春夏秋冬予告編縦書き表示RDF


短編ですがこれは完璧に長編物です。それの本当に冒頭の部分。えぇ、プロローグの部分しか書いていません。もし人気があったら続きを書こうと思います。
もし、続きが見たいようなら作者に言ってくださいねぇ。
『書けごらぁあぁっ!!!!』
って。そしたら作者は泣きながら馬車馬のように働きます。
春夏秋冬予告編
作:東堂要


『全てを忘れて、一人で生きなさい。誰かと寄り添ってもそれは虚しいだけだから』



それが、全ての役目を終えた両親の最期の言葉だった。



「あぁ〜重いなぁ」
腕に大量の荷物を持った少女が溜め息を吐きながらその荷物を持ち直す。
髪は濡れた烏の羽の様に艶を持っており、瞳はその頭上に広がる大空に勝るとも劣らぬ澄んだ空色をしている。
見れば愛らしい顔立ちに、その瞳は見る者を取り込みそうだが、少女には何処か人を寄せ付けないそんな雰囲気が漂っていた。
その雰囲気を察してか、誰も少女の方を見ようとはしない。
まぁ、この小さな村で少女を見るような男などいないのだが。
「ん〜買い忘れは無いよな」
若干少年の様な物言いは低くは無いが、されど高くも無い。何処か包み込む様な不思議な声だった。
そして、少女は家路に着くために歩き出した。
(此処は喉かな村だ)
そう、少女は本心から想う。
(騒がしくはないし、空気は綺麗だし、緑はあるし………それに、積極的に人に関らなくていいし)
その瞳が一瞬だけ哀しみの色を帯びた。少女の頭の中に両親が最期に言った言葉が反響する。

『一人で生きなさい。誰かと寄り添ってもそれは虚しいだけだから』

と。その言葉に従って少女は今まで生きてきた。
今日のように買出しをしない日はいつも家の中に閉じこもって生きてきた。出来るだけ、人との関係を持たない様にである。
両親の教えは今でも覚えている。だが、その声はどんなものだったのかは思い出せない。どんな人だったのかも、そして、どんな顔なのかも。
(薄情なのかなぁ?)
自分が思い出せない両親を少しだけ憐れんでみる。
(まぁ、忘れろって言ったのはあの人だし)
そう、自分に言い聞かせて少女は歩みを進める。
村の中央に差し掛かった所で、少女はあるモノを見つける。

「お尋ね者? ふぁ〜はじめて見た。何した人なんだろう?」

村の中央広場の様な所に立ててある立て看板を見て少女は足を止めた。
「………罪状リンダキョウ領主、アシルバニア卿宅にて全ての財産を奪いし者。見た者はすぐさま役場まで報告に来るべし………賞金3800万Mミーリア
そこまで読んで、説明書の上にある人相書きを見てみる。
「うっわ、人相悪。そのうち人でも殺しそうじゃん」
人相書きを見ての正直な感想である。そこに描かれていたのは三人の男だ。
取り合えず目付きが悪い。そして、その特徴が隅に小さく書かれている。
「えっと、クージ=リトウヴェルト。シンカ=カイナスツ。リョウ=キルスキ」
それが男達の名前であるらしい。
「ん〜でも、リンダキョウって此処から結構遠いよなぁ。なんでこんな年寄りしかいないような辺境の地に………」
う〜ん。と小さく呻き声を上げながら、少女は考える。しかし、行き着いた結論は

