書かなきゃ
とりあえず何かを書かなきゃと思った。
私に残された時間は少なく、出来る事も限られていた。
書かなきゃ、書かなきゃと思うほどに何も浮かびはしない。
誰かへの感謝だろうか。
それとも誰かへの恨みだろうか。
今となってはそんな事はどうでもよい気がする。
まるで小骨がのどに刺さった様なもやもやとした気持ちだ。
そんな時だ。
ふと浮かんだのは今朝飲んだコーヒーだ。
もしあのコーヒーの中から人が出てきたら面白いだろうか。
私は紙にマグカップを書いた。
そしてそのカップの中に針金の人を描く。
頭の中のその人は浮かんだり沈んだりしていたので、カップの横に↑↓と書いた。
ああ、コーヒーだからちゃんと混ぜなきゃと、矢印にくるりと円を描く。
けど、そんな事をしたらきっとコーヒーカップの中の人は目が回ってしまうだろう。
目が回るのはどう書いたらいいのだろうと思案していると、目の前が真っ暗になった。
もうタイムアップだ。
そして、そこで私の命は尽きた。
「何でしょうね?このダイイングメッセージ」
「もしかして犯人の手掛かりかもしれないな」