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睡夢の人 作者:まつもと なつ
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捕獲

 明くる日、今度は少し自宅から離れた所を探していると、ビルとビルの間の狭い通路から猫が喧嘩している声が聞こえてきた。
 急いで駆けつけると、なんと逃げ出した夫婦の猫が、地元のボスらしき大きな黒猫と睨み合っている。と、ボス猫が攻撃を仕掛け、あっという間に勝負は付いてしまった。夫婦の猫が、文字通り尻尾を巻いて逃げてきたのである。
 興奮しているため夫婦には気付かず、近くに停まっていた車の下に隠れると、荒く息をしながら辺りを警戒する。夫婦は猫のキャリーバッグとお気に入りのおもちゃを、車のすぐ側に置いて猫が落ち着くのを待った。
 およそ三十分ほどで猫がおもちゃに近寄ってきたので、おやつを与えてみる。するとおとなしく食べたので、抱き抱えてキャリーバッグに入れた。

 この猫が脱走したのは、実はこれが初めてではない。
 元々野良だった猫は、二年ほど前に怪我をして道端にうずくまっていたのを保護したのだが、夫婦の家を住処と定めるまで度々隙を見ては逃げ出した。だが他に行くところが無いのか、空腹になると夫婦の住むマンションのゴミ置き場などに戻るので、保健所に通報される前に夫婦が飼うことにしたのである。
 また脱走し誰かに保護された時のために、二人はこの猫に首輪をプレゼントした。赤いチューリップの飾りが付いた、可愛らしい首輪だ。
 チューリップの裏には名前を書くスペースがあったので、二人で沢山候補を出し合った中からこれだという名前と、連絡先を書いておいた。

 無事に猫を連れ戻せた夫婦は、念のため動物病院に行き怪我をしていないか調べてもらい、問題無しという獣医のお墨付きを得てようやく帰宅の途についた。
 その後も、猫はめげることなく何度でも脱走しては、きちんと家に戻ってくるのであった。夫婦もあれこれ手を尽くしたが、猫の方が一枚上手のようで、ほんの些細なチャンスでも逃さず、その身体能力を生かして家から出る。
 その度に、こうして夫婦で近所中探し回るのだ。

 マナミがマロに首輪がついていると勘違いしたのは、この猫を見たせいだ。赤いチューリップが目に焼き付いている。
 猫が脱走したこの夢と、タカヤが居なくなったことがマナミの中で重なって、後味の悪い目覚めとなったのである。
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