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LV999の村人  作者: 星月子猫
第四部
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第十六章 たった一人

 それから、クルルがいなくなって二日間が経過した。


 クルルの捜索は半日かけて行われたが、メノウが予想していた通りクルルは見つからず、クルルは食糧庫を荒らした犯人の筆頭として扱われた。


 そうなったのも、クルルがいなくなったことに対してメノウたちが、「自分たちも何故いなくなったかわからない」と主張し、無関係を貫いたからだ。


 クルルは独断で行動しているということにして、食糧庫を荒らした片棒は担いでいないとしたその結果、クルルは奪われた食料を持ち逃げするために身を隠したということにされた。


 クルルの捜索は今もなお行われている。というのも、ノアから出るには昇降路を使う以外にないため、クルルは現在ノア内のどこかに潜伏しているということになっているからだ。


「クルルさん……無事かな」


「わかんないけど、無事を祈るしかないわね。ほら、そんな不安そうな顔すんじゃないわよ。いつも笑顔のあんたが暗い顔してると、皆滅入るでしょ?」


 クルルの身を案じて不安げな表情を浮かべるアリスの頬を、パルナはぐにーと引っ張って無理やり笑顔を作らせる。


 残された一同に出来たことは少なく、一刻も早く潜んでいる敵が誰なのかを特定するか、敵の秘密を暴くための施設を見つけ出すことだったが、成果はあげられていない。


 調べられる場所はほとんど調べ尽くし、一番怪しいと考えていたノアの中央施設であるセントラルタワーと呼称されている建物内も、油機とメリーの協力を仰いで調べはしたが、怪しい場所は見当たらなかった。


 やはり、來栖が使っていた転送装置を使わなければ入れないような隠された場所がある。もしくは隠された通路が存在するだろうとメノウは結論付けた。だが、セントラルタワー内をじっくりと調べられるほどの時間の余裕はなく、メノウたちはレジスタンスの一員として、敵の正体を探る暇なく働かされていた。


 現在も、ノアの施設内にある畑でとれた食料を、監視として他のレジスタンスも同行のうえ、食糧庫へと運んでいる最中である。


「どうして……クルルさんだけなのでしょうか? この二日間……捕まえようと思えば捕まえるチャンスはあったはずなのに」


 食料を運んでいる途中、ふとティナが思い立ったように言葉を漏らす。並行して食料を運んでいたメノウも、「……ふむ」と一考するが、すぐに「わからないでもない」と、まるで敵の行動が冷静且つ適切だと褒めるかのように瞼を閉じる。


「食糧庫の犯人を我々に仕立てるのが目的だったとするなら、クルル殿で一旦打ち止めにするのは理に適っている。現に今も、我々が共犯者であるという疑いは拭いきれていないし、他のレジスタンスの者たちから向けられる視線も良いものとは言えないからな」


「どういうことですか?」


「一人ずつ消えていけば、逃げ隠れたという認識ではなく何かよくないことが起きているという考えに切り替わる可能性がある。そうなれば、レジスタンス内で前代未聞の事件が起きているのではないかと我々を疑うどころか、敵の身まで危うくなる。敵も、それは望まないだろう」


「……なるほど。じゃあ次に誰かを消すタイミングがあるとすれば、一気に私たちを消しに来るってことですね。全員が共犯者だとするために」


 仮に、全員が消えたということにしても、昇降路を誰もいない時間に起動してしまえば、ノアから逃げおおせたとして、証拠も隠滅できる。ティナの考え方は正しかったが、メノウは何故か「そう……だな」と小さくつぶやくだけで浮かない顔をしていた。メノウには一つだけ気がかりなことがあったからだ。


 それは、敵がこの二日間の間。何もしてこないこと。


 一気に消しに来るのだとしても、敵は別に待つ必要性はない。チャンスがあれば一気に畳みかければいい。実際、チャンスは何度かあった。入浴時や就寝時間などの特に無防備になる時間帯に何もしてこず、休憩時間を利用して三手に別れてあえて敵をおびき寄せたりもしてみたが、現れなかった。


