さて、ここからだ。
俺は人知れず馬車の中で気合を入れなおす。
ルイズは……おーおーおー、カチコチだな。
フン、フン、って鼻息が荒いのなんの。
入れ込みすぎかな?でもしょうがないか。
フーケ、おっとミス・ロングビルだっけ、今は。
彼女が御者を勤める馬車というか荷車には俺とルイズ、キュルケにタバサが乗っていた。
ヒマを持て余したキュルケが、ミス・ロングビルに根掘り葉掘り質問をしている。
それから、それを咎めたルイズと口喧嘩を始めた。
ほんと、仲悪いよなあ……
まあ、ルイズの緊張が解けるならそれでもいいか。
「まったく、あんたがカッコ付けたお陰でとばっちりよ。」
「別に頼んだおぼえはないわよ!」
「あんた1人じゃサイトが危険じゃないの。ねえ、ゼロのルイズ。」
キュルケがフフン、と笑みを浮かべる。
ルイズ、押さえて。うん、そうそう、暴発してもいいこと無いぞ。
偉いぞルイズ。
「どうしてそう思うのよ?」
「いざ、あの大きなゴーレムが出てきたら、貴女は逃げだして後ろから見ているだけでしょう?サイト1人に戦わせて。」
「だれが逃げるもんですか!私の魔法であんな奴やっつけてやるわ!」
「魔法?あなたが?笑わせないで!」
ああ、ハラハラする。
すぐそこにフーケが居るってのに、ルイズが余計な事を口にしなきゃいいけど。
タバサ、お前すげえなあ。
よくこんなぎゃーぎゃー煩い中冷静に本なんて読めるな。
今度爪の垢くれない?ルイズで試してみたいんだ。
「ケンカすんなよぅ、友達だろ、俺たち。」
「……ま、いいけどね。せいぜい怪我しないようにね。」
「ふん!あんたこそ!」
「ねぇ、ダーリン。これ、使ってね。」
そういうと、キュルケはこの前の剣を俺に差し出した。
約束だからな、これはしょうがない。
一応デルフも持って来てはいるけど、今回ばかりはこっちを使おう。
どうせ折れちゃうし。
しかしデルフぅ、いい加減機嫌直せよ。
あれから一言も話してくれないじゃないか。
電池か?電池きれてんのか?単三ならいいなあ、ロマリアの地下で確か見かけたし。
……帰ったらコルベール先生かオスマン学院長に見てもらおう。
やがて馬車は深い森の中に入って行き、俺たちは徒歩での移動に変わっていた。
森の中は鬱蒼としており、ルイズとキュルケは肩を竦めてビクビクしている。
こうしてると年頃の女の子らしいよな。
フーケとタバサはまあ、流石だ。
俺?
「なんだか暗くて怖いわ……いや……」
「ちょっと!サイトから離れなさいよ!!」
「あんまくっつくなよ。」
(うへへ、胸の感触が!メロンちゃんがひとーつ!メロンちゃんがふたーつ!……落ち着け!昨日夢で妻ルイズに折檻されたばかりじゃないか俺!)
「だってー、怖いんですものー」
「こ、こらー!」
「キュルケ、ちょっとそれはあからさま過ぎるぞ。しがみつく前にボタン外すのは……」
(やばい、こっちのルイズと股間が暴発しそう……し、視線戻さないとっ)
「えー、ダーリンはこういうの、い・や?」
「この、バカ女っあんたなんかね、」
「んー、惚れた女ならいいんだけど、ほら、キュルケは違うからちょっと、な?」
「むぅ」
「!」
ルイズとキュルケは俺のその言葉に黙り込んでしまった。
キュルケはいつもより一つ多く外したボタンを留め直し、ふう、とため息を付いて俺から少しだけ離れた。
ルイズもぐぬぬ、って顔をしたまま言葉を飲み込み、少し遅れて歩いている。
俺はルイズの方を見ると、プィっと明後日の方を向かれてしまった。
ううむ、コレばかりはわかりにくい。
俺に好意を向けてくれてはいるのは感じるんだけど、使い魔としてなのか、男としてみてるのか、ルイズは特にわかりにくい。
はたして、前の時と今と、どっちがルイズの愛に近いだろう?