「まぁ、関係ないか」

適当なものだった。
もう、そろそろ帰ろうかと思い、歩みを進めようと思った時、
「お嬢さん。お名前なんてーの?」
間の抜けた声が後ろから掛けられた。
少女は辺りに誰もいないので、自分が声を掛けられたのかと思い、後ろを振り返る。
そこには一人の男がいた。
髪は少女とは一味違う黒色の髪で少し赤味がかっていて、瞳がライトグリーンの黒いローブを羽織っている男だ。
少女は不思議に思い自分の顔を指差して『私の事ですか?』とジェスチャーで聞いてみる。すると、男はうんうんと頷いて肯定の仕草をする。
「そうそう、そこの麗しきお嬢さん。お名前を尋ねてもいいでしょうか?」
低く、少しだけ渋みのある声が広場に響く。とは、言ってもそんなに大きな声でもないのだが、その声の性質のためであろう響いて聞こえてしまう。
「えっと………ソラです。ソラ=メサイア」
少々戸惑いを受けながらも、それでも少女は何とか答える。
その少女の声に感動したのか男は悦びの声を上げながら自己紹介をする。
「いい声です。あぁ、姿が麗しき人はその声も麗しいのか………。失礼、俺の名前はリョウ=キルスキと言うしがない黒魔術師です」
恭しくお辞儀をしてソラの手を取る。そして、更に続ける。
「ソラと言うお名前ですか? 美しい名前だ。しかし、貴女のその美貌の前ではこの頭上に広がる広大な空すら酷く矮小なものに見えてしまう」
リョウと、名乗る青年の言葉にソラはただ、困った様な乾いた笑いを浮かべるだけで精一杯だった。しかし、ここで、ソラはある事に気付く。
「……リョウ?」
「そうです。リョウです」
ソラに名前を呼ばれたのが酷く嬉しかったのか、リョウは嬉しそうに返事をする。そこで少女はある事を思い出しリョウの手を引っ張って先程来た道を引き返していく。
「ど、どうしたんですか?」
「ちょっと付き合ってください」
「つ、付き合うって……積極的ですがなにぶん旅をしなければならないもので。誠に残念ですが一晩の付き合いになって…………」
リョウの言葉など全くソラには届いていない。
そして、ソラはリョウを引っ張ってあの立て看板にたどり着いた。
「………えと、お名前は?」
「リョウ=キルスキですが?」
その名前を聞いて一つの人相書きに辿り着く。
「………赤味がかった黒色の髪、そして、ライトグリーンの珍しい瞳。黒のローブを纏っている。身長は180以上あり、長身である」
そこまで、読んでその人相書きと目の前の男を見てみる。特徴はあっている、しかし、人相書きは決して似ているとは言えず少女は困惑する。だが、名前は同姓同名だ。
「どうしました? その立て看板を見て――」
何を見ているのか不思議に思った青年の言葉は、そこで途切れた。
「やべっ……この村もかよ。勘弁してくれよ〜」
「あの、やべって事はやっぱり――」

