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LV999の村人  作者: 星月子猫
第三部
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ぶっ倒して終わりだろ?-4

 アリスだけじゃない。レックス、クルル、ティナ、パルナ、タカコ、メノウ、デビッドも鏡が戻ってくるのをずっと待ち続けた。だが、鏡は戻らなかった。戻らなかったから、鏡をきっかけにカジノで働くようになった皆はそれぞれの道を歩み始めた。戻らない者のために、いつまでもカジノで働くだけの人生を過ごすにはいかなかったから。


 最初にいなくなったのはレックスだった。一年が経過した頃、「僕はいく。ここで……バーテンダーをやるだけの日々を過ごして一生を終えるつもりはないからな」と言って、鏡が帰ってくる可能性はないと判断し、出て行った。鏡の傍で学ぶことを目的としていたレックスにとって、鏡のいないカジノで滞在する理由はなかったのだ。


 それから二年が経過して、次にいなくなったのはクルルとティナだった。クルルは鏡がいなくなって二年が経過した時に届いた一通の誰が送ってきたのかわからない手紙を読み、「……確かめたいことがあります」と言い残して次の日に忽然といなくなった。


 デビッドは一週間クルルを探しまわったが、どこにいったのかわからないのでは見つかるはずもなく、クルルはそのまま行方知らずとなる。


 アリスが最後に見たクルルは、鏡が戻らないことで日に日に元気を失い、何故か焦っているかのような深刻な表情で自分に視線を向ける姿だった。


 そして、「私もそろそろ、修行の旅に出直します! まだまだ私の力では救えない人もたくさんいますからね……せめて解毒魔法くらいは身に着けないと」と、元々教会との仕事を兼任し、勇者パーティーの一員としてレックス達が手伝うから自分も手伝うというスタンスをとっていたティナも、レックスとクルルがいなくなってしまったのを機に旅立ってしまった。


 それから数カ月も経たない内にタカコも何故か旅立ってしまう。タカコが経営していたCLUBGACHIHOMOとバーをメノウとケンタ・ウロスに全て任せ、「私も、色々と可能性を試したいのよ」言っていなくなってしまう。


 タカコだけは、たまにヴァルマンの街に戻ってきて顔を見せるが、それ以外は一度も顔を見せに戻ってきていない。


 結局カジノに残ったのは、アリス、パルナ、メノウ、デビッドだけだった。メノウはアリスがカジノに残っているからというのもあるが、何より鏡に対しての恩をまだ返せていないという真面目な動機で残っている。


 デビッドは鏡にカジノの経営を任せられたというのもあるが、パルナと同じくアリスを守るという約束を果たすために残っている。それに、クルルがもしまた顔を見せるとしたらこのカジノだろうと、毎日のように人を待ち続けながら、カジノの経営を続けている。


「皆……今頃何してるんだろうなー」


 お弁当の中に入っていたおにぎりを咥えながら、アリスはどこか寂し気な表情を浮かべた。


「さあ? どっかで死んでたりして」


「縁起でもないこと言うのやめなよパルナさん。もし本当にそれでティナさんとかが死体で現れたしたらどうするのさ。ボク回復魔法かけて浄化しちゃうよ?」


「あんたの方が縁起でもないわよ。クーちゃんもティナもきっと大丈夫よ、ティナはただ修行の旅に出てるだけだし、クーちゃんもあいつを諦めるとは思えないしね」


「レックスさんは?」


「あいつは……どうかしらね。何をするつもりかはわからないけど、結構無茶してそう。あいついなくなった時……前のあたしみたいに張り詰めた顔してたから。それに二年も戻ってないし」


 その言葉に、アリスは不安な顔を見せる。アリスが心配に思うのは何も鏡だけじゃない。レックスもクルルもティナも、三年前に自分と共に日々を過ごしていた仲間は、アリスにとって家族のように大切に思っている。


 今の自分があるのは、彼らがいたから、それをアリスはちゃんとわかっていた。


「ほらほら、元気出しなさい。張り詰めた顔してたって言ってもあいつの性チクビボーイよ? 重い空気を醸し出しても締まらないがあいつの特徴なんだから、その内ひょこっと戻ってくるわよ」


「うん、うんそうだよね!」


「ほら、じゃあそろそろ戻るわよ。ツアーの休憩時間終わりだから。今日も張り切って働きましょう!」


「うん!」


 その後、二人はツアーで待機させていた来客者の元へと戻り、ヴァルマンの街へと戻る。





「久しぶりだな」


 ヴァルマンの街に戻り、長い距離を歩いて疲れた足腰を癒そうとパルナとアリスがカジノ内の休憩室へと向かい、扉を開けた瞬間、そこには長旅用の冒険者の服に身を纏った金髪の勇者が何食わぬ顔でお茶を飲みながら座っていた。


「やっぱあんたチクビだわ」


「久しぶりに会って第一声で罵倒されるのか僕は、さすがに辛すぎる」

お世話になっております星月子猫です!

報告忘れていましたが、電子ブック版のLV999の村人 1が書く電子ブックダウンロードサイトで発売しております。(私はibooksでダウンロードしました^^)

書店で見かけられなかったという方などはこの機会にお目通しいただければ幸いです!


次回更新は6/05になります。今後ともよろしくお願い致します!

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