他の事はわかりやすいのにな……
恋愛からやり直しても、こうやって悩まされるとかお前結構すごいよな。
やれやれ、と思って視線を前へ戻そうと思ったが、彼女が震えている事に気が付いた。
緊張と暗い森の圧迫感による不安を感じているのだろう。
俺はキュルケからは死角になるようにして、そっとルイズの手を握ってやった。
その手は振りほどかれたりはしなかった。
「私が聞いた情報によると、あの中にいるとの事です。」
ミス・ロングビルは廃屋を指差してそう言った。
俺たちはタバサの立てた作戦に沿って、行動を起こす。
小屋に居るであろう、フーケを囮である俺がさそい出し、小屋からフーケが出てきた所を魔法の集中砲火を浴びせるとしたものだ。
俺はキュルケに貰った剣を抜き、ルイズに近寄って一言ささやく。
「わかってるな、準備はいいか?」
彼女は何も言わず、ただ力強く頷く。
俺はこの騒動の顛末を知っている。
別にその通りに終わらせても良かった。
だが、後から考えてもこの騒動は、その後に控える厳しい戦いとは無関係だ。
ここでフーケを殺しさえしなければ、多少筋書きが変わっても問題は無いはずだ。
だから、ルイズにひとつ、今この時にだけ価値のある贈り物をする事にした。
俺はルーンを発動させ、小屋に近づく。
慎重に小屋の様子を伺い、窓から中に誰もいない事を確認すると以前とおなじように皆を呼んだ。
「だれもいないよ。」
「……罠もないみたい。」
「私は辺りを偵察してきます。」
「ああ、頼むよミス・ロングビル。」
「じゃあ、わたしは外を見張るわ。サイト、気をつけてね。」
「おう、ルイズも無理するなよ。どこからフーケが現れるかわからねえからな。」
俺とタバサとキュルケは小屋の中に入り、中を探索する。
前はタバサだったが、今回は俺が薪の近くに置かれていた大きな木箱から『破壊の杖』をみつけ、取り出した。
「あったぜ。これだろ?」
「あっけなかったわね。」
「これが『破壊の杖』……」
その時、外からルイズの悲鳴が聞こえた。
どうやらゴーレムが出たらしい。
三人がドアの方に振り向いた瞬間、屋根が消えた。
天井からは青空とゴーレムが見える。
わはは、改めて見るとなかなかシュールだ。
キュルケがすぐさま炎の魔法で攻撃を加えているが……土って燃えないよな、やっぱ。
コルベール先生ならどう撃退するんだろう?すこし興味がある。
あ、もしここに連れてきていたらこう、かっこよくゴーレム撃退してキュルケが惚れたかも?
先生、ほんと女運ねえなあ……
「無理よこんなの!」
「退却」
俺達は屋根の無くなった小屋から出て走り出す。
そんな俺達の元へ、ルイズが爆発魔法をゴーレムに放ちながら合流してきた。
おれは『破壊の杖』をルイズに手渡す。
ルイズは初めて見る『破壊の杖』を受け取ると、きゅっと唇を噛み、コクリと一度俺に頷いて大事そうに抱え込んだ。
俺達は必死にゴーレムから逃げる。
でかいなりして結構早い。
先を走っていたタバサが、使い魔の風竜を呼び、跨りながら叫んだ。
「乗って!」
俺はキュルケの剣を収め、無手でルーンを改めて発動させ、ルイズとキュルケの腰を抱えてタバサの元へ一気に駆ける。
見ようによっては山賊だな、こりゃ、などと考えながら二人を風竜に乗せながらタバサに声をかけた。
「俺が引き付ける。タバサとキュルケは空から援護頼む!無理はするな!」
「わかった。」
「まかせて!」
「ルイズ!」
ルイズは何も言わず俺を見る。
「 "わかる" な?今から俺が "やり易く" してくる!いいか、合図したら俺を信じて飛べよ!」
「わかったわ!あんた、怪我しないでよ?!」
「ああ、まかせとけ。」
俺はルイズにニカっと笑いかけ、タバサに合図した。
三人は風竜にのって空へ昇っていく。
さて、と。
どれだけ実戦の勘を取り戻せるかな。
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「ああ、まかせとけ。」
サイトはそういうと、あの笑みを浮かべた。
一瞬私は胸が暖かくなるのを感じるも、風竜の上昇による浮遊感がそれを打ち消した。
眼下にはキュルケから貰った綺麗な剣とサイトの背中。
どこか自信に溢れているように見えた。
わたしは……
あの隣にいたい。
あいつの背中の隣に私の背中を並べたい。
視界にゴーレムが入る。
サイトがゴーレムと対峙している。
側で、キュルケとタバサが魔法を撃っている。
ここで見ると、二人の実力が良くわかる。
竜巻、炎。
学院の教師たちですらこれほどのものは出せないだろう。
わたしも魔法もどきをゴーレムに撃つ。
しかし、どの魔法もあのゴーレムには効かない。
せいぜい表面の土をぽろぽろと落とす程度だ。
サイトはというと、ゴーレムの攻撃を紙一重でかわし、斬りかかっている。
見ていて冷や冷やしてくる。
本当に紙一重なのだ。
最初はもっとゆっくり避けられていたのに、今では避けると同時にゴーレムの攻撃がサイトのいた場所にめり込んでいる。
疲れが出てきたんだろうか?