 常時、警戒はしていた。だが、その警戒が何も意味を成さないとでも言わんばかりに敵は何もしてこなかったのだ。メノウにはそれが気がかりで仕方がなかった。


「わざと泳がされている……そう考えるしかないわね」


「……タカコ殿も気付いていたか」


「何を狙っているのかはわからないけど……敵に私たちを泳がせておく理由なんてないもの。生かされている。そして何かの機を待っている……そう考えるしかないわ」


 片手と片腕を巧みに使い、300キロはあるであろう食料の詰まった3箱の木箱を運びながら、タカコもメノウの隣で感慨深くつぶやく。


「もしかしたら、この疑心暗鬼状態を利用して、行動がとりにくいのをいいことに、私たち利用し倒すつもりかもしれませんよ?」


 閃いたとでもいうように、ティナが指をパチンと鳴らす。しかし、既に想定済みだったのか、メノウは首を左右に振って否定した。


「我々だって大人しく従っているわけではない。相手側からすれば煙たい相手には間違いないのだ……今は泳がせているだけかもしれないが、放置はしないだろう」


「む……ならいっそのこと、レジスタンスの皆に全部話しちゃったらどうですか?」


「言ったところで信じようとしないだろうし、潜んでいる敵が信じさせないように動くだろうな」


 打つ手なしの状況に、ティナは両手で持った木箱に頭を打ち付けて「ですよねー」と不安そうにうな垂れる。


「我々に出来るのは一刻も早く敵、もしくは敵の本拠地を暴くことだ。ノア内のどこかにあるのは間違いないはずだ……恐らく中央のセントラルタワーだとは思うが、時間が足りない」


「……最悪、強行突破を図る?」


「敵の数もわからん……得策ではないはずだ。敵を暴いて他の何も知らない者たちが味方になったとしても、古代兵器を大量に持ち隠していることを考えれば無駄に等しいリスクだ」


 万が一の場合、防御力を無視してあらゆる物体を破壊できる自分がセントラルタワー内で暴れればなんとかなると考えていたタカコは、考えが浅かったと表情を暗くする。


「表情が暗いぞ、そんなことでどうするお前ら? 敵に殺してくださいと言っているようなもんだぞ?」


「むしろなんであんたはそんな元気なの?」


 タカコと同じく木箱を三箱運びながら、鼻息を荒くして張り切っている姿に、パルナはアホを見るかのような冷たい目線を注ぐ。


「絶望的な状況なのはどうあがこうが変わらないんだ。だが、なんとかなると信じて行動していなければ精神をすり減らすだけだろう? クルルの身も心配だが、こうして不安でたまらなくなる状況に陥れて、判断力や冷静さを削ぐことが敵の思惑かもしれんだろ?」


「そうかもしれないですが、何かレックスさんが言うと無性に腹が立ちますね」


「待て、僕は一応勇者なんだが? 役割的にも今の台詞はあってるはずなんだが?」


「役割じゃなくてキャラの問題でしょ。あんたチクビボーイだし」


「それは全く関係ないだろう!」


 雰囲気をよくしようとキリッとした表情を見せるレックスを、ティナとパルナは全力でいじり倒す。


「え、お前チクビボーイって姓なのか?」


「ち、チクビボーイ……!」


「おい、その気の毒とでも言いたげな顔をやめろ。お前もクスクス笑うな油機!」


 レジスタンス内に敵がいるかもしれないというずっとそこで過ごしていた者にとっては悲しい現実を前に、暫く何も言わず木箱を運んでいたメリーと油機も、衝撃を受けたかのような表情でレックスに視線を送る。


 元気を出せと言われても気休めにしかならなかったが、そのやり取りにアリスがクスクスと笑っているのを見て、メノウも「悲観している場合ではないな」と、気を取り直した。


「おぅ! ここにいたか」


 その時、仲睦まじく荷を運ぶ一同の前に、いつもの作業服ではなく、装備を整えた状態のバルムンクが気さくに声をかけてきながら、姿を見せる。

LV999の村人のCMがアニメ「幼女戦記」のCM枠で、

TOKYO MX 1/6より毎週金曜日 25:05〜

サンテレビ 1/8より毎週日曜日 25:00〜

KBS京都 1/8より毎週日曜日 23:30〜

テレビ愛知 1/8より毎週日曜日 26:05〜

BS11 1/9より毎週月曜日 24:30〜

(1月中まで!)で放送されます!

すごくよくできているので、時間があればぜひぜひ見てください!

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