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本SSは作者が初めて書いた物でした。
ものを書く、という行為に慣れたいま改めて見ると
黒歴史とはこのようなものなのか、と感じるほど酷い出来で
特にガマン出来ない1~4章はヒマを見て1人称→3人称へと改訂中です。

これから読まれる方がおりましたら、その辺り暖かく見守っていただければと思います。
反省も踏まえ、あらためて罵倒していただいてもうけとめようと思います。

痴れ者
epilogue_bridge
epilogue_bridge:ガンダールヴは夢を見る。






prologue.


シオメントはイーヴァルディに尋ねました。
「おお、イーヴァルディよ。そなたはなぜ竜の住処に赴くのだ?あの娘はあんなにもお前を苦しめたのだぞ?」

イーヴァルディは答えました。
「わからない。なぜなのかぼくにもわからない。ただ、ぼくのなかにいるなにかが、ぐんぐんとぼくをひっぱていくんだ。」


(スノーリ・ストゥルルソン著『イーヴァルディの勇者』より)






































 老人は今、正に死のうとしていた。

 八十四年。
 彼が今日まで生きてきた時間。
 遥か時空の彼方、異邦の地にあって彼は結局元の世界には帰らなかった。
 だがその心は異世界でその生涯を終える事に、後悔はしていない。
 老人の名は平賀才人。
 かつて地球に暮らしていた者であった。


「しかしこのルーンは凄いな。とっくに寿命が来ちまってるのに、ルイズが傍にいるだけでこうやって延命できるなんて。」


 そう言って横たわるベッドの傍らで哀しそうな顔をして、愛しそうに己の手を握る妻に笑いかける。
 死の間際、もはや喋る事も叶わない筈だったが、彼の愛する“主人”の想いは左手のルーンを通して僅かな力と時間を彼に与えていた。


「ねえ、サイト。後悔してる?」
「……いや、していないよ。少なくとも地球に帰らなかったことは。」


 幾度と無く繰り返され続けた問いに、いつもの様に答える。


「……ただ、他の事で後悔してるかな?」
「……何?まさかアニエスとも隠し子を作ってたの?それともタバサの妹の方かしら?」


 聖女、始祖ブリミルの再来とまで言われた先代教皇の瞳に怒りが宿る。
 信徒、異教徒、平民、貴族。全てに向けられ続けたその慈愛に満ちた姿は一瞬でなりを潜め、飼い犬を調教するご主人様へと切り替わる。
 ――超怖い。
 できるならこのまま無事に天寿を全うしたい。
 才人はいつものようにそう願い、しかし与えられた時間を惜しむのであった。


「いや……随分ルイズを泣かせたな、って思ってさ。」
「……わかってるじゃない。アンリエッタの時も、タバサの時も、ティファの時も本当に辛かったのよ?」
「ごめん……」


 それはルイズのブリミル教教皇就任の時。
 トリステインからアンリエッタ女王が、ガリアからはシャルロット女王が
 再興したアルビオンからはティファニア女王が祝賀の為にロマリアへ訪れ、何年ぶりかの再会を互いに喜んでいた時の事。
 それぞれの国での政情不安解消の為に以下のような提案がルイズに提示された。

『英雄・ガンダールヴのサイトの血を各王家に入れ、トリステイン・ガリア・アルビオンそしてロマリアと強固な同盟を組む』

 提案にルイズは怒り狂い、困惑しながらニヤけてしまった才人への“調教”が行われ、以後その内容に触れることはブリミル教最大の禁忌となった程である。


「ねえ、ルイズ。これは真面目な政治のお話なの。私たちが生きてる間はいいのよ? 私とあなたはもちろん、シャルロットやティファニアはお友達だし信用だってできる。でも、私たちの子供達がそうだとは限らない……そうでしょう?」


 怒り狂うルイズを説得したのは、トリステイン女王アンリエッタであった。


「……あのね、王家同士を強く結びつける為には信頼だけではダメなのはルイズだってわかるでしょう? 家柄も大事だけど、今の貴族社会を維持していくときっとまた戦争が起こるわ。だからね、王家の正統性の中に新しい制限として“サイトさんの血を引く”という掟を作ろうと思うの。サイトさんの人気は平民の皆さんの間じゃ絶大だし、私たちも貴族達の派閥も気にする必要も無いわ。貴族達の平民への意識改革を女王である私たちがハルケギニアに示す事にもなるのよ? ……それに皆サイトさん以上の男性がこの先現れるとはもうだれも思えないのよ・……」


 身勝手にも思える説得はしかし公人としてのルイズの理性に訴えかけられ、やがて一月に渡るアンリエッタの説得の末、才人の“妻”は自分一人だとする事を条件に渋々認めるルイズだった。
 この提案は功を奏し、度重なる戦争で疲弊していたハルケギニアに安定をもたらす。
 更に先日才人の孫に当たるガリアの姫君・ヒルダがゲルマニア王に嫁いだ事により“大ハルケギニア同盟”が締結された事で、更なる平和と繁栄の将来が約束されていたのだった。


「それでもね、必要だったとわかってても辛かったのよ?」
「うん……あの提案は受けるべきじゃなかった。結局、アンリエッタもタバサもティファもシエスタも皆辛い思いをしてたしね」
「そうよ。サイトの血を入れるなら私達の子供の代からでも遅くは無かったのよ。私がどれだけ影で泣いてきたと思ってるの?」
「う……本当にごめん……ちゃんと皆失恋させるべきだったと後悔してる」
「……やり直したい?」


 ルイズの問いに才人は目を閉じ、弱弱しくとも確かな声で答えた。


「うん。ルイズをあんなに泣かせた事を心から後悔してる。できるならやり直したい」

 才人はそう口にして目を開く。
 目蓋が重い。
 最後の時が近いことを実感する。
 ルイズもその事を感じ取っているようだ。


「私のこと、愛してる?」
「うん、愛してる」
「私のこと、守ってくれる?」
「うん、きっと守るよ。死んでも、使い魔でなくなっても」


 才人の目蓋は再び閉じられていた。
 まだ意識はあるがもう開くことはないだろう。


「もし……やり直せるならまた私の為に戦ってくれる?」
「うん。……何度でも。ルイズが……笑ってくれるなら」
「約束、して」


 もはや目は開かないが、才人にはルイズがどんな顔をしているかわかっていた。


「約束するよ」
「じゃあ、これは契約ね」


 才人は唇にルイズを感じた。
 次に目蓋の向こうに光を感じて急速に意識が遠のくのを実感する。
 意識を手放す瞬間、才人は愛する妻の声を聞いた気がした。


「愛してるわ、サイト。」


 それは老女となった妻でなく、恋人だった時の少女の涙声だった。
 そしてゼロへ戻り、ガンダールヴは夢を見る。




※現在暫定的に復帰中です。


このSSはArcadia様のサイトでも公開いたしております。

リンクはこちら→ガンダールヴは夢を見る。/1(一章~四章)
リンクはこちら→ガンダールヴは夢を見る。/2(五章~八章)
リンクはこちら→ガンダールヴは夢を見る。/3( ~最新話)


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