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一番近き愛しい人よ
作:カービー


 愛し合った兄妹……。彼らは愛し合えない存在だった。それは”血の繋がった兄妹”だったから。
 
 いつものように”好き”だと言って体を重ね合っていた妹、歩美と兄、謙太。今日も体を重ね合った。

「痛くない?」

「うん……」

 愛おしくて、離れたくなくて……。こんな禁じられている恋がいつまでも続くと思っていた。体を重ねる事で兄妹は一つになれている。もちろん日本から離れれば一緒に”恋人”として住めることを本気で望んでいた謙太。

「何してるの?」

 体を重ね合っている自分の兄妹を見て、ショックのあまりに涙を流す母親のなんとも言えない顏が謙太と歩美の心臓に酷く響いた。

「お母さん―――」

 歩美と謙太は涙を浮かべながらベッドから落ちていた服を着る。こんな現場を見られたら不安で神経がおかしくなりそうな二人だった。

「来なさい」

 母親に言われるがままに、台所のイスに座らせられる二人。父親も二階から下りてきて、静まりかえる空気の中。何故こんな緊張な空気が張りつめているのか、父親が母に訳を聞いたら、父は怒り狂って兄の謙太を拳で強く殴る。

「何やってんだお前は!! 歩美も歩美だぞ」

「ごっ……ごめんなさい」

 泣き崩れている母親。そしてそれ以上に泣き崩れてもはや”ごめんなさい”が言葉になっていない歩美を見るのが謙太は、とても辛かった。

「俺たち愛し合ってるんだ!」

 謙太のその言葉を聞いた歩美も涙を拭き、分かってもらおうと一生懸命”愛している”事を言う。

 たが、分かってくれるはずもない……。翌日父と母は覚悟を決め、離婚届の紙を記入していた。それを見た歩美と謙太の感情が一気に漏れる。

「何で別れるんだよ。分かってくれよ」

「分からないわよ! あなた達は兄妹なのよ。こうするしか方法はないの」

 そう言って記入を済ませ、母親は荷物をまとめる。

「何やってるの謙太。あなたも早く荷物まとめなさい」

 言い返しきれない謙太は、ゆっくりと荷物をまとめていた。歩美はただ泣くことしかできなかった。”禁じられている恋愛”好きな人と一緒になることはできないのかと一分一分二人は同じ事を思っていた。

「じゃあな、歩美。また、何処かで逢えたら、その時は俺と普通の兄妹として接してくれよな」

「―――謙太。お……お兄ちゃん」

 去っていく謙太の背中。遠くなっていく好きな人。何度行かないでと歩美は思っただろうか。

「歩美、元気でね」

 そう言って母と謙太は家から出て行ってしまった。それからというもの、歩美は立ち直る事ができず毎日ずっと泣いていた。目が覚めると一瞬だけいつも、謙太の笑った顏が映る。

 あれから5年。歩美も謙太もあの時の事は心にしまい、働き出していた。完全に忘れた訳ではないけれど、歩美も謙太にもお互いに好きな人ができ、幸せな日々を送っていた。

「いたっ」

 いきなり街でぶつかってきた男を歩美は睨みつけた。何処かで見た事ある顏……謙太だった。謙太も一瞬で歩美に気づいた。

「歩美……歩美だろ? 元気か?」

「け……謙太!」

 やっと逢えたというばかりに、謙太も歩美もお互いその場で抱きついた。二度と逢えないと思っていたお互い。今度はちゃんと兄妹として逢える事ができた。

「好きな人できたか? 歩美」

「うん……謙太は?」

「俺もできたよ」

 少し寂しい会話が二人の間で流れていた。でもこれが”兄妹”これが普通の”兄妹”の会話なんだ。二人はそう思いながら悲しい感情をぐっとこらえ、微笑みあった。

「また逢える?また……今日みたいに兄妹として」

「うん」

 二人は、携帯のアドレスと番号を交換して別れた。少し不安はあるけれど、お互いの悩みを心の底からぶつけられる最高の兄妹になりたいと、歩美も謙太も思っていた。

 大好きな愛しい人。絶対に憎む事なんてできない。あの時の事を後悔なんてしていない。正しい手段だったハズだから。これからは兄妹として側に居れたらいいなと二人は思いながら今日も逢う。


”血の繋がっている兄妹としてあなたの側にいさせてください”














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