"アレ"を使わなきゃいいけど……
はやく、はやく合図してほしい。
私は杖を振り、魔法の出来損ないを放ちながら一方の手で強く『破壊の杖』を抱きしめた。
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うおおおお!!
死ぬ!
だめ、死ぬ!!
やっぱ昔みたいな動きは今は無理だ!
ゴーレムのパンチにあわせて、皮一枚ちょい外って感じで避けながら懐に入って、ルーンの力で敵の重心を蹴り上げ
バランスを崩した所に体重を乗せた剣で突いて、フン、デカイだけが取り柄だな。って俺気分だけイケメンってのを良くやってたんだけど……
まず皮一枚がもうダメだ。
うん、だめだめ。
当たっちゃう。
こう、プチってやられちゃう。
でも攻撃を俺に集中してくれるのは助かる。
"目的" を果たしやすいからな。
そう俺は思いながら攻撃をかわして行く。
余裕をもってかわすこともできるが、この後アルビオンで風のスクウェアであるワルドと戦わなければならない。
勝敗はわかっているんだけど、やっぱさあ。
惚れた女の前でバッチリキメたいじゃないか。
ルーンのギアを上げれば間違いなく瞬殺なんだけど、あの状況でつかえば俺も死ぬ。
だから、せめて俺の五十年近い戦闘経験を少しでも取り戻したい。
散々スクウェアメイジを暗殺者として送り込まれたから、「スクウェア」ってやつの恐ろしさが良くわかる。
魔法だけじゃないんだぜ?
生身のままガンダールヴについて来たりする奴とかたまにいるんだぞ?
俺が負けててもおかしくなかった勝負もいくつかあるからな、訓練は怠れん。
そう思ってこうやって、こいつを相手に色々やってるんだけど……
ひ?!
あぶねーあぶねーあぶねー、いまの危なかった!!
結構見切れるんだけど、体が反応しない。
やっぱ、基礎訓練からやり直しだな。
しかしこの剣ダメだなあ……突く以外使い道ない。
斬撃を繰り返したり思いっきり力込めて突くと折れそうだもん……
俺はそう一人ごちると、横薙ぎの一撃を前に跳んで回避し、目の前に迫ったゴーレムの腕を足場に後方にまたも跳ぶ。
ゴーレムの一撃は、鬱蒼と茂っていた森の木々を易々となぎ払った。
俺が着地すると、ゴーレムは先程の一撃を繰り出した方とは反対側の腕で、回転するように拳を繰り出してくる。
今度はゴーレムの足元へ飛び込み、ゴーレムの後ろへ抜けた。
さっきまで俺がいた場所は、その周辺の木々ごと派手に吹き飛ぶ。
吹き飛んだ木々がクルクルと宙を舞い、タバサたちの乗った風竜が慌てて回避している。
まるで台風だ、と思いつつ周囲を見渡す。
ゴーレムが暴れまわった分、木々が多く倒れちょとした広場のようになり、視界が開けていた。
頃合か。
タバサの位置を確認し、今度は拳を振り上げ、たて薙ぎに俺を潰そうとするゴーレムを見る。
今度は避けない。
ゴーレムの一撃が地面にめり込む。
「サイト!!」
ルイズの悲鳴が轟音にかき消される。
俺は一瞬後ろに下がってギリギリで一撃を避け、吹き飛んでくる土砂を剣の影で少しでも弾きながら
