刑期を終えて
もう何十年も、此処でこうしていた気がする。
指一本動かせない真っ暗闇の中が、あれから私の世界の全てだった。体の自由を奪われ、棺桶のように狭い空間の中で私はずっと生きてきた。いや、生かされていたのだ。私は罪を犯した。一体どんな罪だったのかさえ、もう覚えていない。だがこんな仕打ちを受けるくらいだから、きっと私は重罪人に違いない。もしそうじゃなかったら…考えただけでゾッとした。
「私の処罰は決まりましたか?」
時折壁の向こうで何かしら音が聞こえるたび、私は外側にそう問いかけた。明かりもない、身動き一つ取れない私の唯一の刺激が、外からの音だった。窓を叩く通り雨、遠くで鳴るサイレン、服と服が擦れる微かな物音…その一つ一つに、私は必死に耳を澄ませた。
もしかしたら壁の外に、執行人が来ているかもしれない。毎日そんな期待を胸に、私は見えない話相手に希望を口にした。早く、私を此処から出して、処罰してほしい。煮るなり焼くなり、好きにして構わない。ずっと此処に閉じ込められるくらいなら…いっそ殺して欲しかった。
「74番」
突然、壁の向こうから私は番号で呼ばれた。返事はないものと決めてかかっていた私は、死ぬほど驚いた。
「時間だ。此処から出してやる」
「ほ…本当ですか?」
「これからお前は熱した棒を全身に突き立てられ、八つ裂きにされた後、飢えた獣たちに食い千切られるだろう。どうだ、それでも此処から出たいか?」
声の主が、私を挑発するように言った。私は涙を流して喜んだ。
「もちろんです。此処から出られるのでしたら、何だって構いません」
「フン。せいぜいこの世に生まれてきたことを、精一杯祝うんだな」
すると、目の前の壁が突如開かれ、久しく忘れていた眩い光が飛び込んできた。私はろうそくを突き立てられると、そっとテーブルの真ん中に並べられた。そこにいた人達は私を囲み、皆嬉しそうに口を揃えた。
「ハッピーバースディ!誕生日おめでとう!」