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14.帰る場所
「ただいまー」
 雪山での狩猟から、二週間が経過したラウト村に、一人の少年が訪れた。
 褐色の防具――ティガレックスと言う名の飛竜の素材で造られた防具に身を包んだ少年は、元気そうな足取りでラウト村の敷居(しきい)(また)ぐ。外に広がっている森と村の境界には、申し訳程度の門しかない。その前には、二人の少女のハンターがたたずんでいた。
「お帰り、フォアン。その様子じゃ、特に問題は無かったみたいね?」
「フォアン君、お帰りなさいにゃ! 元気そうで何よりにゃ!」
 私服姿の、長い紺の髪を流した少女は、ベル。普段着にもなっている、〈アイルーフェイク〉にインナーのみの姿の少女は、ザレア。二人とも(一人はネコの被り物で分からないが)安心したような笑顔で、少年――フォアンを迎え入れた。



 ――そう、あれから二週間が経過していた。
 ウェズの安否を確認しに雪山へ(おもむ)き、ドスファンゴとフルフルを同時に狩猟(しゅりょう)すると言う体験をした三人は、その足でウェズを迎えに行くと、隣村へと送り、結局その日は隣村の宿で一泊する事になった。
 その時、フォアンの体――ドスファンゴの突進と、フルフルの電撃をマトモに受けた体を、一度精密検査して貰った方がいい、とウェズに言われた。始めこそフォアンは渋っていたが、ウェズに無理矢理連れて行かれ、結局ラウト村に帰って来たのはベルとザレアの二人だけだった。ウェズは隣村での商売も適当に、大きな街へとフォアンを連れ去ったのだった。
 そして、それから数日が経過し、フォアンから手紙で連絡が入って、(つい)に今日、ラウト村へ帰る事が許されたのだった。



「――凄く大変だったよ。何か、肋骨(ろっこつ)が折れてたらしいし、皮膚(ひふ)が炎症起こしてボロボロになるしで。医者に無理言って、今日退院させて貰った位だし」
 フォアンが酒場へと向かう途中、愚痴(グチ)のような言葉を(こぼ)したが、その内容に思わずベルが噴き出す。フォアンを怪訝(けげん)そうな眼差(まなざ)しで見つめつつ、一応、普通の常識人としての反応を見せる。
「……あんた、それってかなりヤバい状態なんじゃないの……? 肋骨折れてるとか、どうしてそれに気づかなかったの……? そんな(ひど)い状態だったのに、二週間で退院とか、あんたどれだけ無理言ったの……?」
「入院なんて、暇人のする事さ。若者は動ける時に動くのが一番だよ」
「ジジイかあんたは! しかもあんたの場合は動いちゃいけない時に動いてるんだよ! 街に戻って養生(ようじょう)してこい!!」
「まぁまぁ、堅い事言うなよ。俺も見ての通り、ピンピンしてるんだからさ」
 そう言って会心の笑みを浮かべるフォアンに、ベルは呆れを通り越して最早ため息すら出てこない様子で、頭を抱える。
「全くもう……何だってこいつはいつもこうなんだ……」
「それじゃ、フォアン君も、今日から一緒に狩猟に出掛ける事ができるにゃねっ?」
 ザレアが今の話を全く無視して、嬉しそうにはしゃぎ出す。
 ベルは頭を抱えたまま、ツッコミを入れる事すら忘れて、呆然とザレアを見据える。
 フォアンはあごつかむ素振りを見せて、小さく首肯(しゅこう)する。
「そうだな。少しブランクもある事だし、軽い仕事ならすぐにでも()けたい気分だぜ」
「それじゃあ、雪山草を摘んでくる依頼はどうかにゃ? この前に行った村の村長さんが、是非(ぜひ)にって言ってきてるのにゃ!」
 そうなのである。二週間前、ウェズが音信不通になった事で、隣村ではちょっとした騒ぎがあったらしい。そんな折に三人のハンターが無事な姿のウェズを連れて来た事から、やたらと気に入られ、本来ならそのままラウト村へと帰ろうと考えていた三人が、そこで無理矢理一泊させられたのである。その後も、フォアンは街で検査を受けていたから知らないが、隣村から色んな依頼が舞い込み、ラウト村のハンターはテンヤワンヤだったのである。
「へぇ、そうなんだ。――じゃ、張り切って行くか」
「……ま、いいけどね。あんたが元気なら、それだけでもう満足よ、あたしも」
「それじゃ、早速行こうにゃ! お祝いも兼ねて、雪山でポポも少し狩って行こうにゃ!」
 三人のハンターは銘々(めいめい)に声を上げながら、酒場へと向かって行く。この後、二週間ぶりに帰って来たフォアンを村長が涙ながらに迎え入れたのは、また別の話。
 今日もまた、彼らの狩猟の一日が始まろうとしていた……



第二話〈帯電飛竜、フルフル〉―――【完】
これにて【ベルの狩猟日記2】は完結です!
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それではまたいつか、お逢い致しましょう!
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