地面にめり込んだゴーレムの手首、肘、腕と駆け上がり肩を足場にして、ゴーレムの後方へ飛ぶように空中へ大きくジャンプしていた。
目の前にはタバサの風竜がいる。
「ルイズ!いいぞ!」
そう叫ぶと、ルイズは俺に向かって飛んだ。
キュルケが思わず悲鳴をあげる。
タバサも驚いた表情をしていた。なかなか見られる表情じゃないな。
俺はルイズを抱きとめ、まだ体勢を崩しているゴーレムの後ろへ着地し、素早く広場から森の中に飛び込んだ。
それからすぐに森を目隠しにして移動し、俺はゴーレムの横方向から飛び出し、一撃を加える。
しかし、それはただ表面に傷をつけるだけの一撃だった。
ゴーレムの反撃が飛んでくる。
それをギリギリで避ける。
次撃、これもギリギリの所で回避。
まずい、攻撃の回転が速くなった。
そう思いつつも、俺はなんとか避け続ける。
少しでも時間を稼ぐために。
大きく避ける事は今はする訳にはいかない。
当然、捌ききれない一撃が飛んでくる。
そしてとうとう俺は、パンチをモロに食らった。
インパクトの瞬間、ゴーレムの拳は鉄に変わっていた。
フーケめ、結構えげつないもんつくるな……と思いつつ、俺は少しでもダメージを減らそうと後ろへ飛ぶ。
バキバキ、と音がして俺は吹き飛ぶ。
骨じゃなくて、吹き飛んだ時に当たった木々が折れた音だと思いたい。
耳鳴りがして、目もぐるぐる回る。
手足の骨は折れてないようだ。日ごろルイズに鍛えて貰っているからな!
しかし、次はもう避けられそうにない。
何とか立ち上がったものの、もう足は動きそうに無い。
目の前にゴーレムがやってきて、再び腕を振り上げた。
その時、ゴーレムの股の間から待ちわびた姿が見えた。
俺は歯を食いしばり、キュルケの剣でその一撃を受ける。
剣はあっさり折れたが、俺は吹き飛びはせずゴーレムの拳を受けた体制のまま
その場からすこし後退した状態でその拳を支えていた。
左手のルーンは激しく光を放ち、鋼鉄となったゴーレムの拳を支え今にも押し潰されそうだった俺は
じりじりと巨大なゴーレムを押し返していた。
食いしばった歯がギリギリと音を立て、視界が赤くなるのを感じながら声を振り絞って叫ぶ。
「ルイズゥ!!撃てえええ!!」
瞬間、すさまじい轟音と共にゴーレムの上半身が吹き飛んだ。
赤い視界が元に戻っていく。
しかし、視界は開けない。
闇だ。
まずい、意識をなくしたか?夢か?今日は妻ルイズ出てこないよな?泣かせてないし、手握ったし。可愛かったなあ。
一瞬混乱するも、意識は保っているらしい。
ルーンがまだ、通常状態で発動しているのがわかる。
右手には折れたキュルケの剣の感触。
一瞬とはいえ、妙な体勢でルーンを強く発動させたから、迂闊にこれは手放せないな……
やだなあ。この後フーケを捕まえるまでもつかな、俺。
殆ど一瞬だったし、ちょっと大き目のゴーレムを支えただけだから大丈夫だよな?
しかし、なんで真っ暗なんだ?
音も聞こえん。
身動きもできん。
息も苦しいな?