「いたぞぉーー!!」

今度はソラの言葉が途切れる時だった。それは違う街の役場の様な場所から来た人達であろう。多分、リョウを捕まえに来たのだ。
「ちっ、『ハンター』の野郎共やけに手回しがいいじゃねえか」
舌打ちをしながらリョウはソラの荷物とソラを小脇に抱えて走り出す。
「ちょっ……えぇっ!!!?」
状況を理解できていないソラは困惑した声を出す。
「悪い。ちょっとだけ人質な? まぁ、あいつ等を撒いてアンタの家に着いたら解放してやるから」
「言葉遣いが変わってます。それにその言葉だと家に上がり込むつもりですかっ!!?」
「大丈夫だっ!!」
「何の根拠でですかぁーーっ!!」
ソラの声が虚しく辺りに響き渡った。
それでも、リョウは走るのをやめない。時々後ろを振り返りながら追手との距離を確認している。
「ちっ、やっぱ人を抱えながらだと走りにくい」
「じゃぁ、降ろしてください」
「それは無理だな」
「何でですかぁっ!!!」
本日の二度目の虚しい叫び声だ。しかし、リョウは悪びれた様子一つ見せす、後ろを見る。
「“サラマンダーの加護を一身に受けし邪悪なる聖火よ。我前に立ちはだかりし者に裁きを”」
ぶつぶつと唱えた後、リョウは追手を睨みつける。
すると、何処からとも無く現れた炎の球が男達に向かって飛んでいく。
「俺とソラちゃんの愛の逃避行を邪魔すんなぁぁーーっ!!」
「とうひこう?」
「知らんのかいっ!!」
追手が走って来ないのを見て、リョウはソラから聞いた家の方角に走っていく。そのスピードの速い事速い事。
「おぉ、凄い」
「はははっ、そうだろ? 黒魔術師だが体力には自信がある」
「くろまじゅつって、なに?」
「…………マジか? おい」
「はい」
なにか問題でも? と聞きたげな表情のソラを見て、リョウは溜め息を吐いた。
「家に着いたら教えてやるよ。世間知らず」
「はい。お願いします」
リョウが言った『世間知らず』と言うワードにもソラは反応を見せなかった。それがリョウの不安を更に煽らせた。再度リョウは溜め息を吐く。
「あっ、着きましたよ」
リョウが考え込んでいるとソラの声で現実に引き戻される。
「ここ……か?」
その家を見てリョウは唖然とした。でかくは無いが、小さくも無い。ただ、リョウがビックリしたのはその家の周囲だ。
どう考えても手入れをしていない。草が生えまくりだ。
「………庭の手入れでもしたらどうなんだ?」
「ははっ、親がいた時は綺麗だったんだけど、今は一人だから」
そう言って恥かしそうにソラは笑う。
その会話からソラの両親は死んだのだろうとリョウは察した。
「あぁー、もしかして地雷踏んだか? 悪かったな」
「気にしなくていいぞ。もう、慣れた」
そう言って、ソラはリョウに家に入るように促す。
家の中は本が無駄に多かった。部屋数は多くは無いがその本の多さにリョウは唖然とした。
「この本全部お前の?」
「はい。暇ですから」
(なぜ、こんなに本を読んで世間知らずが育つんだ?)
リョウの中に疑問が浮かんでくる。その疑問は最初は小さいものだったがやがて大きくなっていった。
そこで、リョウはその本棚の物を見ていく。
「『古代チチュリブヌ王国について』、『世界の歴史と王国間の連携について』、『世界の地理と情勢の移り変わり』……………」
(あぁ、背表紙だけで眩暈が起こってきた)
この家の本棚は絶対に覗くまいとリョウは心に決めた。
そして、その視線をソラに向ける。
「こんなのの何処が面白いんだ?」
「面白いですよ。私は家から出ることが殆んど無いから」
とソラは困った様な表情を作る。しかし、すぐにその表情は一変する。
「それより、くろまじゅつ。くろまじゅつ」
先程の哀しげな表情が何を意味しているのかをリョウには全く分からなかったがソラに急かされて黒魔術を使う羽目になる。
「黒魔術かぁ。つーか、お前どんなのか知ってるのか?」
「本では見た事があります。なんでも錬金術同様に眉唾物と考えられてきたとか」
「あぁー、そんなマイナーな知識はいらん。詳しすぎる」
そう言って、リョウは頭を掻きながらソラがどんな知識を持っているのかを考え込む。
(お嬢様っぽい世間知らずって言うか知識が偏りまくって常識がなってねぇ変人だな)
こうして、リョウの中でソラの位置付けが決まる。しかし、失礼だ。失礼にも程がある。
「まぁ魔術にも二種類あるわけよ? それが黒魔術に白魔術。簡単に言えば攻撃とサポートだな。これには魔力って言う精神エネルギー? っぽいのを使うんだがその質によって使える魔術の系統が決まるんだ。大抵の奴はどっちかは使えるし、たまに両方使える奴もいる。逆に言えば両方使えない奴もいるがな」
その言葉にうんうんと頷いている。どうやら本を読んでいるのは伊達じゃないらしく、一度聞いただけで理解してしまうらしい。
「そんで、さっき使ったので分かると思うけど、俺は攻撃専門の魔術師なんだ。だから白魔法は使えない」
そう言って、ボソボソとリョウは何かを呟く。すると、一時の間をおいてリョウの指先から炎が燃え上がる。
「おぉー」
その炎を見てソラは歓喜の声を上げる。それを見て、本当にこいつ魔術の事知らねえんだ。とかリョウは思っている。
「これ位で騒ぐな。この炎は大きさを変える事が出来る。今は小さい炎だけど俺が魔力を込めれば簡単にこの家を焼き尽くすぐらいに」
そう言ってリョウはその指先に灯った炎を吹き消す。
「で、魔力ってのがガソリンなんだけど、それを燃やす為には発火装置が必要なんだ。ガソリンだけじゃ火は付かないだろ? だから、その火を着ける為に詠唱が必要なんだ」
「……はっかそうち?」
「………火を着けるための道具だ。ほら、そこにあるマッチみたいな」
なぜだろう、説明するたびにリョウが段々とやつれて行っているのが分かってくる。しかも、色々と話が脱線していく。
(保育園の保母さん。俺は味方です)
涙を流しながら日頃苦労しているであろう保母さん(此処が重要。保育士ではない)に激励を送りたい気分にリョウはなったとかならなかったとか。
「マッチが詠唱? か」
「あぁー、そんなものと言う意味だ。んで、詠唱って言うのを使って神様や精霊から力を貰い形が無い魔力に形を与えるんだ」
「ほうほう。アレですね。お菓子の型が詠唱で生地が魔力ですか………で、それを刳り抜いて焼いた完成品が魔法と」
「うん。それ」
溜め息を吐きながら頷き返すと嬉しそうにソラは笑うのでまぁ、いっかとかリョウは考える。
「………あいつらどうしてるかなぁ」
暫し天井を見上げていたリョウは何かを思い出すように小さく呟いた。
「あいつら?」
「あぁ、俺の仲間だよ」
誰だろう?と思いながらソラが訊ねると、それは仲間だという答えが返ってくる。
(仲間……旅のかな? 外ってどんな所だろう?)
不意にそう考えて、リョウの仲間を心配している顔を見ていると自分とは違う人間なんだという思いがソラの中で強くなる。
『彼は明日になればすぐに出て行くのだ』
と。なぜか、急に淋しくなってくる。
「俺さ、他の二人……まぁ、あわせて三人で旅してきたんだ。そんな中でな無駄に正義感強い馬鹿がいてさ、ちみっさい癖に腕っ節が強ぇんだ。そいつとある街に行ったらその街は寂れてる訳。どうしたんだろうなぁと思ったら、住民の財産を領主が奪って行ったんだと」
唐突にリョウが語りだす。どうしたんだろうと思いソラは耳を傾けるがそれが指名手配になった原因の話だと気付く。
「そしたらその馬鹿なんて言ったと思う? 『俺がすぐさま盗り返す。行くぞ二人とも』ってさ。まぁ、一人で突っ走るのはいいんだけどさぁ、俺とアイツを巻き込むのはどうか勘弁してくれと思うわけ。ソラもそう思うだろう?」
「………私には分かりません。人と接する事もなかったし、外の世界の事も知らない。私が知っているのはこの家と、そして本の中の世界だけ」
唐突に話を振られたソラは何かを考え込むように黙した後に口を開く。
「でも、外を知らず、リョウさんの仲間がどんな人か良く知らないけどこれだけは言える」
空色の瞳とライトグリーンの瞳が真正面からかち合う。暫らくした後、空色の瞳がふっと緩んでいく。

