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睡夢の人 作者:まつもと なつ
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哀哭

「タカヤ!」

 声は風にかき消される。

「……タカヤぁっ!」

 この声が届くまで、何度だって叫び続ける。

「タカヤ! タカヤ! ……お願い、気付いて……!」

 目の前に居るのに。

「……タカヤ! 私よ!」

 ようやくあなたを見つけた。
 もうどこへも行かないで!

「ま……って……」

 喉が痛い。声を出そうとするとむせてしまう。
 ぜいぜいと荒い自分の呼吸ばかり、耳に響く。
 それでも、私は叫び続ける。

「タ……ヤっ……! タカ……ヤ……!」


 声にならない叫びは、やがて涙に変わった。
 頬を伝う涙を拭いもせず、ともすれば膝を突きそうになる足を無理矢理動かして、一歩ずつ前に進む。
 彼に、近付いていく。

 やっと。
 やっと、会えた。

「迎えに、来たよ……タカヤ」




 猫は、眠るように冷たくなっていた。
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