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LV999の村人  作者: 星月子猫
第四部
187/441

覚えていますか?-9

「深夜だから大丈夫だろうと思って確認してなかったけどさ、お前たちがノアの施設内からいなくなって今頃レジスタンスの連中が騒いでるって可能性はあるか?」


「それはないから安心しろ。住民への配給が終わったら、緊急事態が起きない限りは自由時間だ。朝礼が始まるまでだがな。何より、古代の旧兵器が出動してたってことは、ばれないよう、レジスタンスを外に出さないために緊急事態で招集したりはしないはずだろ?」


 強張る表情を見せる鏡を安心させるかのように、メリーが「そう気を張るな、レジスタンスのことなら私がよく知っている」と、慌てた様子なく伝える。すると――


「なら……メリーと油機は大丈夫そうだな」


鏡は「そうか」と一度安堵し、すぐに強張った表情を再び浮かべてそう言った。


「どういうことだ? なんで私たちだけ大丈夫って言えるんだ」


「俺たちは顔を見られている。メリーと油機はずっと隠れてたから見られてないけどな」


 その一言で察したのか、メリーは口を閉ざす。


後から現れた小型のメシアに乗っていたであろう存在は、鏡たちに見つかることなく逃げ出した。そして、その存在はノアの施設にいるのではないかと憶測を立てている。


となれば、ノアの施設に戻った時、顔を見られているアリスたちは誰かもわからない相手に狙われる可能性があった。


「危惧しないといけないのは、逃がした相手と関わりのある人物がどれだけいるかよね……」


 顎に手を当てて心当たりがないかタカコは思案する。だが、今日の段階で見てきた人々の全てに怪しい行動を見せていた者はおらず、むしろ、そういった存在に敵意を向ける連中しかいなかったと溜め息を吐いた。


「今までレジスタンスの連中に打ち明けずにずっとひそひそ行動していたくらいだ。レジスタンスの連中を使って何かをけしかけるような真似はしないだろうが……闇討ちはありえるな、少なくとも私ならそうする」


 実際にその経験があるのか、どこか暗く重たい雰囲気を纏わせるメノウに思わずクルルとティナは息を呑み、安全なはずの施設内でそういったことが起きるかもしれない可能性に悪寒を抱く。


「戻るにしても、固まって行動しないといけないわね……」


「だな、でも施設内では死んだことになってる俺は勿論、獣牙族であるピッタもお前らと一緒に行動はできないから……別れて行動することになるな」


「なら、私たちと、鏡ちゃんたちと、メリーちゃんたちの三班になるのかしら?」


 タカコの問いに鏡は頷いて答え返す。


「それで、レジスタンスに戻ったらあたしとメリーちゃんはどうすればいいの? いつも通りの生活をしてればいい……ってわけじゃないんだよね?」


「いや、油機とメリーも暫くはいつも通りにしてくれてればいい。変に動きを見せて、俺たちと繋がりがあると思われれば終わりだからな。タカコちゃんたちも闇討ちに気を付けて暫くはレジスタンスの一員として活動してくれればいい」


 予想外の返答だったのか油機は思わず「おろろ? そんなのでいいの?」と目を丸くする。


「しれっと戻ればいいんだよ。相手だってレジスタンスの連中に知られたくないはずだから無茶なことはしないはずだ。むしろ、何かしてくるんじゃないかって警戒されてる間は何もしない方が得策だ。あえて俺たちは、ノアの施設には何もないと考えている連中を演じるのさ」


「じゃあ……鏡さんが來栖のいる中央の研究施設を調べるの? その格好だとレジスタンスの一員が入ることを許可されているエリアに行くだけでも怪しまれると思うけど」


 油機の言葉に鏡は一瞬、目を細めて思案する。だが、すぐさま考えを定めると「大丈夫、大丈夫」と手をぷらぷらと揺り動かして微笑を浮かべて見せた。


「ノアに戻れば再び別行動か……僕たちが行動するべきタイミングは師匠が促してくれるでいいのか? さっきの言い分だとその方が良いように思えるが」


「いや、チャンスがあるなら調べて欲しいが……まあそうだな、何か発見があったら俺から知らせるから安心してくれ。それと……俺から2日間連絡がなければ俺に何かあったんだと思ってくれていい」