「仲間を大切に思っているんでしょう?」

ソラの口元が見る見る内に緩んでいく。まるで愛らしい物を見たかのようだ。その言葉を聞いてリョウは顔が真っ赤になっていく。
「んなっ!?」
「仲間の話をしていた時、不満だらけの口調でしたけど口元が緩んでいますよ」
その言葉を聞いて本当かと思いリョウはすぐに口元に手をやる。そんなリョウの仕草を笑みを浮かべながらソラは口を開く。

「外の世界は……どんな所ですか?」

その事を言ってしまった後にソラはしまったと思い自分の口を塞ぐ。どうやら無意識の内に出て来てしまった言葉のようだ。その行動を不思議に思いながらもリョウは考える。外の世界とは………
「ん〜外の世界ねぇ。なんて言えば良いのかなぁ? まぁ、ソラには悪いけどあんま良い所じゃないよ?」
そう言って、更にリョウは続ける。
「何てったって外には魔物がいるし、人間は人間で同族と争いあう。その癖病ではコロッと死んじまう。時々は人を金のために使うような奴等もいる。どちらかと言うとこんな風に家の中にいる方が何倍もましだ」
その言葉を聞くうちに段々とソラは外に行く気がしなくなってきた。あまり外には出たくないという気が大きくなっていった。

「でもな。そんな世界じゃないと見つからねぇモンがあるんだ」

「……見つからない物?」
「あぁ、それはな――」
とめられた言葉の続きが気になりソラはごくりと唾を飲み込む。………そこまで、重い雰囲気は流れていないだろうに。
「お前も言っただろ? 俺が見つけたのは大切な絆だ」
何気に恥ずかしい事を言っているが、しかし言った本人は恥かしさ等微塵も見せない。そこがその言葉が本心からの言葉なのだと逆にソラに伝わってくる。
「大切な物を………見つけたんですね」
「あぁ、見つけたよ」
今頃来た恥かしさにリョウは笑って見せる。それを見て更に外への関心がソラは大きくなっていく。
「ソラはいつもなにしてんの? ずっと引きこもり生活?」
その言葉にソラは少しだけ狼狽する。しかし、その事を悟られまいと懸命に押し隠す。
「えーと、まぁ、そうだね。今日みたいに買出しに出てくる以外は全くと言って良いほど外には出ない。…………関らないようにしているんだ」
(自分の運命を本能で悟っているから)
瞳には哀しい色合いが出ているが、それにリョウは気付く様子が無い。
「なんで?」
「んー、なんて言うのかなぁ? 詳しくは私も言えないんだけど、どうしても両親の最期の言葉が離れないんだよねぇ」
「最期の言葉?」
「うん。『一人で生きなさい。誰かと寄り添ってもそれは虚しいだけだから』ってい言う言葉。なんかさ、その言葉が未来さきを表してるみたいで………」
(きっと、それだけが理由じゃない。私の中の何かがそう告げている。このまま、無関心でいろと)
その言葉にリョウは何かを考え込むような雰囲気を醸し出している。その雰囲気を察してかソラは口を開く。
「リョウさん。いつの間にかすっかり夜になってますよ? 話し込み過ぎました。リョウさんは明日は早いんでしょう? ならもう寝た方がいいですよ?」
「あぁーそうだな」
なぜ、そんな頑なに両親の言葉を守っているのかをリョウは考えたが、全く答えは出ず、もう寝るためにベットへと向かった。
ベットが一つしかないため(そのため壮絶なベットの譲り合い合戦が起こったが、あえて省略)同じベットで寝ているがリョウには珍しく全く手を出す気にはならないらしい。
(なんでー? 美人と同じベットの中。男だったらやるしかないでしょー)
リョウは珍しい自分の一面に少しだけ戸惑った。しかし、横からは全く無防備な寝息が聞こえてくる。
(あぁ、アレだ。気に入りすぎて逆に手が出せなくなるパターンだ。あの幼馴染とか………)
そこまで考えているうちに、リョウはいつの間にか眠りに就いた。





