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LV999の村人  作者: 星月子猫
第四部
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疑心暗鬼の夜-11

「おお、もう起きてたか。起こしに行こうかと思ったが不必要だったな」


「あ、メリーさん、油機さん!」


 その途中、一足先に目を覚まして行動していたのか、妙に薄着になって汗をかいた状態の油機とメリーに遭遇する。


「なんであんたたち……朝っぱらからそんなに汗をかいてるの?」


「ふぃー」っと額の汗を拭いながら爽やかな笑顔を浮かべる油機を前に、パルナが少し引いた表情で問いかける。


「いや……まあ一応習慣だ。普段、朝食前は運動してから食べるようにしてるんだよ。でも昨日の今日だし……一日くらいやらなくてもいいと私も思ってたが、油機に叩き起こされて仕方なくな……さすがに私もまだ眠い」


 本当に眠いのか、運動をしてきたにも関わらずまだトロンとした目元クシクシとメリーは擦る。


「こういうのはどんな状況でも習慣づけてやるから意味があるんだよ! まあ~メリーちゃんはまだまだ寝たい盛りのお子ちゃまだから、睡眠欲を優先しちゃう気持ちはわかるけどねぇ~」


「あ?」


「いや……ウソウソ、嘘だからガバメントの銃口向けないで」


 昨日の今日でいつも通りの調子でやり取りを見せる二人に対し、パルナは呆れた様子で「元気ねあんたら」と溜息を吐く。一瞬、その様子にアリスが「パルナさんそれなんだかおば……」と言いかけるが、色んな危険をパルナの一睨みで察して押し黙った。


「人通りが多い朝とはいえ、単独行動は感心しないぞ? いつ何があるかわからんからな」


「っと……そうだった。すまん、油機に連れられるがままに何も考えず日課を果たしてた」


 少し呆れた様子でメノウが問い詰めると、メリーはハッとした表情で頭に手を当て、申し訳なさそうに表情を浮かべる。油機に視線を向けると、同じ理由なのか、舌をペロッと出して「朝起きて、思考力が低下してました」と素直に反省の意志を示した。


「ていうかあんた結構元気だけど、ちゃんと寝れたの? タカコさんと一緒に寝たんでしょ?」


「その話は……やめよう?」


 真顔で放たれた油機の一言でパルナは全てを察し、それ以上は何も聞かずに女性陣用のテントへと向けて歩を進める。それに続いて、他の者もパルナのあとを追った。


 女性陣用のテントへと到着し、まずタカコが眠っていたテントの扉を開いて中を見ると、布団があらぬ方向に吹き飛んだ空間の中央に、タカコが豪快に両足を広げて眠っていた。


 寝相が悪いのにいびきはなく、「すーすー」と小さな女の子が出すような静かな寝息を立てているのが妙に不気味に見え、一同は思わず扉をスッと閉じる。


 とりあえず先にティナとクルルを起こそうと、すぐ隣に設営されてあるテントの扉を開くと、中でティナが可愛らしくうずくまり、静かな寝息を起てて眠っていた。


「あれ……? クルルさんは?」


 テントの中にはティナ以外の姿はなく、クルルが使っていた寝具だけが残されていた。


「起きてどっかに行ってるんじゃないか? あんた達を呼び起こしに行ったとか? もしかしたらすれ違ってるかもな」


「あたしたちが外に出る直前はまだスヤスヤと寝てたもんね」


「……ん? お前たちが外に出た時はまだ寝ていたのか?」


「うん、普通に寝てたよ」


 メリーと油機の言葉を聞いて、メノウはどこか違和感を抱き、クルルが使っていた寝具に手を当てた。寝具にはまだ、ついさっきまでそこにいたのがわかるくらいに温もりが残っており、油機とメリーの言葉通り、恐らく二人が出た時はまだ寝ていたのが窺えた。


「…………どういうことだ?」


「どうしたのメノウ? クルルさんなら多分トイレとかに行ってるんじゃないの?」


 クルルの寝具の前で、妙に神妙な面もちで思考を巡らせるメノウが気になりアリスが声を掛ける。


「いえ……杞憂だといいんですが」


 メノウが不安に感じた違和感は、『クルルがティナを起こさずに一人で行動した』という点だった。仮に、クルルが目覚めた時、同じテント内にメリーがいたのなら、眠った時と変わらない現状に寝ぼけてトイレに一人で行ったかもしれない。


 だが、眠った前とは違うメリーがいないという現状を前に、クルルがティナを起こさずに一人で行動するという愚行を犯すとはメノウには思えなかった。


 ティナはまだ眠っている。そして敵が攻めてきてメリーがいなくなったと考えるべき状態にも関わらずクルルは一人行動に出た。この状況がとてつもなく不自然に感じた。


「クルル殿を探そう。どちらにせよ、一人で行動するのは危険だ」


「それもそうね……朝食前の軽い運動ってことで。どうする? 二手に分かれて行動する?」


 メノウの不穏な表情を読み取ってか、少し楽観視していたパルナも表情を強張らせる。


「そうだな……本当なら全員で纏まって行動したいが、今は効率は減らしている場合じゃない。二手に別れて探そう。パルナ殿、ティナ殿、タカコ殿はレックス殿と共に、それ以外は私に」


 二人の強張った表情から事態が思っていたよりも重いことを察し、一同は素直に頷き返す。


 その後、ティナとタカコを起こして現状を説明したあと、一同は二手に別れてクルルの捜索を開始した。


 男性用のテントに向かったのではないかとメノウたちは一度戻り、女性用のテントから男性用のテントへと向かう経路になるであろう道を何度も往復するがクルルはおらず、また、トイレに向かったのではないかとレックスたちが確認を行うがそこにもおらず、それ以外もところどころをくまなく探したが、クルルの姿は見つからなかった。

新年あけましておめでとうございます。

本年もLV999の村人をよろしくお願い致します!

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