そう、思っていると、遠くでルイズの声が聞こえてきた。
それは段々と近寄ってきて……
「サイト!!」
俺を掘り当てたルイズの顔は土で汚れていた。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
私は森を走った。
向こうではサイトがゴーレムと戦っている。
森を抜け、ゴーレムがなぎ倒した木々を利用して見つからないようにゴーレムの後ろへ回り込む為、私は走る。
『破壊の杖』の使い方は知っている。
どうやって当てるのか、どうやって使うのか、サイトに簡単な絵を書いてもらいながら念入りに教えてもらい、枕を使って何度も練習をした。
チャンスは一回、二度目はない。
あの月夜の夜、サイトはこの杖を見た時に驚いたそうだ。
自分の世界の武器だったと言っていた。
多分、ハルケギニアでこの武器を使える者はいないとも。
サイトは言った。
私があのフーケのゴーレムを倒せば、きっとみんな見直してくれると。
だれも打倒できそうにないフーケの巨大なゴーレムを、わたしが破壊するのだと。
サイトは同時に、自分はルイズの使い魔だから、他の誰にも『破壊の杖』の使い方を言わないとも誓った。
つまり、サイトが黙っていればこの杖を使ってゴーレムを破壊する事は"私にしか為し得ない"事になるのだ。
最初はインチキだと反論したが、使い魔として主に知識を与える事のどこがインチキなのだと言われた。
……私はどこか、納得はしなかったがそれで了承した。
何も出来ないままではイヤだった。
それからサイトと、どうやって『破壊の杖』をフーケから取り戻すか考えた。
サイトはきっとフーケの捜索隊が編成されるだろうから、二人で参加して、フーケを探し出し隙をみて杖を取り戻して
私が『破壊の杖』でゴーレムをやっつけるんだと言った。
一度しか使えない学院の宝を使うのは気が引けるが、それよりも私の皆を見返したいという心の方が強かった。
正直、今でも稚拙で無茶苦茶な案だと思っているが、事態は私に都合の良い方ばかりに動いた。
サイトは私が失敗しないよう、ゴーレムの攻撃を利用して木々を倒し、視界を確保してくれてた。
今この時も私がゴーレムの後ろに回りこむ時間を稼いでくれている。
急がねば。
サイトはきっと、私を信じてどんな無茶をやってでも時間を稼ごうとするだろう。
私の為に、命を賭けて戦ってくれているのだ。
私の誇りの為に、その命を削ってくれているのだ。
私の為に。
ならば、わたしはそれに応える義務がある。
私は貴族であり、メイジであり、そしてあの忠実な使い魔の主なのだ。
悪い足場に苦労しながら、やっとの思いでゴーレムの後ろに立つ事ができた。
昨夜のキュルケとの決闘で撃った魔法と同じ距離でよい、と聞いていたのでここならば攻撃を外さないだろう。
ゴーレムを挟んで、サイトは相手を少しでもその場に留めようと、その場からなるべく移動しないようにして攻撃を避け続けている。
わたしは急いで破壊の杖を使える状態にする。
その時、ゴーレムの拳がサイトに当たった。
サイトが向こうへ吹き飛んだようだけど、私からは見えない。
ゴーレムが前へ歩み、拳を振り上げたから、まだサイトは生きているとわかった。
私は杖を前後逆に構えてないかを確認して、何度も練習したとおり、杖をゴーレムに向ける。
ゴーレムの拳は振り下ろされていた。
それと同時に"アレ"の光が見える。
わたしはサイトの叫ぶ声を聞いて、狙いを定め破壊の杖を使った。
ぽしゅ、と間の抜けた音がして、なにかが白い煙を上げゴーレムに飛んで行き、当たる。
瞬間、すさまじい轟音と爆発があり、ゴーレムの上半身は綺麗に吹き飛んでいた。
私はおもわずやった!と思ったが、残る下半身が崩れて土になった辺りを見ると胸が張り裂けそうになった。
サイトの両腕が土の山から出ていた。
ぴくりとも動かず、折れたキュルケの剣を握り、左手のルーンは弱弱しく光っているだけだった。
焦った私はそこへ駆け寄り、急いで地面を手で掘る。
その場で崩れた土は掘り起こしやすかったが、それでもたちまち指を擦りむいた。
そんな事もお構い無しに私は土を掘り続ける。
やがて、サイトの頭が見え、顔が出てきた。
「よう、ルイズ。やったな。」
サイトはそう言うと、ニカっといつもの様に笑った。
「あんた……はぁぁぁ、心配させないでよ……」
私は思わずその場にへたり込み、下から見上げてくるサイトを見て思わず吹き出した。
バンザイをして間抜けな格好で地面に埋まるサイトも笑っていた。
張り詰めていたものが切れて、なんだか無性におかしかった。
笑いながら安堵の為か、私は泣いた。
※現在暫定的に復帰中です。
このSSはArcadia様のサイトでも公開いたしております。
リンクはこちら→ガンダールヴは夢を見る。/1(一章~四章)
リンクはこちら→ガンダールヴは夢を見る。/2(五章~八章)
リンクはこちら→ガンダールヴは夢を見る。/3( ~最新話)
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