「その時はどうする?」


 釘を刺すように「また一人で無茶をするわけじゃないだろうな?」と、レックスが鋭い視線を鏡へとぶつける。


「無茶というか……そうなったらもうどうしようもないだろ? その時は迷わず逃げろ。俺が作ったテント内の抜け道を使ってな」


「逃げませんし見捨てません」


 だが、賛同するつもりがないのか間を空けずにクルルがハッキリとそう告げる。同じ気持ちなのかアリスも続くようにうんうんと首を振って頷いてみせた。


「えーい! わがまま言うんじゃありません! 一番避けなければいけないのは全滅だろ? 俺は俺でなんとかするからお前たちはとりあえず逃げろって」


「またそんなこと言って……っ!」


 いつも通り、仲間のことはしっかりと守ろうとするが、自分のこととなると仲間の心配も無視してゴリ押ししようとするその姿勢に、クルルとアリスは少し怒った表情で鏡に詰め寄ろうとする。だが、その二人を制止するようにパルナがサッと座り込む鏡の前に立ち塞がった。


「あーあー……またそんなこと言ってぇ~あれれ? あんたってばもしかして……自分に酔っちゃってるのかしらぁ? 俺は強いから特別だぁ~って言いたいのぉ? 鏡ちゃんかわいいー」


 まるで鏡を小馬鹿にして煽るかのような言葉をぶつけながら、見下すような視線を向けるパルナにクルルとアリスは思わず目をパチクリとさせる。


「うっはっ! ……ダークドラゴンに『はよ来て』とか伝言してたくせに、私たちがくるまでコソコソ生活してたくせに……『俺のことはいい! 皆! 早く逃げるんだぁ!』 ってっぶは! やめてくださいよ鏡さん。今更すぎてギャグにしか見えませんよ? はっきり言って滑稽です」


 そしてパルナの意図に気付いたのか、ぷるぷると震えた腕で寝かせていた身体を起こしながら、ティナが腹を抑えてアホをみるかのような視線を鏡に向けた。


 その様子に思わずタカコとメノウが噴出して笑い、鏡から思わず顔を逸らす。明らかにわざと馬鹿にしてきている現状に、鏡も「言うねぇ~」と顔をひくひくさせながら苦笑いを浮かべる。


「わかったよ。わかったわかった。俺が悪かった。俺に何かあったら一緒に死んでくれ」


「鏡さん……言い方。言っておくけど、ボクはまだまだ死ぬ気なんてないからね?」


 この様子であれば、どうせここで駄目と言っても助けに来る。そう考えた鏡は諦めたように溜息を吐いて観念するが、認め方が気に喰わなかったのか、アリスが鏡の両頬を引っ張りながら少し不満気に頬を膨らませる。同じくクルルも納得いかない様子だったが、逆に鏡らしいと微笑ましく思いながら溜息を吐いた。


「でもそれでいいです。ここまで来たんですから一蓮托生ですよ? 鏡さんに何かがあれば、私たちが絶対に助けます。だから……」


信頼していると言葉にされなくても伝わるような微笑みを浮かべ、「私たちがピンチになったら、絶対に助けてくださいね?」とクルルは付け足して伝え、メリーと油機以外の皆も同じ気持ちだったのか、クルルの言葉に賛同するかのように微笑を浮かべる。そんな連中を前に鏡は「やれやれ」と少し気恥ずかしそうに頭に手を置くと、ただ一言、「約束だ」とだけ伝えて周りと同じように微笑を浮かべ返した。

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