を、少し悲しそうに沙優ちゃんは見つめる。
でも、すぐもとの笑顔に戻った。
「恭也は、ずっとお母さんのこと心配してるです」
「え?」
突然の沙優ちゃんの言葉に、俺は動揺する。
「お母さんに、逢いたくないですか?」
沙優ちゃんが、鞠を空高く投げた。
自然と俺はそれを目で追った。
そのまま、鞠は真下に落下する。
そこに、沙優ちゃんはいなかった。
「恭也がそれを望むなら、サユはその願いを叶えるです」
俺は、沙優ちゃんの声を追って、うしろを振り返る。
そこには、真っ暗な闇が広がっていた。
俺は、俺の意思に関係なく歩いていた。
|