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LV999の村人  作者: 星月子猫
第五部
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絶対的な強さの壁-15

「皆さんがどうしても引かないというのはわかりました。なら、せめて皆さんが来栖に会う途中で殺されてしまわないように、私に案内させてください。少なくとも、来栖のいる場所にまではご案内できるかと思います……そこからの命の保証は致しませんが」


「いや、だからそもそもそれすらも信じてないんだって」


「なら、私が皆さんを裏切らないように、私自身に呪術を施します。私の役割は呪術師ですから……生半可な方法じゃ解けない呪術を自身にかけることができます。これでどうでしょう」


 どうしても食い下がろうとするフローネを前に、鏡を除く一同は困惑した様子で顔を見合わせる。とてもその真剣な眼差しからは、嘘を言っているようには思えなかったからだ。


「言ったでしょう? 私も人の子だと、そして、あなた方の事情をある程度は理解しているつもりであると。……どうか私にお力添えさせてください。このままむざむざ死なせに行かせるような真似はしたくありません」


「必死だな。もしかしたら俺たちの力でどうにかできるかもしれないぜ?」


「ハッキリと申しますが……それは不可能です。仮に来栖が我々ガーディアンの人間の力をフルに扱うつもりであれば、技術においても、数においても、皆さんに勝ち目なんてありません。来栖の元に辿り着くことすらできないでしょう」


 その証拠と言わんばかりに、フローネは鏡たちが乗ってきたラストスタンドを指差した。


「私がどうして皆さんの位置を把握できたかわかりますか? ラストスタンドは世界中のどこに居ても位置を把握できるようになっているからですよ。それを皆さんは理解していましたか?」


 それを聞いた瞬間、一同はバルムンクの顔を脳裏によぎらせる。とりあえず帰ったらボコボコにしようと考えつつ、ある程度は予想していたことではあったため、そこまで驚かずに頷き返す。元々、その可能性を考慮して一度ラストスタンドで近くまで移動してガーディアンの全容を確認してから、ラストスタンドを放棄して潜入するつもりだったからだ。


「さすがにそれは気付いていましたか……ですが、皆さんは我々ガーディアンの内部事情を知りません。どれほどの戦力を所持し、一体どのような手であなた方を襲うつもりかなど、見当もつかないでしょう?」


「……わかった。そこまで言うなら案内してもらおう」


 そこで、先程までは警戒心剥き出しだった鏡は一転して軽くため息を吐くと、諦めたかのようにそう告げた。急な考えの変更にフローネは目を丸くし、タカコたちは怪訝な表情で首を傾げる。


「呪術もかけなくていい。いくら呪術をかけたところで発動条件は発動者にしかわからないからな。いくらでも偽装できるし……やらなくていい」


「つまり……私を信用するということでよろしいのですか?」


「ああ、そういうことでいい。あんたの言葉通りさ、俺たちだけじゃ多分どうしようもない。それならやっぱり頼るのがてっとり早いし、万が一のことがないようにあんただけ管理しとけばいいって考えれば結構楽だなって思ってさ」


 鏡のどこか適当な物言いに、タカコは「なるほど」と、何故か納得した表情を浮かべた。

 むしろ疑いきっているならそっちの方が都合は良い。タカコにはそれが理解できたからだ。



-------------------------



「あの……鏡様?」


「何?」


「やっぱり狭く……ないですか? 我慢してましたがさすがに私も疲れてきました……もうすぐ到着ですので、一度休憩しませんか」


「お? そうやって俺たちを罠にかける作戦だな? そうはいかねえぜ」


 五時間後、鏡たちは西側に位置するロシアの大地上空を、鏡たちが乗ってきた二機のラストスタンドで飛行していた。タカコを操縦者に、アリス、メリーの三人と、レックスを操縦者に、ペス、鏡、フローネの四人で分けられている。


 元々三人が乗れるか乗れないかくらいと言われていたラストスタンドの中に四人収容したせいか、外では強い風に吹かれて雪が激しく乱れ降り落ちているにもかかわらず、現在鏡たちが乗っているラストスタンド内は蒸し暑く、そして窮屈な状態となっていた。


「……外ハあんなニモ寒そうナノニ、中はコンナニモ熱々……何故? ウチわからん」


「教えてやろうか? お前が僕にくっつくからだよ」


 タカコの乗るラストスタンドから移動してもやはりペスはレックスから離れようとしなかったため、スペースの都合上、操縦をレックスに任せてその上に乗る形でペスがへばりつき、その右側に鏡が、左側にフローネが立っている。


「ほら、一番大変なのはレックスなんだから我慢しろ」


「……まさかこんな目に会うとは思いませんでした」


 予定では、銀色のラストスタンドに搭乗して鏡たちを仲間として扱い、内部を案内するつもりでいたが、銀色のラストスタンドに何かを仕掛けられていることを警戒し、離れて行動されるのを危険視した鏡が人質を扱うようにこの場へと押し込んだのだった。


「私を信用したのではなかったんですか?」


「少なくとも俺たちを来栖の元に案内したいって考えは本当なんだろうなって思っただけだよ。あそこでうだうだ話してても仕方がないから手っ取り早く連れてく判断をしただけだ」


 どこか、裏のあるような物言いにフローネは不満そうに表情を歪める。


「それと、まだいくつか質問したいことがあってな。移動しながらでも聞きたいと思ったから、お前と俺は一緒のラストスタンドに乗ってもらってるわけだ」


「質問ですか? ある程度答えたつもりでしたが……他に何か? 私に答えられることでしたらお答え致しますよ」


「海を渡ってからずっと疑問に思ってたんだ。どうして……こっちにはモンスターや異種族が一切いないのかをな」


 同じことを考えていたのか、レックスとペスは表情を強張らせて二人の会話に耳を傾ける。


「動物がいるのはわかった。でも……ずっと上空から地表を見ていたが、危険な存在がいないように見えた……ロシアには、異種族がいないのか?」


「いるにはいます。ですが、それは日本から漏れ出たものがロシアへと移り住んだ極少数でしょうね」


「どういうことだ?」


「ご察しの通り、ロシアには……あなた方ノアの方たちが必死になって戦っていたような脅威となる敵が存在しません」


 言葉の意味がわからず、鏡は顔を強張らせる。同じくそれを聞いていたレックスも、それはありえないと考えていたのか「馬鹿な!」と声を張り上げた。

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