翌朝、朝の日差しがこれでもかと言うほどにガラスがはめ込まれていない窓辺から入り込む。なにかいい匂いに誘われてリョウは眼を覚ました。
横には誰もいないので多分ソラが作っているのだろうと思い、リョウは欠伸をしながらその部屋へと向かった。
「おはようございます。昨日は良く眠れた?」
「ん。まぁ眠れた。草の上より大分ましだ」
本音を混じえながらリョウは口を開く。その本音の部分が何処とは言わないが。
「ん〜、朝のいい匂い。いいなぁ、結婚した人は毎日こういう気分なのかぁ」
半ば本音交じりの言葉を言いながらリョウは並べられた料理に箸をつけた。
そこに並んでいるのは、絶品とは言い難いが普通に美味しい物だった。一人暮らしをするだけの事はある。外の物凄い惨状に比べたらこの家の中も綺麗な物である。
(ん〜。絶対いい嫁さんになるなぁ。こいつは)
そう思いながら、リョウは料理を口に運んだ。それを、ソラは淋しげな眼で見つめていた。




「んじゃぁ、今までありがとうな。世話んなった」
「こっちこそ。外の話し面白かったですよ」
それぞれが別れの言葉を口にする。ここは村の入り口。もうすぐリョウは出て行くのだ。そう思うと少しだけ哀しく、そして引き止めたくなるものだが、彼には仲間がいるのだ。と言う思いがソラを何とか引き止めている。
「またいつか……な」
「はい。また……ですね」
それが、最後の言葉。そして、このままだと最期の。それはソラだけが知っている真実。そう、ソラの本能が告げている。
ソラはただ、笑おうとしている。しかし、それがソラには出来ず、どうしても哀しい顔になってしまう。
「ソラ………あのさ」
「はい?」
一時の沈黙の後にリョウはソラを抱えて何も言わずに走り出す。
「あれっ? なんでぇぇぇえっ!!?」
「黙れっ。俺が無事に仲間の所に着くまでの人質じゃいっ!!!!」
ビュンビュンと周りの風景が後ろに流されていく。
「それに」
そこで、リョウは先程までのふざけた顔をやめて真剣な顔になる。

「外が見たいんだろ?」

その言葉に一瞬呆然となった後、ソラは笑顔で頷き返す。それを見た後満足げにリョウは走っていく。だが、リョウは気付いていた。その笑顔になるまでの間の哀しそうな表情を。それが、リョウの心に引っ掛かっていた。そして、ソラの両親が残した言葉。


『全てを忘れて、一人で生きなさい。誰かと寄り添ってもそれは虚しいだけだから』


その全ての謎が解けるのは、それはソラとリョウ達が運命に翻弄されて、最後に行き着く絶望の時だった。
でも、まだ彼等はその真実までは程遠い。せめて絶望の時までは仮初の笑顔を………。



〜春夏秋冬予告編 終 〜



〜その後の小話〜

ソ−そう言えば、幾つなの? 年上っぽいけど。
リ−ん? 17だよ。お前はどう見ても16かそこらだろ。
ソ−………20です。
リ−年上っ!!!?? しかも3つもっ!!? ありえねぇ〜。童顔すぎるだろう。
ソ−………別に気にしてません。













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