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LV999の村人  作者: 星月子猫
第三部
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ぶっ倒して終わりだろ?-14

『さて本題に入ろう。お主達は次のステージに行くことを望むか? それとも……今一度地上へと戻り、平穏な日々を過ごすか? ……選ぶがよい。無論、これはかの村人の願いによる特例だ。お主達は願いを叶えることなく次のステージに行くことになる。それでも……行く意志を示すのであれば、我が傍へと寄るが良い』


 ダークドラゴンがその言葉を言い終えるとほぼ同時に、デビッドを除く全員が足を前へと進めてダークドラゴンの傍へと近寄った。一切の迷う素振りを見せず、真っ直ぐにこちらを見て突き進んでくる一同を目の当たりにしてダークドラゴンは少し驚くと軽く鼻で笑い、『当然か』と、どこか納得したかのようにつぶやきを漏らした。


「ボク達が今叶えたい願いは次のステージに……鏡さんの元に行くことだよ」


 アリスの言葉に賛同するかのように、ダークドラゴンの元に足を進めた一同も小さく頷く。


『その者は……行かぬということで良いのか?』


「行くことが必ず鏡様のためになるとは限りません。私は……私に出来ることで鏡様に貢献するつもりです。少なくとも今の私が行ったところで無駄でしょう」


 デビッドはそう言って一礼すると、ステータスウインドウを表示する。そのステータスウインドウをダークドラゴンが視界に映すとどこか納得したように瞼を閉じ、『かの者も面白ければ、集まる者もまた面白い』と、笑みを浮かべた。


『よかろう。お主は我が力で地上へと送り届けよう。記憶も……そのままでな』


「お心遣い、誠にありがとうございます。そうしていただければ幸いです」


 まるで考えを見透かしたかのような言い草と配慮に、デビッドは聞いていたダークドラゴンのイメージと随分違っていることに少し目を見開いて驚くと、これもまた鏡の力によるものかと微笑を浮かべ、そのまま頭を下げて一礼する。


『では覚悟は良いな?』


 留まることを決意したデビッドも、行くことを決意した一同も、表情に迷いはなかった。まるで、今自分が何をするべきか、何が最善の行動なのか確信を抱いているかのように真っ直ぐとダークドラゴンに視線を向けると、何も言わずにただ頷き返す。


「どうせ、あいつでも手こずるような敵が次のステージにいるんでしょ? そいつをぶっ倒してさっさと帰って来ましょう。デビッドも待ってることだし」


『……事はそう簡単ではない』


「何よ? 違うの? どうせ戦わなきゃいけないんでしょ?」


『それは……己が眼で確かめてくるが良い』


 怪訝な表情をパルナは浮かべるが直後、ダークドラゴンの表皮に動脈のように広がっていた紫色の光が眩く発光し始める。その光は徐々に輝きを増していき、次第に広大な空間全体へと広がり、視界が光で埋め尽くされる程に発光する。


 空間が光で覆い尽くされた後、まるで掻き消されたかのように光は消滅し、後にはダークドラゴンと、呆けた顔でボーっと何が起きたのかを追い付こうと必死な様子のアリスとメノウの二名だけが部屋へと残された。


『頼んだぞ……英雄達よ』


「ちょ、ちょっと待って。皆は……皆はどこに行ったの?」


 遠い目で感慨深そうな表情を浮かべるダークドラゴンに対し、アリスはどこか焦りを感じた様子でダークドラゴンの傍へと駆け寄る。対するメノウは手を額へと置き、この事態を予想していたのか参ったかのような表情を浮かべていた。


『この世界に留まることを望んだ者は既に地上へ返した。そして……勇気ある英雄達は次のステージへと既に向かった後だ』


「やはり……魔族である我々は前に言っていた通り。次のステージには行けぬという事か?」


 その言葉を聞いて、アリスは思わず振り返って驚愕の表情を浮かべる。


『本来は行けぬ。だが……お主達は例外だ。かの村人の願いにはお主達も含まれている』


「どういうこと? じゃあどうしてボク達はまだここに残されているの?」


『落ち着くが良い。我がお主達を行かせるつもりがないのであれば、既に地上へと返している。この世界に留まることを選択した者と共にな』


 二人はどういうことなのかまるで理解出来ず、困惑した表情を浮かべる。するとダークドラゴンはそんな二人のすぐ目の前にまで顔を近付け、その仰々しい眼で問いただすかのように睨みつけると――、


『……話がある』


 同じ高さで面と向き合うことにより、今だけは対等な立場で話し合いをしたいと伝えてきているかのようにそう言った。

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