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赤い花の咲く空の下
作:霜月伊麻里



2話−墓地での出会い


「歯ブラシでこするとよいのですよ」

後ろから女の子の声がした。

本気でビックリして、背筋が思いっきり伸びる。

振り返ると、じいちゃんの墓の向かいの、その隣の墓に女の子がいた。

女の子は、墓と墓とを区切る石の上に座っている。

俺と目が合うと、その子はニッコリと笑いかけてきた。

俺もその笑顔につられて笑い返す。

その無邪気そうな笑顔を向けられれば、多分みんな思わず笑い返すと思う。

見た目が可愛いっていうのもあるかもしれないけど、女の子はどこか不思議な雰囲気をまとっていた。

風になびく、少し茶色がかった長い髪が、それを引き立てている。

「かまわず、お掃除を続けてくださいなのです。歯ブラシは、桶のあったところにあったですよ」

小学校の中学年くらいだと思う。女の子は少しへんな敬語で話しかけてきた。

「あ…うん、有り難う」

俺はそう言うと、女の子から逃げるように、小走りで歯ブラシをとりに行く。

あの子、いつからいたんだ…?

走りながら俺は考える。

全然気が付かなかったな。

桶があった小屋に、少し汚れてはいたけど、歯ブラシはちゃんとあった。

歯ブラシを持って、俺は墓へ向かう。

女の子はまだいた。

「……」

何か声をかけようと思ったけど、やめた。

どうにも見知らぬ年下の子供と話すのは、気恥ずかしい。

俺は、体を墓に向ける。とりあえず、今は墓を掃除しなきゃ。

今度は字の汚れが落ちてきている。

5分もしないうちに、歯ブラシの毛は緑と黒が混ざったような色になった。

これくらいでいいかな…。

俺は桶の水をかけて、最後の汚れを流した。

「ピカピカのツルツルです」

振り返ると、女の子は俺を見てニコリと笑った。

桶を持って俺は近づく。

「ずっとそこにいるけど、もしかして迷子?」

少しかがんで、俺は女の子と目をあわした。

多分、地元の子じゃないだろう。

勝手な想像からの言葉だ。

女の子はキョトンとしている。

「迷子じゃないのです」

予想は外れたか…。

「ただ、みんなとはぐれてしまっただけなのです」

女の子は、少しうつむいてそう言った。

それは…―

「それは迷っ」

「違うのです」

迷ったって事じゃないかな?

俺はそう言おうとして遮られてしまった。

女の子は座っていた石から降りた。

「迷ってなんかいないのです」

俺の横を、女の子がすり抜ける。

女の子は、パッと両手を広げた。

「ここが目的地なのです」

そうか、墓参りに来たのか…。

俺は女の子のいた墓を見る。

「朝田家ノ墓」と彫られた墓。

今日は、お盆だか…―

女の子に視線を移した瞬間、俺の思考は一瞬停止した。

女の子は音もたてずに倒れていた。

少したって、俺の思考は回復する。

「!?」

女の子に慌てて近づいて、俺は女の子を揺する。

「どうした!?具合悪いのか!?」

一瞬、女の子の冷たい腕に俺はビクッとした。

でも、そのわりに顔は熱く、ほてっている。

女の子は、苦しそうに目を閉じていた。

意識は…ない。

「…っ」

考えもなしに、俺は女の子を背負った。

いつからあそこにいたかは分からないけど、多分脱水症状か日射病だ。

そうじゃなくっても、ここじゃ何も出来ない。

俺は桶やら何やらを適当に片して、墓地を出た。

嫌なニュースが蘇る。

体育館や校庭で子供が死んだニュース。

俺は思いっきり走る。


まだ、二人の名前出てきてないですね…。ダイジョウブです!3話で出る予定です。











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